イギリスで日本風カレーが大人気。カツがなくてもカツカレーと呼ぶ?!
もともとインドで生まれ、イギリスを経由して日本にやってきたカレー。その後、独特の進化を遂げたジャパニーズカレーは今や日本の国民食となり、世界に誇る日本フードの一つになりました。
ココイチこと「カレーハウスCoCo壱番屋」がイギリスはもちろん、カレーの本場インドに進出。カツとキャベツの千切りがマストの金沢カレーのチェーン店「ゴーゴーカレー」は10年以上も前からアメリカで店舗展開するなど、海外でもジャパニーズカレーの存在感が年々大きくなっています。
◆英国カツカレーブームをけん引するチェーン店「ワガママ」
特に、今年10月に23回目となる「ナショナルカレーウィーク」のイベントが各地で開催されたイギリスではカツカレーが人気。「ナショナルカレーウィーク」では、伝統的なブリティッシュカレーやインド系スパイスカレーに加え、日本のカツカレーを提供するお店も多かったといいます。
逆輸入的にイギリスを席巻するジャパニーズカレーブームは、アメリカでも店舗を構えるアジアンフュージョンのチェーン店「Wagamama(ワガママ)」の人気メニューであるカツカレーの存在が大きいよう。
◆ロックダウン中に公開したレシピ動画が人気
『ザ・サン The Sun』によれば、「Wagamama」は創業した1992年から、チキンカツ、ベジタリアン用向けの野菜カツ、豆腐を使ったヴィーガンカツを乗せた3種類のカツカレーを販売。2019年からは通常より辛口のホットカツカレーの販売も始めました。
同店ではコロナ禍のロックダウンを受けて、昨年4月より店舗のYouTubeチャンネルでエグゼクティブシェフがレシピを紹介する動画シリーズの配信を開始。その第1弾として選ばれたのが他でもないチキンカツカレーでした。
人気レシピの公開に、ロックダウンで外食に出かけることのできなかったお店のファンたちからは、「イエス!私にはこれが必要だったのよ!」「感動で泣いちゃう!」「人生が変わりそう!」「今夜すぐにトライしてみる」と、興奮気味のコメントが殺到。
近年イギリスでは、アジア系ではない普通のスーパーマーケットでも箱入りカレールーの取り扱いがあることも手伝って、ロックダウン中にジャパニーズカレーを家で作ってみた人は多かったようです。
◆カツが入っていなくても「カツカレー」
ところがイギリスでは最近、箱入りカレールーまで「カツカレーソース」と、「カツ」を入れて呼ぶ人が増えているとか。
カツカレーを頼んでもカツの乗っていないカレーを提供するお店もあり、「#katsucurry」とハッシュタグ入りで間違ったカツカレーの写真をSNSに投稿する人が続出する、悩ましい事象が起こっていると『ソラニュース 24 Sora News 24』が伝えています。
前述した「Wagamama」では今年3月にボトル入りの「カツスムージー」を期間限定で発売。バナナ、りんごとパイナップル、「カツカレーソース」を合わせたものだと紹介されていましたが、これもやはり「カツ」とは名ばかりの通常のカレールーを使った商品でした。
◆英国在住日本人を中心にカツカレーポリス活動
その誤った認識を払拭(ふっしょく)すべく、イギリス在住の日本人を中心に本当のカツカレーとは何かを知るファンがカツカレーポリスを結成。#KatsuCurryPoliceというハッシュタグを付けて、ツイッター上で見回り活動をする人たちも登場しました。
カツカレーポリスは、カツレツ(Cutlet)が入っていないカレーやラーメン、ピザなどの商品を「カツカレー」「カツカレー味」と呼ぶのは間違っていると指摘する啓蒙(けいもう)活動を行うとともに、間違ったカツカレーを提供するレストラン広告やフードパッケージなどの写真をSNSに掲載し、通報。ジャパニーズカレーに対する間違った認識をバッサバッサと切りまくっています。
◆ドリトス・おにぎり・カレーが合体
そんな中、今年10月にスナックの「ドリトス」とコラボした「ドリトス・オニギリ・カツクランチ」なるカレーを考案したレストランが現れ、またしてもネット上が騒然としました。
広告を見ると、あたかもおにぎりの形状をしたカツカレー味のドリトスが発売されたように見えますが、これはイギリスの日本食チェーン店「YO!」が、今年10月のナショナルカレーウィーク用にドリトスとコラボして考案した期間限定カレーメニューの広告でした。
『ニュース・フロム・ウェールズ News from Wales』によると、「ドリトス・オニギリ・カツクランチ」はスパイシチーチキン入り(もしくは、しいたけ入り)のおにぎりに、粉々にしたドリトスをまぶして、その上にカレーソースをかけたもの。
このメニューにも特にカツは入っていないこと、また、ドリトス、カレー、おにぎりのまったく異なった3種の食材を合わせることで、日本のフードカルチャーを冒涜(ぼうとく)してしまったのではないかと心配し、「日本の皆さん、申し訳ございません」と謝罪ツイートする人も出る始末。
「カツカレー」が何なのか勘違いしている人は多そうですが、とにかくイギリスでのジャパニーズカレーが熱いことだけはしっかり分かりますね。
Sources:「The Sun」「Sora News 24」「News from Wales」「Independent」
<文/橘エコ>
【橘エコ】
アメリカ在住のアラフォー。 出版社勤務を経て、2004年に渡米。ゴシップ情報やアメリカ現地の様子を定点観測してはその実情を発信中。