不調のミスドと絶好調のスタバ。キャンペーンから見えるチェーン店の“愛され力”とは

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―[あの企業の意外なミライ]―

◆ミスドの不調にエールが続々と

「ミスド好きなのに、お店がどんどん減って悲しい」
「今月のミスドポケモンドーナツは盛り上がるといいな」
「ミスド、コンビニのドーナツより100倍美味しいけどな…」

 これは、2021年11月8日に公開されたミスタードーナツ(以下、ミスド)の不振の背景を分析した記事「ミスタードーナツ『4年で200店が閉店』の謎。コンビニスイーツ人気が逆風に」に対して、Twitterで寄せられたコメントの一部です。

 本当にミスドはこのまま不調が続いてしまうのでしょうか? その答えをミスドとスタバのキャンペーンを通じて分析していきましょう。

◆スタバは4年で300店舗増加

 まずは両者のここ数年の店舗数を比較してみましょう。ミスドは2020年に50周年を迎え、スタバは今年日本上陸25周年に当たる年です。そんな両者ですが、ここ数年は勝敗がはっきりと分かれています。

 現在、ミスド国内961店舗、スタバ1601店舗と、1.5倍ほどスタバのほうの店舗数が多い状況です。ミスドは4年で約200店舗減少している一方で、スタバは4年で約300店舗増加させており、かつ、コロナ禍でも着実と店舗数を増やし2020年は約100店の出店を行っています。

◆ご当地フラペチーノからわかるスタバの強さ

 では、なぜスタバはここまで“強い”のでしょうか?

 そのヒントの一つが、「地域、店舗、1杯にこだわる」という同社のミッションとキャンペーンです。今年6月30日から8月3日まで展開されていた「47 JIMOTOフラペチーノ」はとても話題になりました。日本全国の名産や特色を生かした地域限定品として話題になったこのメニュー。47もの異なるメニューを提供することによる業務上の煩雑さを考えれば “あり得ない”取り組みです。しかし、この企画は、スタバの理念を伝える最良の手段でした。

 この「47 JIMOTOフラペチーノ」の大きな特徴の一つが、「ご当地」ではなく「地元」の誇りとなる名産を使用している点です。例えば、栃木といえば名産のイチゴであるとちおとめを使いそうなものですが、違うのです。栃木県民はかみなりを身近な存在として「雷様(らいさま)」と呼んでおり、夏の風物詩として身近な存在だそうです。そこで、「栃木 らいさま パチパチ チョコレート フラペチーノ」として、かみなりをイメージしたフラペチーノができあがったのです。

◆ボトムアップで作り上げたブランド力

 こうした地域の誇りを生み出すメニュー開発に加え、来店客だけではなく、パートナー(従業員)もリスペクトするのがスタバの特徴です。実はこのご当地メニュー、すべて各地域のパートナー(従業員)がアイディア出しなどの開発に携わっているのです。そして、ご当地フラペチーノの登場により、今夏のスタバの業績は絶好調でした。

 いま、企業は株主資本主義の時代から、従業員や取引先まで含めて企業の仲間であるという考え方が浸透しています。スタバはすでに、この世界観を自社で体現していると言えます。地元の人が誇りを感じられる商品を店舗スタッフの声をもとにボトムアップ式に開発ができている事実こそが、今のスターバックスの強みなのです。

◆「#ミスドの思いド」は何がしたかったのか?

 一方、ミスドはどうでしょうか。

 4年で200店舗閉店しているミスドですが、ここ最近業績がV字回復の兆しであることは、前回の記事で述べました。足元の2022年第1四半期の営業利益は7.1億円。これは不採算店舗を閉鎖することで、収益を確保できる店舗に絞り攻勢をかけていたからです。そんなミスド、現在はキャンペーンを通じて復活を狙っているようです。

 そのキャンペーン内容から同社が復活できるのかを紐解いていきましょう。2020年に50周年を迎えたミスドが行ったキャンペーンは、「開けた瞬間、いいことあるぞ」というコピーでおなじみの菅田将暉さんを起用したテレビCM。さらに、Twitterでミスタードーナツとの思い出を投稿してもらう「#ミスドの思いド」というキャンペーンを実施しました。

 このキャンペーンの狙いは何でしょうか。それは、キャンペーンを通じてミスドというブランドに温かみを感じてもらうことです。近年は企業の公式Twitterアカウントは、商品告知がメインであり、消費者と積極的にコミュニケーションを取るスタンスのアカウントはあまり多くありません。つまり、消費者と企業の接点は「商品の紹介」に終始しがちなのです。

◆ミスドの理念とは?

 しかし、ミスドは違いました。50周年を機に「ミスタードーナツというブランド自体」に対する声を集めたいと考え、「ミスドの思いド」を企画したのです。ミスドの理念は「客の心を心とせよ」です。これは、ミスドの親会社であるダスキン企業集団の恩人でもあった故・倉本長治氏が、ミスタードーナツのために送った言葉です。

 ミスドのSNS戦略を見ていると、まさに消費者と心を通わせようとする「客の心を心とせよ」という理念が浸透しているように思います。戦略は違えど、スタバと同様、ミスドも「日本各地で愛されるブランド」になるためにキャンペーンを実行していることが理解できたと思います。

◆“愛される”という点で通底

 駅前のミスドが閉店しても、ミスドとの思い出は消えないーー。

 そんなSNSでの声を「わかってますよ」と言っているかのようなミスドのキャンペーンを見ると、不振からのV字回復をまだ諦めていないことがわかるのではないでしょうか。

「愛される」という点で実は通底していたスタバとミスド。

 オールドファッションのような甘い思い出も、ダークモカチップフラペチーノのような苦い思い出も、すべて乗り越えていまの私たちがいます。愛される企業のヒントは、スタバとミスドの理念に隠れているのかもしれません。

<文/馬渕磨理子>

―[あの企業の意外なミライ]―

【馬渕磨理子】
経済アナリスト/認定テクニカルアナリスト、(株)フィスコ企業リサーチレポーター。日本株の個別銘柄を各メディアで執筆。また、ベンチャー企業の(株)日本クラウドキャピタルでマーケティングを行う。Twitter@marikomabuchi

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