「一番消費する街なのだから、資源も循環させられる」港区議会議員 横尾俊成が語る東京・赤坂が“生産地”になる可能性とは?

UoC UNIVERSITY of CREATIVITY 共同編集長の近藤ヒデノリ(Hide)と平井美紗(Misa)がお届けするInterFMの番組「UoC Mandala Radio」。クリエイターに“ワクワクする社会創造の「種」を聞く”というテーマで、毎回さまざまな領域で社会創造をおこなっているゲストを招き、未来に向けた創造やアクションについて語らいます。11月17日(水)の放送では、ゲストに港区議会議員の横尾俊成(よこお・としなり)さんをお迎えしました。

(左から)Hide、Misa、横尾俊成さん

元博報堂社員の経歴を持つ横尾さんは、2010年に同社を退社して港区の区議会議員になり現在で3期目。「みなと政策会議」の幹事長として港区の区政を動かしています。赤坂の街を綺麗にするためのゴミ拾いプロジェクト「グリーンバード」をNPO法人化し、その代表も務めています。

◆街のゴミ拾いから始まった

Misa:横尾さんから見て、赤坂はどういう街なんですか?

横尾:料亭や芸者さん、お祭りなど地域の伝統文化が根づいているなかで、その伝統をどうつないでいくのか、お祭りをどう盛り上げていくのかという視点が薄れつつあるというか、担い手不足(の印象)がすごく大きかったですね。

担い手として若者をただ集めてくればいいというわけではなく、今までとは違う方法で集めなければいけない。そういうことをみんなが気づいている状態で、「もっと面白いことを赤坂で起こしていけば、自然と若者も集まって担い手も増えていく」ということを考えているところだったんです。

Misa:横尾さんが「街をよくしていこう」と思ったきっかけは何だったんでしょうか?

横尾:もともと博報堂の社員なので、この街で働いていたんですけれど、ただ通り過ぎるだけで、街に関わってはいなかったんです。あるときCSR(企業の社会的責任)として「博報堂は何ができるんだろう」と考えたときに、「それが何かわからないから、とりあえず街のゴミ拾いでもするか」と思って、「グリーンバード」というNPO法人を始めました。

そこでゴミを拾っていたら、街の人と出会うわけですね。「いつもありがとう」と言われたり、一緒にゴミ拾いをするようになったりして街の人と関わっていくようになると、だんだんと見えてくるものがあって。「こういう思いで街を作ってきた人がいるんだ」「でも、ここにうまくいかないポイントがあるんだな」とも思い始めたんです。

そうやってゴミ拾いを通じて、街の人と関係性を築き上げているなかで、ちょうど東日本大震災の後に商店街から「売り上げが落ちて困っている」という話を聞いて、「こういうことをしたら(人が集まって)面白いんじゃないか」と提案するようになっていったんです。

そうするとすごく喜ばれて、「同じスキルを使って仕事をしているのに、こんなに喜ばれるなんて、この街に僕の立ち位置があるんだ」と思ったんです。あるとき急に会社を辞めようと思い、街に関わっていく一つの方法として議員を選んだというのがきっかけなんです。

◆一番消費する街だから、生産する側にもなれる

Hide:横尾くんとは「Circular Creativity Lab.」というプロジェクトを一緒に始めています。例えば電車の車両の部品や太陽光パネル、コルクなど、あらゆる廃材をお題として出して、あらゆる人から廃材活用の仕方のアイデアやデザインを募集しているんです。

そうして出来上がったものを、例えば商店街のなかに「廃材で作った屋台」や「廃材で作ったモニュメント」のように提供できたら……という思いで、一緒に動き始めたところなんですよね。

横尾:そうですね。先ほど赤坂は伝統があると言いましたが、一方で消費をし続けている街でもあって、地球環境には江戸時代からずっと負荷をかけている街なんです。今まで捨てていたものでも、そこで廃材を循環させられたら、(一番消費している街だから)きっと資源も赤坂内で循環させられる。そうすれば、資源を作ることができる街に生まれ変わるかもしれないと思っているんです。

Hide:なるほど。たくさん消費する街だからこそ材料がいっぱいあるわけで、それをうまく循環させれば、一番資源がある街なのかもしれないということですね。

横尾:「農家さんからもらった野菜を食べているんだな」「エネルギーもいろんな地域からもらっているんだよな」と、今まで何となく罪悪感があったんですが、もしかしたら循環という形で生産する側に回れるんじゃないかなと。

Hide:たしかに。赤坂って上から眺めると屋上が空いているんですよね。そういうところに例えば太陽光パネルを置けば、エネルギーを自給できるかもしれないし、食品廃棄物で作った土で畑を作れば野菜も生産できるかもしれないですしね。

◆コンポストが作り出す循環社会

Misa:横尾さんが取り組まれている「コンポストで始まる循環の生活実装デザイン」が、グッドデザイン賞を受賞しました。これはどういう取り組みなんですか?

横尾:株式会社オレンジページさん、ローカルフードリサイクリング株式会社さん、みなとーく(港区のコミュニティと地域の未来を考えるプロジェクト)が連携して受賞したものなんですが、簡単に言うとコンポストです。

コンポストとは、家庭や店舗で出た生ごみを堆肥(たいひ)に変えるものです。その堆肥を家庭のプランターで使ってもいいですし、農家さんに持っていかれてもいいですし、生ごみから土ができて、その土から野菜が採れる……という循環のデザインを作って受賞したんです。

Hide:僕も家でミミズコンポストというのをやっていて、生ごみをミミズに食べさせるんですよ。ミミズが土を作ってくれて、それを庭の畑にまくと野菜が育って、それを収穫して僕が食べるという。

ミミズや落ち葉など、いろいろなコンポストがあるんですけれど、横尾さんがやっているのはおしゃれなバッグ型のコンポストで、チャックを閉めたら全然臭わないんですよね。

横尾:(バッグ型コンポストに)どんどん生ごみを入れてかき混ぜているうちに、簡単に土ができちゃうんです。

Hide:その土でハーブを育ててサラダに入れたりすれば、都会でも循環が体験できるので、すごくいいよなぁと。どんどん広がっていってほしいなと思います。

横尾:最近は土ができすぎちゃうんですよ(笑)。

Misa:それは予想外ですね(笑)。

横尾:どんどんプランターが増えていって、これはこれでちょっと問題なんですよね。そこで今始めているのが、できた土を公園に持っていくんです。公園に大きな木枠があるので、いろんな人が持ち寄った堆肥をそこに入れて、さらに熟成させて「完熟堆肥」を作るんです。

それを公園の花壇に入れたり、樹木に入れたり、今後の話ですが区が持っている畑に持って行くこともできるんです。あとは「みなと区民の森」というのが、あきる野市にあるんですけれど、そこに持っていきたいなって思っています。そうした取り組みも進めていたりします。

Hide:ポートランドとかサンフランシスコに行ったときに、コンポストが街中で日常的に溶け込んでいて、生ごみをコンポストに入れて、野菜を作って……ということを、みんながしていたんですよね。なんでも真似をすればいいというものではないけど、いいものはどんどん取り入れられたらいいなと思いますね。

次回11月24日(水)のゲストは、グラフィックデザイナーのライラ・カセムさんをお迎えします。

番組でお届けしたトークは音声サービス「AuDee」と「Spotify」でも配信中。

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聴取期限 2021年11月25日(木)AM 4:59 まで

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<番組概要>

番組名:UoC Mandala Radio

放送日時:毎週水曜23:00-23:30

パーソナリティ:近藤ヒデノリ(Hide)、平井美紗(Misa)

番組Webサイト: https://www.interfm.co.jp/mandala

2021/11/18 6:00

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