着飾っても、アヒルの子はアヒル。「東京出身のお嬢様」と言っていた女の、化けの皮が剥がれ落ちた瞬間

人間は「生まれながらに平等」である。

これは近代社会における、人権の根本的な考え方だ。

だが一方で”親ガチャ”が話題になっているように、人間は親や生まれる場所、育つ環境を選べない。

事実、親の年収が高いほど、子どもの学力が高いこともデータ(※)によって証明済みだ。

私たちは生きていくうえで、多くの「生まれながらに不平等」な場面に遭遇してしまう。

中流家庭出身の損保OL・若林楓(27)も、東京の婚活市場で、不平等さを数多く実感することに…。

(※)お茶の水女子大「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

▶前回:年収1億男とドライブデート。女に「車を置きに家へ帰ってもいい?」と言うのは下心ではなく…

生まれながらの貴族・二世くん


女性は誰にだって、多かれ少なかれお姫様願望があると思う。

親が社長であったり、有名人である通称・二世くんという存在は、どこかでそんな願望を満たしてくれる存在なのかもしれない。

お金を出してでも買えない育ちの良さが、彼らには備わっている。そう思っていたけれど…。



友人の優菜がセッティングしてくれた、食事会の当日。その前に私たちは、2人でお茶をしていた。

「結局、楓はどうなのよ?いい人見つかったの?」
「うーん。みんないい人なんだけど、よくわからなくて」
「楓レベルなら、どこか妥協しないとだよ。でも今日の人は、かなりの優良物件だから」

そう言って彼女が教えてくれたのは、東京に実家があるという“二世くん”だった。

親が経営しているという会社名を聞くと、私でも知っているほどの大企業。むしろ、日本が誇る有名企業だと言っても過言ではなかった。

「しかも次男坊。最高でしょ?」
「うん、最高すぎる!!!」

こうして私は鼻息荒く、その食事会に参加したのだ。だが今回も、また私は気がついてしまった。

私たちは“生まれながらに不平等”であることに…。

ついに、理想とする男性に出会えた楓だったが…?

さっそく食事会の場所へ向かうと、すでに彼らは席に着いていた。

「はじめまして。幸次郎です」

二世くんの正解のような名前だなと思いながら、私は極力上品な笑顔を作る。

目の前の幸次郎さんは色白で、肌が綺麗な男性だった。

ゆっくりとした話し方には、品の良さが滲み出ている。洋服も、一見どこのブランドかはわからない上質な物を身に着けていた。

「楓ちゃんは、どんなお仕事をされているんですか?」
「私は損保で働いています」

「幸次郎さんは?」と聞こうかとも思ったが、事前に優菜から親御さんの会社名を聞いていたし、いやらしいかなと感じたのでやめておいた。

「何を召し上がりますか?女性陣、苦手な物とかはありますか?」

さりげない気遣いと丁寧な言葉遣いに、これまでデートした人たちとは違う匂いを感じる。

「なんでも大丈夫です」
「好き嫌いがない女性は、いいですね」

褒めるポイントも、なんだか育ちが良さそうだ。


「優菜ちゃんとは、どういったお知り合いなんですか?」
「大学の同級生なんです」

優菜はやたらと顔が広い。私が婚活を始めてからは、食事会などの場でも度々お世話になっている。

見た目は、良くも悪くも派手。いつも高そうな物を身に着けていて、本人から「私は東京出身で、親がお金持ちだ」と聞いたことがある。

優菜と幸次郎さんがどこで出会ったのかはわからないけれど、きっとどこかの食事会に違いない。

「幸次郎さんは?なんで優菜と知り合いなんですか?」
「僕の友人が、共通の知り合いでして」
「そうなんですね〜」

この日の会話は当たり障りのないものばかりだったけれど、終始和やかだった。そして会話をうまく引き出してくれる彼のおかげで、とても楽しかったのだ。

決してガッツいていなくて、どこまでもスマートな幸次郎さん。そんな彼から1週間後、デートのお誘いがきたのである。

― ウソでしょ!?これがうまくいけば、私も玉の輿だ…!

そう思っていた。

だが実際に幸次郎さんとデートをしてみて、意外すぎるほど慎ましい生活に驚かされたのだ。



幸次郎さんがセッティングしてくれていたお店は『ブラマソーレ』だった。

ここは『ドンチッチョ』出身のシェフが作ったレストランだという。外苑西通り、ワタリウム美術館とは反対側の道を入ったところに、その店はあった。


超高級店というよりかはカジュアルな雰囲気で、知る人ぞ知るというような素敵なイタリアンだった。

だがワインリストを手渡そうとすると、幸次郎さんは首を横に振る。

「ごめん。仕事が終わったのがギリギリで、車を置きにいく時間がなくて…。でも楓ちゃんは、好きな物を飲んでね」

結局、この日は私だけがお酒を飲むような形になってしまった。

…そしてこのデートで、私は二世くんの悩みと現実を知ったのだ。

資産がない…!?意外なる二世くんの生活とは

家業を潰せないプレッシャー。女性選びも慎重になり…


「好きなものを飲んでね」とは言われたが、初デートで1人だけガブガブお酒を飲むなんてできない。私もワインは控えめにしながら、食事が進んでいく。

「わぁ、美味しい…」

思わずそうつぶやいてしまうほど、料理はどれも美味しかった。

カラスミの塩味が効いた『浅利とカラスミのリングイネ』は、麺の小麦の香りと味までしっかりと楽しめる。


「幸次郎さんは、普段からこういうお店によく来られるんですか?本当に美味しいですね」
「そうだね、外食は多いかな。でも決まったお店に行くことが多いから、あまり新規店には行かないかもなぁ。ギラギラ系のお店も苦手だし」

やはり、成り上がり系の経営者とは何かが違う。

そんなことを思いながら、パスタをフォークに巻きつける。すると幸次郎さんがジッと私を見つめながら、こんなことを言い始めた。

「あのさ。ちょっと失礼なことを聞くようで申し訳ないんだけど…。楓ちゃんも、優菜ちゃんと同じような感じの子なのかな?」

最初は言っている意味がわからなかった。

「ごめんなさい。私は優菜みたいなお嬢様でもないし、東京出身でもないんです…」

― やっぱり、お嬢様じゃないとダメか。

肩を落としていると、幸次郎さんは慌てた様子でこう言った。

「いやいや、楓ちゃんは素敵だよ。これは悪口とかじゃないし、気にしないで欲しいんだけど…。優菜ちゃんって以前、僕の友人と交際していて。しかも何人かと。この界隈じゃ有名人なんだ」

なんとなく想像がつく。

彼の話から、優菜は東京の下町出身で、ごくごく普通のサラリーマン家庭出身だと判明した。

「私はむしろ残念な感じで。前まで同じ会社の人と付き合っていて、一切遊びに行ってなかったんです」
「そうなんだ!」

そこまで言うと、幸次郎さんはぽつりぽつりと本音を話し始めた。

「楓ちゃんだから言うけど、家のこともあって派手な女性が苦手で…。優菜ちゃんみたいな、華やかすぎる子は警戒しちゃうんだよね」

これは意外だった。なぜなら彼女は一見華やかで、東京カーストの上位に君臨していそうな雰囲気を醸し出していたからだ。

一方で優菜は、私のことを“埼玉出身の中途半端な損保OL”と、どことなく見下していたなと思う。

― もしかしたら、あれは彼女のコンプレックスの表れだったのかな?

彼女は、お金持ちに絞って婚活しているのを知っている。だが残念なことに、大事な家の資産を食い潰すような女性は、結局こういう男性からは選ばれないのだろう。

「幸次郎さんは、どういった女性と交際されてきたんですか?」
「普通の子が多いよ。SNSとかあまりやっていない感じの子が多いかなぁ。従業員さんの目もあるしね…」

そうなのだ。彼らも結局、同じような境遇の女性を選ぶ。

慶應幼稚舎や学習院、雙葉などの名門校を卒業している、生粋のお嬢様。しかも彼女たちは決して華美ではなく、傲慢でもない。

慎ましやかに過ごしている、本物のお嬢様でなくてはいけないのだ。

男女ともにSNSで見せびらかすこともない、本物たち。その世界には、一般人がどう足掻いても入れない。なぜなら彼らは代々、生まれながらにしてお金持ちだからだ。

帰りは幸次郎さんが車で送ってくれたのだが、オープンカーなどではなく、シックな高級車だった。

「幸次郎さんは、どちらにお住まいなんですか?」
「僕は学芸大のほうだよ」

そんな話をしながら、私はぼんやりと考えていた。

― 平凡な私じゃ、太刀打ちできない相手だわ…。

二世くんは、自分の資産を守らなければならない。だから派手な生活を好まないし、恋敵になるのも“生粋のお嬢様”みたいな子ばかりなのだろう。

本物の格を見て打ちのめされ、現実を思い知ったデートだった。


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地方の名家の悲哀

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