「億ションより7,000万のマンションがよかった…」と後悔するワケ

年収が上がるのに比例して、私たちはシアワセになれるのだろうか―?

ある調査によると、幸福度が最も高い年収・800万円(世帯年収1,600万円)までは満足度が上がっていくが、その後はゆるやかに逓減するという。

では実際のところ、どうなのか?

世帯年収3,600万の夫婦、外資系IT企業で働くケンタ(41)と日系金融機関で働く奈美(39)のリアルな生活を覗いてみよう。

◆これまでのあらすじ

米国カリフォルニア州への移住を決断した奈美。移住の準備として、2人は自宅マンションを売りに出すことにしたものの、早速困難が待ち受けていた!?

▶前回:大学費用だけで2,000万!?“海外で子育て”を決意したものの、金銭問題に直面…

Vol.6 億ションなんて買わなきゃよかった!?


― 仕事を辞めるときって、こんなにあっけないものなんだな…。

お正月明けから2ヶ月後の金曜日。

今日が最終出社日だった奈美。

同僚から贈られたニコライ バーグマンのフラワーボックスが入った紙袋を片手に、夕方の丸の内を歩いていた。

2ヶ月前に奈美が退職を上司に伝えたときだって、翌日には後任の募集が始まり、すぐに決まった。

自分の代わりはいくらでもいて、自分がいなくなっても何も変わらず組織はまわっていく、という当たり前の現実が胸をつく。

― 結局、代わりがいない仕事は、妻業と母親業だけってことなのかな…。

落ち込む気持ちもあったが、奈美は、米国移住に向けて気持ちを切り替えようとしていた。

― マンション、早く売れるといいんだけど…。

購入後に発覚!?億ションなんて買わなきゃよかったと後悔した理由とは…?

億ションって買うのはいいけど、そのあとが…


「今のお客様は、ご主人が勤務医、奥様は会社員とのことです。奥様の感触はよさそうでしたよねっ!?」

自宅マンションのリビングで、不動産業者の営業マンが奈美とケンタの顔色をうかがいながら、わざとらしく明るい口調で声をかけてくる。

今日は3組の内覧が入っていたが、最後の家族を見送ったところだ。

今住んでいるマンションを売りに出してから2ヶ月たったが、未だ売れていない。

週末になると3~4組がコンスタントに家を内覧しにくるにもかかわらず、買い手がつかないので、奈美たちは焦り始めていた。

無事に売れるだろうかという不安から、奈美とケンタの表情はこわばっている。

「この前の方に買っていただけたら、よかったんですけど…」

奈美が落ち込んだ様子でつぶやく。

以前、申し込みが入ったが、先方のローンの審査が通らず破談となってしまったことがあったのだ。営業マンいわく、よくあることらしいのだが。

「前に住んでた7,000万円台の物件は、強気の値段をつけても2ヶ月以内に売れましたよね…。そろそろ価格を見直すべきでしょうか?」

ケンタが営業マンに尋ねる。

「不安になられる気持ちはわかりますが、価格を下げる必要はないですよ。ただ…」

「ただ…?」


「売れるのに、時間がかかる可能性があります。この価格帯ですと、半年〜1年かかることもよくありますので」

周辺エリアのマンション価格の上昇が続いていることから、購入価格の1億2,080万円より少し上乗せして1億2,480万円で売りに出している。

しかし、買い手がつかないのであれば多少のマイナスとなっても仕方がないと思ったのだが、価格自体は、この地域の相場からみて割高感はないとのこと。

マンションは7,000万円台が需要のボリュームゾーンだから、1億円を超えた物件の買い手はそもそも限られているということらしい。

「半年から1年は長いですね。渡米するまでに売れるといいのですが」

営業マンの説明に、ケンタは不安そうな表情を浮かべながら答えた。

「そろそろ交渉も入ってくるかと思いますよ。引き続きベストを尽くしてまいりますので、お任せください」

終始強気の姿勢を崩さず、営業マンは帰っていった。

夢のカリフォルニア移住計画に暗雲が垂れ込む…!?

海外だとプール付きアパートメントだって夢じゃない


「家売れるかな…。やっぱり、1億超えるとターゲット層が限られてくるんだね」

営業マンを見送った後、リビングで奈美はケンタに声をかける。

「そうだよな…。俺、売るときのことまで考えてなかったよ。この家が売れないまま、来週には俺が渡米って考えると気が重いな…」

ケンタは、仕事の引き継ぎも兼ねて、来週から2ヶ月ほど米国に短期出張することになっている。

「でもさ、この家買う時は、まさかアメリカに移住するなんて思ってなかったから、仕方ないよ。あの時は『将来的には賃貸に出せるように』って、都心・駅近にこだわったわけだし…」

奈美が慰めの言葉をかけたとき…。

「やばい!カリフォルニアの家の内覧をオンラインで頼んでるんだった」

そう言って、ケンタが急にパソコンを立ち上げた。

奈美がパソコンの画面を覗き込むと、40代くらいの男性が、こちらに陽気に手を振っているのが見えた。

こちらも手を振り返して挨拶をすると、早速、不動産業者によるオンライン内覧が始まった。

映し出されたのは、カリフォルニア州ロサンゼルス郊外のアーバインにある大型のアパートメントだ。

白地基調で噴水と花壇があるエントランスをくぐり抜けて、中庭を通りすぎると、プールが目に入ってきた。プールサイドには、ヤシの木が植えられ、パラソルとベッドが置かれている。

「すごい、リゾートホテルみたいなんだけど…」

思わず、感嘆の声を漏らす奈美。

さらに進むと、ジム、ラウンジ、バーベキューグリル、パーティースペースも映し出された。


「えっ!家賃40万円で、こんなに豪華な家に住めるの!?」

現地ではスタンダードなグレードだというが、日本育ちの奈美は、初めて見るカリフォルニアのアパートに思わずテンションが上がる。

「毎日プールサイドで読書なんて生活も夢じゃないってことだよね?」

奈美の期待は高まる一方だ。

続いて映し出された専有部も、広々とした2ベッドルーム、2バスルームで、キッチンのカウンターは大理石。冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、食洗機、オーブンなど家電はすべて備えつけだという。

奈美のリクエストで、最後にシャワーの水圧を確認してもらい、内覧は終了した。

「ケンタが、家が狭いって文句言ってる気持ちがやっとわかったよ。アパートでさえこの広さなんだから、アメリカの戸建て育ちだったら、この家は息がつまるよねえ…」

「いや、まあ都心なんてこんなもんでしょ。そもそもアーバインは郊外だしね。

とりあえず、現地で実際に何件かまわって、よさそうなところがあれば決めてくるよ。奈美は、しばらく翔平と2人で大変だけど、引き続きこのマンションの売却活動よろしくね」

「うん、わかった。安心して行ってきてね!」

明るく返事をする奈美。

しかし内心では、億ションがなかなか売れないことへの不安が重くのしかかっていた。


▶前回:大学費用だけで2,000万!?“海外で子育て”を決意したものの、金銭問題に直面…

▶Next:12月13日 月曜更新予定
次週:億ションを売却して家族全員で渡米することができるのか…!?

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