松村沙友理「新しい自分めっけ!」乃木坂46を卒業して得た新たな価値観

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乃木坂46の1期生としてアイドル街道を走り続けて10年。松村沙友理は7月にグループを卒業し、新たな道を歩み始めた。

グループ在籍中に撮影された映画『ずっと独身でいるつもり?』(11月19日公開)は、現代を生きる女性たちの孤独や寂しさ、もがき、苦しみをリアルに描く、女性の共感度満点の物語。


20歳から六本木暮らしをしてきた26歳の「港区女子」美穂を演じる松村に、作品を通して得られた学びや女性が年齢を重ねることへの葛藤を聞いた。


──今回は松村さんが演じたのは、パパ活をする女性・美穂。アイドルとして長く活動してきた松村さんとは一見遠い存在にも感じられますが、役を通してどんなことを感じましたか。


私は美穂を演じて「自分の人生は自分で責任を持たなきゃいけないんだな」ということを強く感じました。私自身はこれまでアイドルとして、たくさんの方の力を借りながら生きてきたし、美穂もきっとそうだったと思います。でもこの作品で「自分のことは結局自分しか守れない」と感じる部分があって、それは女性にとってとても大切なことなんじゃないかなと思ったんです。誰かに甘えたり頼ったりして生きていくこともできる。それ自体は全然いいと思うけど「そうじゃない生き方をしている人も多いんだな」とも感じました。


──今作では主に4人の女性を中心に描かれます。誰の物語が特に刺さりましたか?


徳永えりさんが演じられている彩佳さんですかね。結婚してからの生活って、私には全然想像がつかないものでした。夢見がちな私は「結婚って素敵だよね!」と思っていたので、作品で描かれる現実がすごく衝撃的だったというか、「あ、そうだよね」って。私の中では「結婚はゴール」という感覚があったので「ゴールじゃないんだな」と刺さりました。


──結婚に対して嫌なイメージを抱きはしませんでしたか?


「夢ばかり見ちゃいけないんだな」って気持ちにはちょっとなりました(笑)。


──オファーを受けた時にはどんな心境でしたか?


私はもともと原作を知っていたので、改めて読みながら「私が演じるのはどのキャラクターなんだろう」と思っていました。最初はどの役になるかわからなかったんですが「自分に近いキャラクターはいないな」と思っていて、そうしたら「美穂」というオリジナルのキャラクターだったんです。美穂の第一印象は「現代っぽいな」というイメージ。本当に今の世の中を落とし込んでいるキャラクターだなという印象でした。

──現場入りをする前の役作りはどのようにしましたか?


この作品をやるうえで、実際にパパ活をされている方についてすごく調べたりして、SNSでもたくさんの人の話を見ました。単語だけは知っていたけど、自分には未知の世界すぎたので。


──完成した作品の自分はイメージ通りでしたか?


自分の中では、この作品に入ってからずっと自分の力不足を感じていたんです。もっと“出来る”自分でいたかった。例えばギャラ飲みをしているシーンでも、実際にギャラ飲みしている人たちのテンション感についていけている気があまりしていなかったんですよね。でも、そこについていきたい気持ちがすごくあった。作品自体はとても素敵だし、本当に良い作品に出られたなと思っていますが、自分自身に対してはあまり満足点は出せなかったんじゃないかなと思います。


──具体的には、どんなところにそう感じましたか?


私は、美穂になりたかった。美穂がどうやって生まれて、どうやって育ってきて今この生活をしているのか、そのことをちゃんと理解して生きていきたかったんですが、私にはそこまで出来る力がなかったな、と感じました。たくさん勉強して色々な人を見て、美穂についてもすごく考えたけど、100パーセント美穂にはなれていなかったのかなと思ったんです。もっと美穂の背景を感じたかった。映画では描かれない、1年前の美穂や2年前の美穂まで、もっと感じられたらよかったな、と思いました。

──主演の田中みな実さんとは初対面だったとのことですが、どんな印象ですか。


一番最初の本読みで、私が悩んでしまって正解が見つけられなかった時に、みな実さんが「一緒に考えよう」って声をかけてくださいました。私、乃木坂46の1期生としてこの業界に入ったので、ずっと先輩がいない環境だったんです。AKB48さんは先輩ではありますが、明確に繋がっているわけではなかったんですよね。乃木坂46という“個”で10年間やってきたので、みな実さんにお会いして初めて「先輩ってこういう感じなんだ」と感じることが出来たんです。

みな実さんはもともと局のアナウンサーだったので、先輩や後輩がいっぱいいる中で育ってこられたと思うんです。だからこそ、周りの人への気遣いがすごいなと思いましたし、私みたいなちんちくりんな人にまで気を遣ってくれた(笑)。「出来ない後輩をちゃんと先輩が見てくれる感じ」に「社会」を感じて、すごくうれしかったです。


──美穂のパパ活は女性の若さを強みにしているし、作品タイトルの「ずっと独身でいるつもり?」も、年齢を重ねた女性に対する周囲の目が表現されている部分もあると思います。女性アイドルは男性アイドル以上に年齢を意識することが多いようにも思えますが、松村さんはどう感じますか。


まさにアイドルって、すごく若さが取り沙汰される職業であると思うんです。若さを武器にする人もいるし、反対に年齢を重ねてもアイドルを続けていることに意義を感じて、逆にそれを武器にする人もいると思う。アイドルにも色々いると思いますが、私はあえてそこに触れてこなかったタイプだと思うんです。


自分から年齢のことはあまり言わないようにしてた。グループの中では最年長くらいのポジションを長くやっていたけど、年下の子たちにそれをイジられるようなこともなかったし、どちらかというと私は、若さを失うことの恐怖から逃げてきたタイプなのかなと思うんです。


でも今回、若さを失って必要性を感じてもらえなくなった美穂を通して「逃げちゃダメなんだな」とすごく感じた。美穂は美穂で、若さを無くしても別の武器を手に入れることができたし、そういう生き方はすごく強くていいなと思いました。

だから私自身も、たぶんアイドル人生ではずっと言ってこなかった、怖かったり弱かったりした部分にちゃんと向き合いたい。今の年齢だからこそできることってたくさんあるな、とも思いました。


女性が歳をとってどうこう言われちゃうこと自体は、どうしようもないのかもしれないとは思っているんです。男性の皆さんの趣味も変えられないので(笑)、世の中を変えるんじゃなく、自分自身の意識を変えなきゃいけないなとすごく思いました。


──松村さんは乃木坂46の中でも特に、永遠のアイドルのようなキャラクターでしたよね。現在は卒業されたわけですが、年齢を重ねることへの葛藤はやはりあったのでしょうか。


すごくありました。乃木坂46にいるとピーターパンの世界みたいにずっと時間が止まっているんですよ。中にいたときは私自身も「結婚しなきゃ」とかはそこまで思わなかったし、「28歳だ」「29歳だ」という焦りを感じないようにしてた。でも外に出てみると、同い年の子たちが大人っぽくなっていて「自分だけがずっと変わっていない」とすごく感じました。


年齢のことは気にしないようにしてきたタイプなので、自分の中では一応、卒業と年齢は関係ないと思っているんです。自分自身で今回は卒業を選びましたが、「29歳だから卒業しなきゃ」という風にはあまり思っていませんでした。


──レギュラーモデルを務める雑誌「BAILA」で始められた連載の中でも、乃木坂46で過ごした10年は誇りではあるけど自分の時間は止まっていたのかもしれない、というお話をされていましたよね。今作の美穂も、パパ活をしている期間は時間が止まっていたのかもしれません。


卒業する時にすごく思ったのは、「変わらない」って一番楽に感じてしまうことなんです。そのままでいることが一番心地良いし、「変わる」って、すごくエネルギーがいることだと思うんですよね。美穂もきっとそうだった。

この作品を撮っていた時期、私の中でこの作品とリンクすることがとても多かったんです。アイドルを10年やってきましたが、今までは素の自分をさらすことがすごく怖かったと思うんです。でもそれに気付いていなかった。監督のふくださんに「演じてるあなたじゃなくて素のあなたを見たい」と言われたんですが、自分では演じてるつもりはなかったから、素の自分がわからなかったんです。

でもたしかに、カメラを向けられるとずっと同じ私なんです。この作品に出会ってそのことに気付かされて「素の自分ってなんだろう?」と考えるきっかけになった。私の中ではすごく大きな変化だったし「今、変化できてよかったな」とすごく思いました。卒業して女優をやっていくなら、日常から演じてる私でいたら、そこからさらに演じるって難しいことじゃないですか。そういう意味でも、この作品に出会えて本当に良かったです。


──主演の田中さんは、局アナからフリーになられて印象が変わったように思います。アイドルも、卒業することで変わる方、卒業してもそのままのイメージを保つ方と様々ですが、松村さんは卒業後もアイドルらしさを残していらっしゃる印象です。それも「演じている自分」?


私、こんなことを言ったらちょっと恥ずかしいんですけど、根がアイドルなのかなって(笑)。そこに関しては全然自分を否定していないんです。ずっとこんな感じだったし、10年間の自分を消したいわけでもない。だから、今回はもう1個新しい自分を見つけられた感じがしました。「新しい自分めっけ!」って(笑)。


──貴重なお話ありがとうございました。改めて最後に、今作の見どころを教えてください。


私自身、とても素敵な作品に参加できたという思いがすごく強いです。苦しいシーンも多かったんですが、みなさんにとってそれぞれの人生で何かに気付くきっかけになれる作品なんじゃないかなと思います。ぜひ、生き方の選択肢を広げて、色々なことを感じてもらえたらうれしいです!


取材・文・撮影:山田健史


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