離婚し実父にいびられる日々から女性を救う…大阪あいりん地区・貧困者のリアル

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 明日を生きるお金も、気力もない――。そんな絶望の淵にいるときに、救ってくれる人たちがいる。絶対に見捨てない信念を持つ、不動産会社兼NPOの活動に密着した。

◆大阪あいりん地区に寄せられる貧困者のリアル

 生活困窮者を支援する第一人者として大阪で今、もっとも注目されているのがNPO法人生活支援機構ALLで代表理事を務める坂本慎治氏だ。支援に向かう車中、8年前にNPO法人を立ち上げたきっかけを坂本氏にうかがった。

「不動産会社で働いていたとき、夫のDVに苦しめられて、中学生の娘と和歌山県から逃げてきた親子が来店したのがきっかけです。お金はなく、3日間、水しか口にしておらず、親子とも顔面蒼白。警察、役所、ほかの不動産会社に相談しても門前払いで、『娘だけでも助けて』と母親は震えていました」

 空室に悩む文化住宅を持つオーナーに相談したところ、親子の入居を快諾。生活保護を受給しながら生活を立て直し、1年後に母親は、社会復帰を果たしている。

◆環境と機会さえ整えば、人は立ち直れる

「環境と機会さえ整えば、人は立ち直れると学びました。それ以降、生活困窮者や精神障害者など、ほとんどの不動産会社が避けていた人たちにも積極的に住居を提供。NPOの立ち上げは、その延長線上にすぎません。

 ただ、部屋中の壁を穴だらけにするなど、トラブルも頻出します。現在、民間の賃貸住宅を600室ほど用意し、所持金ゼロでも入居できる環境を整えていますが、大阪居住支援協議会に加盟するオーナーの物件のみ紹介しています。加盟には、リスクを理解してもらうため、面談と誓約書を義務づけています」

◆1Kのアパートに住む女性

 およそ30分後、大阪市生野区にある1Kのアパートに住む尾藤早苗さん(仮名・52歳・無職)の元に到着。彼女の健康状態を確認する坂本氏。彼女がここに住み始めて1週間になるという。

「夫の介護に心身が疲弊して離婚したら、次は実父からいびられる日々が続きました。仕事ができる精神状態ではなく、でも貯金はゼロ。気づけば、消費者金融の借金は100万円を超えていました」

◆生活保護で心と生活を立て直し

 坂本氏に相談するまで、国に頼ることへの抵抗感と、自立できない自分への情けなさから、生活保護には踏み切れなかったという。

「親を殺すか、自殺をするか、そこまで追い詰められていました。YouTubeで坂本さんを知り相談したら、すぐ住居を紹介してくれたんです。先日、何年かぶりに、朝、幸せな気分で目覚めることができました。生活保護で心と生活を立て直しながら仕事を見つけ、早く人生を取り戻したいです」

◆20代のケースも

 続いて向かった先は、堺市にある1Rの賃貸マンション。今年の8月下旬からここで暮らしているのが、賀谷博之さん(仮名・27歳)だ。

「同居する祖母の監視と、叔父からの虐待。就職しても職場へあらぬ噂を吹聴され、即クビの繰り返し。仕事はできず貯金もない。家は借りられず、居場所もなかった」

 尾藤さん同様、賀谷さんもYouTubeで坂本氏を知り、相談した。生活保護の受給は1か月で打ち切り、すでに自転車配達員として月15万円近くを稼いでいる。

◆生活保護で社会復帰

「生活保護でラクをしてという声もありますが、社会復帰を目指す人の生活基盤になっていることも事実です。借金や家賃の支払いで所持金は2000円ほどしかなく心細いですが、この感情は働けることで生まれた嬉しい不安です」

 誰も見捨てへん。坂本氏は今も生活困窮者の声に耳を傾けている。

【坂本慎治氏】
NPO法人生活支援機構ALL代表理事。大阪居住支援ネットワーク協議会代表理事。著書に『大阪に来たらええやん! 西成のNPO法人代表が語る生活困窮者のリアル』(信長出版)

<取材・文/週刊SPA!編集部>

※厚生労働省の生活支援特設ホームページでは、新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少し生活に困窮する方の相談を受付ている
「新型コロナウイルス感染症 生活困窮者自立支援金相談コールセンター」
0120-46-8030(受付時間9:00~17:00 平日のみ)

―[貧困パンデミック]―


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