伝説の落語家・川柳川柳、逝く!「人生が圧縮された最後の高座」と「壮絶な酒のしくじり」

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 落語家の川柳川柳(かわやなぎ・せんりゅう)さんが、11月17日に亡くなった。享年90。

「川柳師匠は昭和の名人・三遊亭円生の弟子として落語界入り。三遊亭さん生の高座名で、二ツ目時代から人気者でしたが、1978年の落語協会分裂騒動のいざこざで円生一門から破門され、現在の名前で活動するようになりました。

 寄席では音曲を交えた新作落語を披露し、明るく軽やかな高座で知られていました」(古典芸能ジャーナリスト)

 一方で、川柳さんは大の酒好きとしても知られていた。

 師匠の円生の自宅玄関をトイレと間違った話や、二日酔いで収録をすっぽかして『笑点』のレギュラーになりそびれたエピソードなど、アルコールでの失敗は数知れず。

 過去にその“酒神”ぶりを目撃したライターが語る。

「もう10年ほど前のことです。週刊誌の連載で、毎回、週替りでゲストにインタビューする企画だったのですが、取材会場は川柳師匠の希望で池袋の居酒屋に。そんなに高い店ではなく、川柳師匠は焼酎のお湯割りを召し上がってたように思います。

 アルコールのおかげで師匠の舌の滑りも絶好調。口で楽器の真似をする”口ラッパ”の芸なども披露してくれて、取材スタッフは大いに楽しませてもらっていたのですが、そのうち”おひねりはないのか”とか”もっと飲ませろ”とか暴れだして、もう大変でした。最後は足腰が立たなくなった師匠を、無理やりタクシーに乗せてお帰しした覚えがあります」

 ちなみにその翌日は、川柳さんは上野末広亭の夜の部に出演する予定だったが、二日酔いで遅刻して順番を代わってもらったそうだ。

■人生が圧縮されたような、すごい高座を見た

 そんな川柳さんの代表作は、軍歌やジャズを織り交ぜて戦後の世相を語る『ガーコン』という新作落語。晩年はそのネタばかりを寄席にかけていた。

 川柳さんのラスト高座を目撃したというコラムニストの中井仲蔵氏が述懐する。

「2018年8月に『座・高円寺』で催された、『夏のガーコン祭り』というホール落語会が川柳師匠が表舞台に立った最後の高座でした。

 当時の師匠は87歳。すでに足腰がかなり弱まっており、さらには軽い認知症が始まってました。これまで何万回も高座にかけた『ガーコン』を演じましたが、同じ話題や歌を何度も繰り返すという状態でしたね。そんなわけで内容はもうグダグダで、観客のほうが緊張して固唾を呑んで見守るようなありさまでしたが、それでもなんと1時間20分もしゃべり続けるという、忘れられない一席でしたよ」

 さらに続けて、こう語る。

「川柳川柳という噺家の人生が圧縮されたような、すごい高座でした。かつて作家の色川武大さんは古今亭志ん生師匠が高座で居眠りしたという伝説的な現場に居合わせたそうですが、平成最後の夏に川柳師匠の高座を観られたのは、私の人生の宝だと思っています」

 コンプライアンスなどが日毎に厳しくなる昨今、川柳川柳さんのような芸人は、もう出てこないかもしれない。

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  • 11/20 12:00
  • 日刊大衆

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