GDPマイナス3%の衝撃! 「岸田政権の景気回復策では年内絶望的」エコノミスト8人が分析

日本経済の回復が遅れている。2021年11月15日、内閣府が発表した7~9月期の実質国内総生産(GDP)の速報値は前期(4~6月)から年率換算で3.0%減となった。民間エコノミスト37人の事前予想ではマイナス0.56%だったから、大幅ダウンだ。

プラス成長が続く米国や欧州との差が鮮明になった。岸田文雄政権は11月19日に経済政策をまとめ、「年内にコロナ以前の水準への回復を目ざす」としているが、その達成はそう簡単ではなさそう。

日本経済は大丈夫か? 8人のエコノミストの分析を紹介する。

「ここまで大幅マイナス成長は日本だけ」

主要メディアの報道をまとめると、GDP(速報値)が市場予測より大幅に低い「ネガティブサプライズ」になった主な要因は、次の3つだ。

(1)GDPの半分以上を占める「個人消費」の落ちこみ。新型コロナウイルスの感染拡大で東京や大阪などに緊急事態宣言が出され、旅行や外食の需要が低迷した。家電などの販売も減少し、個人消費が前の3か月と比べてマイナス1.1%となった。
(2)経済のけん引役とされる「輸出」が振るわなかった。世界的な半導体不足に加え、東南アジアからの部品の調達が滞ったため自動車産業が減産を余儀なくされ、マイナス2.1%になった。
(3)「企業の設備投資」が、業務用自動車や建設用機械の購入が減少したため、マイナス3.8%となった。

政府は11月19日に、新たな経済対策をまとめ景気を下支えする方針で、GDPがコロナ前の水準に戻る時期を「年内」と見込んでいる。また、エコノミストの予想でも、10~12月期はコロナ禍の収束傾向で経済活動が徐々に正常化しつつあるため、再びプラス成長に転じるとの見方が大半を占めている。

しかし、「年内」に回復するためには、10~12月期のGDPが年率でプラス9%台半ばになる必要がある。だが、日本経済新聞(11月16日付)によると、取材した10人のエコノミストの成長率の平均予想は6.5%、2022年1~3月期の平均でも6.2%にとどまる。

いったい、日本経済の回復はいつになるのか――。主要紙(11月16日付)やヤフーニュースのヤフコメ欄に登場したエコノミストたちの意見を紹介しよう。

まず、今後の景気回復の道のりについて、非常に厳しくみている人たちから――。

第一生命経済研究所首席エコノミストの永濱利廣氏(日本経済新聞)は、

「ヘッドラインでは前期比年率マイナス3.0%ですが、売れ残りを示す民間在庫増でプラス1.2ポイント押し上げられていますから、より景気実感に近い実質最終需要ベースでは前期比年率マイナス4.2%となります。他の主要国でも7~9月期は感染拡大や部品不足などで成長率は減速しましたが、ここまで大幅マイナス成長なのは日本だけです。
これによって、10~12月期は年率プラス9.5%以上成長しないとコロナショック前の水準に実質GDPが戻りませんから、政府の当初目論みだった2021年中にコロナ前の水準に実質GDPを戻すことは絶望的になったと言えるでしょう」

と、厳しい。

「ガソリン値上げが重し、回復遅れる」

BNPバリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト(朝日新聞)は、

「設備投資の前期比3.8%減は、想像以上に悪い数字だった。供給制約の影響が大きい。半導体不足で自動車の製造が滞り、企業が仕事に使う自動車を購入できなかった。生産用機械向けの半導体も不足し、つくれない状況もあった。木材などの建設資材の不足や価格高騰も重なった。経済が回復している各国でインフレが進んで引き合いが強くなるなか、回復が遅れている日本では、輸入材の確保に苦労し、建設が滞る動きがあった。
半導体不足は底を脱したとみている。10~12月期の設備投資は持ち直すものの、不足の解消は徐々にしか進まないだろう。設備投資が好調だった4~6月期の金額の水準まで持ち直すには、今後半年はかかるのではないか」

と指摘。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング調査部主席研究員の小林真一郎氏(ヤフコメ)は、

「事前の予想を大きく上回るマイナス幅となり、夏場の景気の落ち込みは思っていたよりも深かったことが示されました。最大の原因が個人消費(前期比年率4.5%減)の減少であり、背景にあるのが、感染第5波の拡大による夏場の対面型サービスの需要の落ち込みと、生産制約による自動車販売の減少です。
同期の米、EU、中国など主要各国と比べても最も厳しい結果となりました。これは、ワクチンの接種の遅れや、自動車産業への依存度が高いことへの弊害によるものだと思われます。
10~12月期は、対面型サービスを中心に個人消費が持ち直すことに加え、自動車の生産制約が徐々に解消することによってプラス成長に復帰することは確実です。ただし、感染再拡大への警戒感からリベンジ消費の勢いが弱いことや、エネルギー価格など物価上昇によって消費者マインドが悪化する懸念があることなどにより伸び悩む可能性があります」

とみている。

エコノミストで経済評論家の門倉貴史氏(ヤフコメ)も、

「7~9月期は、新型コロナの第5波が全国的に猛威を振るっていた時期と重なり、緊急事態宣言発令に伴う行動制限の影響でGDPの過半を占める個人消費が低迷した。東京五輪も無観客開催となったことから事前に期待されていた経済効果はほとんど現れず、結果、実質GDPが大幅なマイナス成長になったとみられる。
10~12月期は、第5波収束に伴う行動制限の解除やワクチン普及による安心感の高まりで消費の回復が進むとみられるが、ガソリン代の値上がりなどが重しとなり、回復のペースは緩やかなものにとどまる可能性が高い。岸田内閣が打ち出す40兆円規模の景気対策は即効性が期待できるものが少なく、効果が浸透してくるのは来年以降にずれ込む公算が大きい。GDPがコロナショック前の水準に戻るのは2022年以降になるとみられる」

と予想した。

「賃金が上がらない日本は消費の力が弱い」

比較的ポジティブにみているエコノミストでも、岸田政権の目標である「年内のコロナ以前の回復」が達成されると予想する人はいないようだ。

みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介 上席主任エコノミスト(朝日新聞)は、

「個人消費は悪条件が重なった。緊急事態宣言でサービス消費が抑制されたところに『巣籠り需要』の一巡も重なり、パソコンなどの売れ行きが鈍った。夏場は暑くならず、エアコンも売れなかった。半導体不足で十分な台数が作れなかった自動車の販売は減少し、耐久消費財は大幅なマイナスになった。東京五輪・パラリンピック前のテレビ需要も4~6月期前までに落ち着いた。
そもそも日本は低成長が続き、働く人の賃金が上がらず、消費の力が弱い。そこが米国などの消費の強い国との違いだ。ただ、10月以降は街の人手が増えた。感染次第だが、10~12月期の成長率は年率6~7%に達するとみている」

という。

慶應義塾大学総合政策学部の白井さゆり教授(日本経済新聞)は、

「実質GDPは4~6月期統計が発表されたときは予想以上に強い結果となったが、今回は逆に予想以上に悪い結果となった。オリンピックもあったが感染者数が増加し、緊急事態宣言による飲食店の営業時間の短縮などの影響が消費の下落に影響した。半導体不足やアジアでのデルタ株の感染者数の増加で中間財部品の生産が停滞したことも製造業の生産に打撃を与えた。
輸出は自動車が大きく下落しているが、中間財やIT関連製品など幅広く低迷した。中国向けの輸出コロナ危機前の状態を大きく超え製造業を支えていたが足元では低迷しており、中国経済減速が日本の輸出に長期的影響がでるか注視したい。成長率は10~12月期は大きくプラスに転じるだろう」

とみている。

エコノミストで昭和女子大学研究員の崔真淑氏(ヤフコメ)は、

「半導体不足という供給面の影響も気になるところですが、在庫が前期比で上昇しているところをみると、需要不足への懸念も心配されるところです。供給側、需要側ともに弱いとなると、ガソリン価格上昇やなどもインフレ対策や、何かと話題になっているGOTO再開の需要喚起策への関心も高まるでしょう。
『強制貯蓄20兆円』(編集部注:家計にはコロナ禍の自粛によって強制的に貯蓄されている20兆円があり、それが使われると消費が一気に回復、企業業績が上向き、日本経済が力強くV字復活するという説)も、先行きが心配ばかりでは放出もされにくいでしょうし」

と指摘した。

今後、私たちはどうすればよいだろうか。日本総合研究所調査部マクロ経済研究センター所長の石川智久氏(ヤフコメ)は、こう指摘している。

「確かに10~12月期は消費も上向きつつあるので、それなりのプラスの数字になりそうですが、原油高などの影響もあり、まだ景気回復の足取りは弱いと考えて対応を進める必要があります。
第6波が来ても緊急事態宣言を極力出さないこと、今度こそ医療リソースを拡充すること、少しでも即効性のある経済対策を実施することが経済の悪化を止めるために重要であり、国民としてはそうした声を上げていくことが不可欠です。米国などはコロナ前のGDP水準を回復していますが、日本はコロナの被害が小さい割に回復が遅れています。これ以上遅れないように経済対策を強化する必要があります」

(福田和郎)

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