自分を真っ当に評価できない中年社員たち。実績以上の給与は“会社への借金”だ

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 薄給の20代、激務の30代を乗り越えてきたのに、終身雇用は崩壊し役職はつかずに給料も頭打ち。転職しようにも、社内で再評価されようにも外されたはしごを掛け直してくれる味方はいない。“無理ゲー”と化した会社で中年社員が生きていく術はどこにあるのか。

◆会社は幻想。自己評価は捨てよ。中年社員の生き残り戦略とは?

 ミドルエイジ・クライシス。人生100年時代を迎えた現在、40~50代の中年層は誰もが漠然とした不安を抱えている。早期退職制度に同一労働同一賃金、ジョブ型雇用の推進……etc. これまで信じてきた制度は次々と崩壊し、中年たちは会社を以前のように信じることができなくなってしまった。

 なぜこのような状況がつくられたのか。組織コンサルタントの安藤広大氏はこう分析する。

「かつての日本は労働者が守られすぎており、自分では責任を負わない“他責おじさん”でも生きていける世の中でした。今はそれでもギリギリ生きていけるように見えていますが、現実は抱えきれなくなってきているのです。そのうちポーンとはしごを外されるときは必ず来るでしょう」

 コロナ禍を経た今、どの会社も売り上げ2割減が当たり前になった。それでも終身雇用が原則な上に定年は延び、会社の負担は増大。体力は削られる一方だ。

◆キャリアや実力だけでは解決できない

 こうした日本の残酷さを、人事・キャリアコンサルタントの楠木新氏は身をもって体感してきたという。

「私自身もバブル期に採用担当者を務めましたが、今の日本企業は当時の雇用がツケとなり重荷になっているのは確かですね。

 いまだに年功序列が根強く残っている企業も多く、とにかく上の世代が詰まってしまい、偶然が重なって上の席が空くでもしない限り出世の見込みはありません。欧米のようにキャリアや実力だけでは解決できないのが現状なのです」

 このように日本企業の多くは、「終身雇用」や「年功序列」という制度を捨て切れはしないものの、その実、維持することは困難な時代を迎えている。そして、逃げ切れもせず、柔軟な舵取りをすることのできない中年社員たちは、仁義なき戦いを余儀なくされる未来が待っているのである。

◆若者たちとの価値観の相違も

 また、新しく会社に入ってくる年下の若者たちとの価値観の相違も自覚するべきだと、労働社会学者の常見陽平氏は警鐘を鳴らす。

「下の世代にマウンティングしたところで、未来のある若者に響くわけがない。彼らは会社に自分の将来の面倒を見てもらおうとは最初から考えていないため、常に自分の市場価値を上げることを意識しています。

 確かに足を引っ張られることもあるかもしれませんが、彼らは今まで自分で培ってきた経験がリセットされる存在。若者は自分の必殺技が通じない、ルールの異なる世界を生きているまったく別の存在であることを理解すべきです」

◆日本の曖昧な評価制度から生まれた悪循環

 だからといって同世代こそが仲間、絶対的な味方であるかというと、答えはノーだ。産業医の大室正志氏は、中年同士の足の引っ張り合いの本質を説く。

「中年男性は互いが互いに評価されていることに気づいていません。これは若いときに自身の評価をフィードバックできていなかったことが原因です。日本では昔から上からの評価がざっくりしたものであることが多く、正確な判断がしづらいので、自己評価に走りがちです。

 本来であれば耳に痛くても現実を受け止めるべきなのですが、今の日本はそれをやったことのない人が評価する側にまわってしまい、なかなかうまくいかない。完全な悪循環が生まれています」

◆会社への貢献以上に給与をもらっている中年社員

 その結果として中年社員が陥っている現在の状況を、安藤氏は「他者の評価から逃げ続けたツケ」であると分析する。

「会社への貢献以上に給与をもらっている中年社員は多いと思います。でも、彼らはこれまで正当な対価以上の給料をもらい続けてきたわけです。いわば、会社に借金をしていたのと同じことですよね。

 単にこれまで顕在化してなかっただけのこと。そのうち体力を失いつつある会社から、『蓄積してきた借金を返してくれ』と言われるようになるはずです。

 そうなれば、もう逃げ切ることはできません。会社にとって自分がマイナスの存在であることに気づくべきですね」

◆周りを見渡せば敵だらけ

 かくも厳しい中年社員たちの現状。周りを見渡せば敵だらけ、四面楚歌ともいえる戦場に立ち尽くす諸兄には今を生き抜くための戦略が必要だ。

 会社は幻想であることを受け入れ、自己評価をやめ、会社に依存しない生き方を模索することこそが、現代の中年社員のサバイバル術なのだ。

【組織コンサルタント 安藤広大氏】
識学代表取締役。組織マネジメントの専門家として数々の企業の業績アップに貢献。コンサルティングの実績は2000社超。著書『リーダーの仮面』(ダイヤモンド社)はベストセラーに

【人事・キャリアコンサルタント 楠木 新氏】
神戸松蔭女子学院大学人間科学部教授。生命保険会社で人事部、支社長などを経験。50歳から「働く意味」をテーマに執筆・講演に取り組む。著書『定年後』(中公新書)ほか多数

【労働社会学者 常見陽平氏】
千葉商科大学国際教養学部准教授。雇用・労働、キャリアなどをテーマに調査研究を行っており、働き方評論家として執筆や講演を中心に活動中。音楽関係や格闘技にも精通している

【産業医 大室正志氏】
医療法人社団同友会産業医室勤務で専門は産業医実務。メンタルヘルスや生活習慣病の対策など企業における健康リスク軽減に従事。NewsPicks動画OFFRECOに出演中

<取材・文/週刊SPA!編集部 撮影/荒熊流星 モデル/古賀プロダクション(都筑一隆 佐藤秀雄 東 祐司)>
※週刊SPA!11月16日発売号の特集「[中年社員vs.会社]仁義なき戦い」より

―[[中年社員vs.会社]仁義なき戦い]―


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  • 日刊SPA!

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