「公営ギャンブルはやる前から負けている」は間違っている
◆公営競技、控除率25%の壁
ギャンブルを嫌う人からよく言われるセリフがある。それは「(控除率が)25%とられるのに公営ギャンブルなんてやるだけ損」という内容だ。
たしかに競馬をはじめとした日本の公営競技は全てパリミチュエル方式といって、売上全体から一定の控除を主催者収入として取られた残りを払戻金に充てており、日本の場合は競技や賭式によって違いはあれど平均約25%の控除をされた額が払戻金になっている。
だが、この指摘に対して日本の公営競技ならではの利点がある、ということを忘れてはならない。やるだけ損、というのは、さすがに言い過ぎである。
◆他のギャンブルや投資は「利益が見えない」
まず、大半の他のギャンブルや投資では利益が見えない。公営競技ならばオッズというものがわかる。もちろん変動するが、締切に近づくにつれ、大体の倍率が見えてくるようになっている。
このような仕組みはなかなか他のギャンブルや投資ではない。もちろん、ルーレットのようにどこに置けば何倍になる、というものは存在しているが、少数派である。どの投資や公営競技以外のギャンブルにおいて、ゴールの高みがわからないようになっている。
しかし、約25%に設定されている日本の公営競技は、払戻から25%のお金がカットされているかわりに、ある程度の払戻予定を事前に察知することができる。
オッズ板はいわば、金融商品が並ぶなかである程度の利益予定が公表されているようなものだ。それであれば、この商品は儲からないと判断してヤメることもできるし、利益が当たっても低いならば購入を見合わせる=回避することもできる。
「このレース結果にはこれくらいの倍率になるので、納得できるならば買ってね」という情報を開示した状態で打つことができるということだ。
25%の控除後の金額に納得して投票する意識があれば、「やるだけ損」と断言できるだろうか。少なくとも、納得して投資することとの違いはないはずだ。
◆「どうせ負ける」は単純に技術不足
こういうことをいうと「そもそもギャンブルなんて負けるように出来ている」というセリフが帰ってくる。大半のギャンブル好きには耳の痛い話かもしれない。だが、これも先ほどと同様なことがいえる。
オッズが開示されている世界で負けるのは単純にその打ち手の技術不足だ。よくよく考えてみればわかることだが、どの投資やギャンブルの世界にもプロが存在している。
彼らは研究や努力を重ね、勝てるところまで技術を上げてきたわけだ。結局、負けている人というのは技術が不足しているだけである。
そして、先ほどの「そもそもギャンブルなんて負けるように出来ている」という人は、ギャンブルを嫌いか、興味がないか、もしくは努力不足で負け続けて嫌いになったかのいずれかであり、技術を高めたことがない人たちである。これはギャンブルに限った話ではなく、仕事でも恋愛でも投資でも、何にでも当てはまることではないだろうか。
ギャンブルを嫌いか、興味がないか、という人がそう発言するのはしょうがないと思うが、もしくは努力不足で負け続けて嫌いになった人は、とどのつまり、ただの言い訳である。
◆25%負けで済む平均値になれるなら立派な趣味だ
また、回収率が100%を超える勝ち組ではなくても、本当に控除率分だけ25%負ける平均的な技術をもって公営ギャンブルを楽しむことができるのであれば、それは趣味としてかなり優秀である。
趣味にどれほどのお金を使うか。人によって豊かさの基準は違うだろうが、金額だけ見ても、1日競馬場で1万円の予算で遊び、帰るときに控除率25%分の2500円を負けて、平均7500円を持って帰るようなら、他の趣味でいえば2500円使って1日遊んだことと同様のはずである。
もちろん平均値なので、日によっては勝ったり、1万円負けたりもするだろう。だが、長期的に1日2500円程度の負けで済む趣味を、毎週土日にやっているだけならば、出費は2万程度だ。平成20年に行われた統計局の調査では教養娯楽に使う支出の平均額は25,359円である(参照:家計調査の見方・使い方)。いたって普通であるといえるだろう。
そして、月2万円が大きい額だと思うならば予算や打つ日を減らせばよいし、大負けしたのならば無理せず次週は控えるといった調整をすればいい。そんな控えた日でも技術を上げるために予想を研究する時間に費やし、技術を上げることは、そのギャンブルを好きならば可能なはずである。
ギャンブルは課金で強くはならない。お金を賭けなくても技術を上げることはできる。そして、予算管理はきっちりやる。これを理解できておらず、ずるずると打ち続けて負ける人は依存しているということになってしまう。
ギャンブルに興味がない人も、打つ人も、一定のギャンブルリテラシーをもってお互い理解しあえるようになることを願っている。
文/佐藤永記
―[公営競技生主・シグナルRightのひたすら解説]―
【佐藤永記】
公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。