年下男に突然手を握られ「俺たち付き合ってるんだよね?」と言われて…。素直になれない33歳女の反応は

女にとって、経験豊富な年上男性は魅力的に映る。

だが、その魅力ゆえこだわりの強いタイプが多く、女は年を重ねていくうちに気づくのだ。

― 頑張って彼に合わせるの、もうしんどい…。

年上ばかり選んできた女が、自然体でいられる相手は一体どんなタイプの男なのだろうか?

これは、アラサー独身女がこれまでの恋愛観をアップデートする物語。

◆これまでのあらすじ

新たな出会いを求めて、同僚と食事会に参加した多佳子。そこで出会ったのはなんと、ひと回りも年下のプロサッカー選手だった。食事会の途中で、彼から強引に連絡先を聞かれてしまい…。

▶前回:食事会の初対面でにらんできた銀髪の年下男。彼が必死になって女に要求した“お願い”とは?

Vol.3 年下男に揺さぶられる女心


食事会が終わり、恵比寿にあるマンションに帰ってきたのは21時。

あまりお酒が強くなさそうな男性陣に気を使った私は、まだ飲み足りない気分だった。

― 明日は朝早くないし、ワイン開けちゃおうかな。

グラスを用意して、リビングのソファに体を預けて座る。1日の疲れと緊張がゆるむ、至福のひとときだ。

ちょうどそのタイミングで、スマホが鳴った。

『今日はありがとう!また明日、会社で。』

一瞬、颯からのメッセージかと期待したが、送り主は美智子だった。名刺を渡したあと「絶対に連絡するから!」と言った彼の言葉を信じたわけではない。

だが、何のアクションもないと少しガッカリしてしまう。

― やっぱり口だけだったんだ…。まあ、いいか。

赤ワインをグラス2杯飲み終えるころには、気持ちを切り替え、シャワーを浴びてベッドに入った。



翌朝。

静かな部屋に「ピコーン」と、着信音が響く。

鳴ったのは、仕事用のスマホ。会社で何かあったのかと慌てて手に取ると、そこには『おはよう!』のメッセージが届いていた。

― …何これ?誰?

差出人不明のショートメールに起こされた私は、頭から毛布をかぶり、アラームが鳴るまで2度寝しようと決め込む。

すると、すぐに2度目の着信音が鳴った。

仕事用のスマホに届く、謎のメッセージ。その送り主は…?

『今から走ってきます!颯』

メッセージの送り主は、なんと颯だったのだ。

時計を見ると、まだ朝の6時。私は、颯からのショートメールで起こされたのだ。

― 嘘っ!連絡…きた!?ていうか、朝早いなあ。

そうぼやきながらも、12歳も年下の彼に、酔った勢いでからかわれたのではなかったと少しホッとする自分がいる。

が、しかし、そのすぐあとに会社から急な呼び出しがかかり、私はバタバタと出社することになった。

颯にメッセージを返す間もないまま、気がつけば夜だ。

帰宅後、急いでショートメールを開くと、もう1通のメッセージが届いていた。

『練習が終わって、寮に帰ってきました』

寮のご飯の写真も、添付されている。まるで、漫画で見るような山盛りのご飯だ。

思わず笑ってしまった私は『練習お疲れさま』とだけ返信した。

それから、次の日も、そのまた次の日も、颯からの他愛のない連絡は続いた。

はじめのうちは、颯の連絡のペースに追いつけずに戸惑っていたところもあったけれど、1週間もすれば慣れた。

メッセージの内容は『練習行ってきます』や『ただいま』など、いつもシンプルで短い。

ランニングをしているときに撮った朝日の写真や、新しく買ったスパイクの写真なども、そこに添えられていた。

この写真のおかげもあって、年下かつアスリートである彼の日常を垣間見ることができたから、親しみを持てたのだ。

それと、私がすぐに返信できないときでも、颯はあまり気にするふうではないところが気楽でいい。

何だかんだで、毎日連絡を取り合うようになって2週間。

2人のやり取りがショートメールではなく、LINEへと変わると、彼はこんなことを言い出したのだった。

『次のオフなんだけど、多佳子さんに会いに行ってもいい?』


颯の話によると、週に1度は試合や練習がないオフの日があるらしい。

けれど、彼のような若手選手はチームの寮で暮らしているため、夜は門限があって自由に出歩けないそうだ。

昼間にちょっと会えないかという提案だったので、それなら気楽だと、私は颯と2人で会ってみることにしたのだ。

― でも、こういうときって、私がお店とか決めたほうがいいんだよね?

颯が所属するチームの本拠地は、東京から高速バスで1時間半ほどかかる関東近郊の街。

それに彼はうんと若いし、きっと東京の事情には詳しくないだろう。

そう考えた私は、颯でも気負わずに行けるような、大人向けだがカジュアルな雰囲気のハンバーガー店でランチを提案した。

ところが、当日。

約束の時間になっても、彼は現れなかった。颯との待ち合わせは、12時に店前だ。

『もうすぐ着くよ!』

と、LINEが送られてきてから、10分。さらに、約束の時間を15分過ぎても、彼はまだやって来ない。

― 高速バスが遅れたのかな?それならもう1回くらい連絡をくれてもいいのに!

待ちぼうけを食わされてモヤモヤしていると、遠くから走ってくる颯の姿が見えた。

年下くんが待ち合わせに遅れてやって来たのは、なぜ…?

「ごめん!多佳子さん、場所がわからなくて!」

息を切らしているところをみると、本当に迷っていたのだろう。それに、言い訳もせずに謝ってくれるところは、素直でいい。

しかも、迷子だなんて、理由がかわいいではないか。怒る気が一気に失せた。

― 颯くんってやっぱり、これまで付き合ってきた人たちとは全然違う感じ。

年上の彼とのデートでは、いつも相手がリードしてくれた。だから、颯のこういう素直な姿が新鮮に映ったのかもしれない。

「ううん、大丈夫だよ!颯くんお腹空いたでしょ、行こう?」

ちょうど昼時で混みあった店に入ると、颯は自分用に2人分のハンバーガーセットを頼み、私はポテトとオレンジジュースをオーダーする。

そして、会計の前に席を取っておくよう促すと、彼は決まりが悪そうに従った。

「ねえ、やっぱり俺が払うよ!」

「いいよ、今日はわざわざこっちに出てきてもらったんだし。ここは私が!」

この日の颯は、白のロンTに黒のスウェット姿。髪は、初めて会ったときと同じ銀髪のまま。

仕事の合間に抜けてきたパンツスーツ姿の私とは、余計に年齢差を感じさせる。

ハンバーガーのソースをポタポタと垂らしながら食べる彼の世話を焼くところなんて、まわりからは年の離れた姉だと思われているに違いない。

周囲の目が気になり、ソワソワする。ますます彼から代金を受け取るわけにはいかないと思った。

「多佳子さんって、俺のこと弟みたいって思ってない?」

落ち着かない様子の私に気づいたのか、颯の質問は意外と鋭いところを突いてくる。

「うーん、そうかも…?」

「わかった、じゃあ俺リベンジする!」

そんなことを言われても、口の横にマヨネーズをつけたままの颯は、やっぱり弟のようだった。

「リベンジなんていいよ!あ、そろそろ会社に戻らなきゃ」

こうして仕事に戻る私の都合で、わずか2時間足らずのハンバーガーデートは終わった。



彼から新たなお誘いのLINEが送られてきたのは、その翌日すぐのことだった。

『今度はこの店に行こう!』


颯が送ってきたURLを開くと、広尾にある『リストランテ ペガソ』が出てきた。

雰囲気のあるイタリアンだと聞いたことがあり、ひそかに行ってみたいと思っていた店だ。

待ち合わせは、12時半。

約束の当日。今度は遅れずにやって来た颯は、しっかりとスーツを着ている。

これまでカジュアルな服装の彼しか知らなかったけれど、こうして見ると背が高く、アスリートらしい均整の取れた体は男らしく、大人っぽい。

案内された個室もまた、深紅の壁で囲われていて雰囲気がいい。

「颯くん、ここ来たことあるの?すごく素敵なお店だね」

「うーん、実はチームの先輩から教えてもらったんだ…」

スーツもその先輩と一緒に選んだのだと、照れくさそうだ。

― 何だか、違う人といるみたい…。

運ばれてくる料理も、私のペースに合わせてゆっくりと食べてくれて心地いい。不覚にも、12歳も年下の颯にうっとりしかけてしまう。

さらに驚いたのは、食後のこと。

化粧室から戻ってくると、彼は会計を済ませてくれていた。これまでとはまるで違うスマートな振る舞いに、驚かされっぱなしだ。

「颯くん、ご馳走さまでした。ありがとう」

「どういたしまして。これで俺、ちょっとは弟じゃなくなった?」

「そうだね、“ちょっとは”ね」

いい気分で店を出て、駅までの道を歩きはじめたときだった。

「えっ!?何で?」

颯がいきなり手をつないできた。突然のことに驚いた私は、思わずパッと手を振り払う。

「だって、俺たちって付き合ってるんだよね?」

確かに、私たちは毎日連絡を取り合っているし、デートも2回した。

だけど、付き合うなんて話は出てきていないし、年下すぎる颯との交際はどう考えても現実味がない。

初めて会った日と同じ鋭い目つきで、じっと見つめてくる颯に私はわざとこう言った。

「あー、そう言って私のことからかってるんでしょ?」

「バレたか!」と、冗談で返してきてくれることを心の中で祈ったが、颯の答えは予想の斜め上を行くものだった。


▶前回:食事会の初対面でにらんできた銀髪の年下男。彼が必死になって女に要求した“お願い”とは?

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ひと回りも年下の男と、アラサー女子は恋人同士になれるのか…?

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