女との車デートで“アニソン”を流した男。デートの結果は…

お金持ちは、モテる。ゆえに、クセが強いのもまた事実である。

そして、極上のお金持ちは世襲が多く、一般家庭では考えられないことが“常識”となっている。

“御曹司”と呼ばれる彼らは、結果として、普通では考えられない価値観を持っているのだ。

これは、お金持ちの子息たちの、知られざる恋愛の本音に迫ったストーリー。

▶前回:整形外科医のおぼっちゃまとワインバーで初デート。女が即帰りたいと思った“ある失言”とは一体…

真由香(30)「もしかして、彼は“あの経験”がないのかも…」


彼とのドライブで、心地の良い洋楽が流れていたはずなのに、いつの間にか、聞き慣れないリズムの曲が流れ始めた。

― え…。これって…いわゆる“アニソン”っていうやつよね?

女性の若く高い声が強調された歌が、白いベンテイガの車内に響き渡る。正直、これまでの人生で意図的に聞く初めてのアニソンだった。

ポップで楽しい気分となったが、デート中の車内にこの音楽がかかったことに、どこか違和感を覚えた。

季節はもう秋なのに、運転席の彼は半袖のラルフローレンのTシャツを身にまとい、とても汗をかいていた。

「あ、ワタクシ、アニメ大好きなのですよ~。本当は、メイドさんとかも好きで…」

彼は楽しそうに早口でイキイキと話すが、私の耳にまるで入ってこなかった。

― なるほど…帰ろっと。

私が早く帰るために考えたのは、急な腹痛でお手洗いにこもる作戦だ。

まず、目的地である横浜に到着する少し前から腹痛の演技をする。次に、ショッピングモールに着いてすぐ、お手洗いにわざとらしく走って向かった。

『お腹が痛く、お手洗いから出られそうにないので、迷惑をかけてしまいそうです。先に帰っていてください』

計画通り、お手洗いの中から彼にLINEを送ったのだった。

突然、デート中に女から「先に帰って」と言われた男の反応は?

すると、しばらく経ったあとに、彼から返事がきた。

『大丈夫ですか?待っておりますので、お気遣いなく!』

身勝手なのは、百も承知だ。しかし、彼をすでに生理的に受け入れられなくなっていたので、これ以上一緒にいたくなかったのだ。

そんな私の気持ちに、彼は気がつくはずもないだろう。

あの音楽と彼のアニメに関する会話…。そして、冷静に彼のこれまでの行動を思うと、私はあることに気がついたのだ。

おそらく女性経験が皆無だろう、と。



彼との出会いは、職場の後輩からの紹介だった。

新卒で大手人材会社に入社した私は、営業で成績をあげ、同期の中で最速の出世をした。当然、多くの同僚から慕われている自覚がある。

見た目だって、美容皮膚科やパーソナルジムに通っているから、新卒の頃より綺麗だ。

一方プライベートは、3年前に同期の彼に浮気をされてしまった。それから男性に対して、何処か疑い深くなってしまい、今、落ち着いた恋人はいない。

だから、最近は複数人とのデートを楽しんでいた。

「真由香さん!かなり美人ですし、仕事ばかりしてないで、素敵な彼氏を見つけましょうよ。誠実な、いい男紹介しますから!」

チームの後輩が気を使い、そんな私に紹介をしてくれたのが、今日のデート相手だったのだ。

「僕の中学からの親友です。本当に、絶対後悔しないですから!お願いします」

年下だし…と、断ろうと思ったが、後輩はその男がかなりのおぼっちゃまだということを、私に必死で訴えてくれた。

そこまで言うならと承諾したが、そこには大きな理由がある。もしそのおぼっちゃまがダメでも、ほかの御学友など、次の恋愛につながるチャンスもあるかもしれないと思ったからだ。

そうして話はまとまり、中目黒の『ICARO miyamoto』で後輩も交えて3人で会うことになったのだ。

後輩は、遅れて参加するそうだ。どんな人なのだろう…と、少しワクワクして駅で待っていた約束の夜。

約束は20時。そこで、待ち合わせ時刻の5分前に現れた彼に私は心底驚いてしまったのだった。

― えっ、まさかこの人…?想像していた人と、全然違う。


「初めまして、ワタクシ、太郎と申します」

太郎と名乗る彼の、元ラガーマンらしいガッチリとした体型は、軽く100キロはあるように見えたが、悪い印象ではなかった。

それは、太めの右腕にキラリと光っていた、ロレックスが似合っていて、品がある人だな…とも思えたからだ。

― 言ったとおり“おぼっちゃま”だわ。

しかし、残念だったのは洋服だ。季節はもう秋なのに、グレーの半袖を着ていて、そのうえ、汗染みができていた。

おそらく体型から察して、暑がりなのだろう。

目が小さく顔も大きめの太郎は、タイプではなかったが性格はとても素敵だった。

初めこそ緊張するなどと言っていたが、きちんとした言葉遣いで、私の話に優しく相づちを打つ。

そんな当たり前の振る舞いを、できない男が多いことを知っていたからこそ、とても好印象だったのだ。

それが素できてしまう理由を実感したのは、私の想像以上のお育ちであった太郎のバックグラウンドだ。

「わ…ワタクシの、実家はサブコンです…。そ…祖父の代からですが」

社名を聞いて驚いた。まさか、自分が知っている企業の跡取りだったのだ。

― これはやはり、チャンス…!

内心かなり舞い上がっていたので、会話中に太郎と目が合わないことを不思議に思ったが、あえて触れなかった。

『ワタクシと、もう一度食事に行ってくれませんか?』

解散してすぐに、直接ではなくLINEでこの連絡をもらった。こうして2度目のデートは、2人でランチを兼ねてドライブに行くことになったのだ。

真由香を誘った、太郎の本心とは…?

約束の朝。私の自宅近くの天現寺交差点付近まで迎えに来てくれた太郎は、相変わらず品があった。

「これ、ハイ!」

私が買っておいたお茶を渡すと、なんと太郎も用意していたらしい。

気が合いますね、と笑った。

― これは、いい感じかも。

しかし、ドライブ中の太郎は、とにかく自分の話ばかりしていたが、かなり緊張しているようだった。

「わ…ワタクシ、最近ですね…」

「は…母が、き…厳しいので」

せっかくだし、太郎の話を聞いてみようと思い、それぞれの話題に相づちを打った。

そうして会話をしていると、真剣な顔つきで太郎が聞いてきたのだ。


「あ…あの、真由香さんのご…ご両親は何の仕事をしているのですか?」

どうやらこれが、今日の本題だったようだ。

「父は、会社を経営しています。母は専業主婦です」

そう言うとホッとしたらしく、ペラペラとまた話し出した。

自分は経営者の子女としか交際する気はない、可愛くないと無理など、女性に対するハードルがかなり高いことがうかがえた。

そうしている間に、アニソンが流れ出したあの時間になってしまったが、私はやはり太郎のことを受け入れられなかった。

また、育ちが良過ぎるとクセが強いから、ある程度“普通”の人がいいな…と身に染みて実感したのだ。

太郎(28)「ワタクシは、必ず、美人な経営者の娘と結婚する!」


「太郎、いいわね。ママみたいに美人で、ママと同じ大学出身のお嬢様と結婚しなさいね!」

一人息子の自分は、溺愛されている母からいつもそう言われていた。

だから、母を喜ばせたい一心で、母の母校である広尾の女子大出身の彼女を作ろうと必死だった。

それなのに、努力が実らないのが恋愛だ。

緊張して言葉につまってしまうし、距離の縮め方は下手だし、挙動不審だと言われたこともある。

自分と2度目のデートをしてくれる人は、今まで誰一人としていなかった。だから、彼女は今までできたことがない。

「そろそろ、いい相手でも作った方が、親も喜ぶでしょ。先輩を紹介するよ」

そんな自分を心配して中学からの親友が紹介してくれたのが、真由香さんだった。

会う前に写真を見せてもらったが、ぱっちりとした目で優しそうな顔立ちがタイプであった。

それに、真由香さんは母と同じ女子大出身。理想の彼女にぴったりのスペックだったのだ。

実際に会うと、真由香さんは想像以上に素敵な人で、すぐに恋に落ちてしまった。だから、すぐに2度目のデートを申込み、承諾をいただいたときは相当嬉しかった。

もちろん、面と向かって直接誘うことはできなかったけれど、自分なりの精一杯だったのだ。

― これはいける!残すは経営者の娘か聞くだけだ!

嬉しさのあまり、今日の2度目のデートでは自分の話ばかりしてしまったが、真由香さんは喜んで聞いてくれているようだった。

それに、自分が懸念していた育ちの面も、真由香さんは難なくクリアした。

しかし、そんな楽しいデートの途中で、真由香さんは急な腹痛に襲われ、トイレにこもってしまったのだ。

彼女から、自分に先に帰って欲しいと連絡が来た。だが、女性を置いて帰ることは、男性として恥ずかしいことだとわかっていたので、できなかった。

そんな訳で、コーヒーをのみながらKindleで読書をして、彼女を待っていたのだが…。

「お客様、閉店のお時間です。え?おそらくほとんどの方は、もうお帰りになられましたが…」

どうやら自分は、真由香さんに置いて帰られてしまったようだ。

なぜだろう。今日はあんなに楽しそうにしてくれていたはずなのに、勝手に帰るなんて…。

信じられなかったが、外を見ると、空は暗く、いつの間にか夜になっていたのだった。


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