何者?人形をかぶって素顔を隠す女性millnaさん「整形では人形の顔になれない」

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 人形の仮面を被って活動をしている、millnaさん(@mi_te_yo)という名のユニークな女性がいます。なぜ、人間離れしたドールの仮面を被っているのでしょうか。millnaさんはSNSのプロフィールなどで「選べなかった身体 デコって自分にしてこ」などと発言しています。一体これはどのような意味なのかも含め、millnaさんに話をうかがいました。

◆自分の素顔を人前に出したくなかった

 millnaさんが活動拠点としているのは高円寺。「カワイイカルト高円寺店」というブティックを経営しながら仮面の制作をしています。今回はそのカワイイカルト高円寺店にお邪魔しました。

 店に入ると天井からはレトロなシャンデリアが下がっており、店の至るところに人形が展示されています。展示されている人形はmillnaさんが手作りしたものもあれば、ドイツのニュルンベルクで購入したものもあります。

 そして、古着やアクセサリーが販売されています。これらはmillnaさんが作ったもので、最近のお気に入りはロリータファッションに寄せたジャージー素材のセットアップ。ココ・シャネルのジャージースーツからヒントを得たとのことです。

 そんなmillnaさんの職業はファッションデザイナー。普段は週3回お店に立ち、その他の日程は仮面や人形や服を作っています。millnaさんが仮面を被るのはイベント時。仮面を作って被る活動を始めたきっかけは、自分の素顔を人前に出したくなかったからだと語ります。

◆整形をしても人形の顔にはなれない

「そもそも、容姿にまつわるコンプレックスがあって自分の顔に自信がなかったんです。この社会で顔を出すと人間扱いされない気がしてしまって。
メディアでは“美人過ぎる○○”とか、アスリートでもスポーツの実力ではなく顔が可愛いとかで話題になったりするじゃないですか。そういうことに疑問を抱いていて。だから、ニュートラルな状態に持っていくために私には仮面が必要だと思ったんです。ちゃんと人間扱いされるために顔を見せないでいたいと。

 やがて仮面そのものの制作技術が上達し、人形のようになることへ目標が変わりました。よく、整形をしたりメイクを工夫したりすればいいのではないかとも言われるのですが、私がなりたい顔はこの人形と同じく、トロンとした伏せ目に、過度に小さな鼻、厚くうねった唇
この顔はどんなに腕がいい整形外科医でも作れない顔です。実際に私も整形手術を受けたのですが、やはり整形には限界があり、人形の顔にはなれないとわかりました」

◆ネットの書き込みをきっかけに容姿に自信をなくす

 容姿にコンプレックスを持つ人は、幼い頃に男性に「ブス」と言われていじめを受けた経験がある人もいますが、millnaさんは特にそのような経験はなかったといいます。中高大と女子校で男性とかかわることは少なかったものの、インターネットの掲示板の男性の書き込みの影響が大きかったようです。

「私が高校生の頃、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)で女性が異常に軽視される書き込みが多くて、世の中の男性は女性のことをこんな目で見ているのかとショックを受けて……。今の5ちゃんねるはわかりませんが、当時の2ちゃんねるでは女性=知性のないバカといった扱いで、自分の身体に自信がなくなりました。
非常に多感な時期にインターネットしか居場所がなかったので、男の人ってみんなそうなのかと。今は良い男友達にも恵まれ考えは改めています」

◆仮面を被ると回復願望を叶えられる

  ネットの書き込みがきっかけで自分の顔にコンプレックスを持ったmillnaさん。そして、14歳くらいから人形を作り始めます。やがて仮面制作も始めますが、当時は仮面というと一種のフェティッシュだったので普通の店には売っておらず、アダルトショップで買ってきた動物の仮面にメイクを施して作ったこともあったそうです。しかし現在被っている仮面は3Dプリンタを用いて作っているとのことです。

 また、仮面を被ることは何かの変身願望、例えばコスプレをすることはそのキャラになり切る願望があることが多いですが、millnaさんが仮面を被るのはそうではなくて回復願望だと語ります。

「私は私になりたかったんです。美しい誰かになりたいわけではなくて、あるはずだった自分になりたかった。例えば、コスプレは自分じゃない憧れのキャラになりたいという願望でされている方も多いと思います。ファッションとコスプレは明確に区別されていて、コスプレが理想の他者になりたいという変身願望なら、ファッションは理想の自分になりたいという回復願望だ、と考えていて。

 そしてデコるという言葉を私があえて使っているのは、仮面を作って身につけて新しい顔になっちゃおうとか、服ごと新しい身体ってことにしちゃおうという取り組みを、メイクやファッションと同じ感覚で語るため。好きなメイクをして、好きな服を着て、選べなかった身体をデコって自分にしていこう。できるし、していいんだよって、そう伝えたいです」

◆仮面を被った瞬間、別人のような仕草に

 理想の自分になるために今ある自分の身体をデコる。また、特徴的だったのは、millnaさんが仮面を被った瞬間、まるで別人のようなしなやかな仕草になったことです。そして「はぁ~! 楽だ!」とこぼしたこと。millnaさんがファッションとして理想の自分になれた瞬間を目の当たりにしました。

 また、「楽だ」と言った言葉には「呼吸が楽だ」という意味も含まれていました。今まで仕上げてきた仮面は視野がとても狭く、小さな穴からしか見えず、呼吸もほとんどできなかったそうです。特にドールモデルの「橋本ルル(※)」の仮面や、「DOLL GAL millna」という名前で活動をしていた仮面は普通の人だったら30分で呼吸が苦しくなるところを、millnaさんは日々の訓練により3時間以上つけていられたそうです。

 しかし、最新の仮面は鼻と口をなくしてしまって目だけのパーツがついている仮面なので、今までの仮面より空間ができたことで断然呼吸が楽になったということでした。

(※橋本ルルは〈ドール面制作サークル「ぬこパン」〉とのコラボレーションで生まれた作品です)

◆性的な目線にすごく嫌悪感がある

「めちゃくちゃな話に感じるかもしれませんが、私は本来人形だったはずなんです。でも、なぜか人間の身体に生まれてしまった。そのくらいに考えています。非常にセンシティブな話ではあるのですが、性的な目線にすごく嫌悪感があって。女性であることは苦しいですが、別に男性になりたいわけではありません。人形って人間の性的な身体に対して真逆だと思っています

 じゃああなたはセクシャリティに関してアセクシャル(他者に対して恋愛欲求や性的欲求を抱かないセクシャリティのこと)なんですか?と聞かれることもあるのですが、それともまた違って。自分の自然な状態に、あまり名前をつけたくないのかもしれません。性はグラデーションだと思っています。私はただ、私にとって、性的ではない状態になりたいんです。それが私にとっては人形です」

 仮面を被ることは変身願望ではなく回復願望でありファッション。millnaさんの場合は仮面を被るという奇抜な行為ですが、ネイルサロンに通って綺麗なネイルを施すことやお気に入りの服を着ることも身近な回復行為なのではないかと思えた取材でした。自分の容姿に自信がない方は、変身願望ではなく、回復願望という考えを取り入れてみるのも生きやすくなる手なのではないでしょうか。
<取材・文/姫野桂 写真/我妻慶一>

【姫野桂】
フリーライター。1987年生まれ。著書に『発達障害グレーゾーン』、『私たちは生きづらさを抱えている』、『「生きづらさ」解消ライフハック』がある。Twitter:@himeno_kei

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