現代人に必要なのは芸人・永野の「ロック魂」である

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「孤高のカルト芸人」と呼ばれる永野の初めての著書『僕はロックなんか聴いてきた~ゴッホより普通にニルヴァーナが好き!~』(リットーミュージック)が9月25日に発売された。この本では、永野が独断と偏見を交えて自分の好きなロックミュージックについて思い入れたっぷりに語っている。ブレークしてからも独自の芸風を貫く永野の根底にあるロック魂とは何なのか?

前編:「ニルヴァーナに憧れて人生間違った!?」永野が真意を語る!
中編:永野の生い立ちと「感動させない」ことの格好良さとは!?


■ロックは人生の“姿勢”である

――永野さんはロックを音楽として聴くだけじゃなくて、生き方とか考え方の面でもすごく影響を受けているんですね。

永野  姿勢なんですよ。ナイン・インチ・ネイルズとか姿勢で聴いていただけで、何も楽しくなかったですよ。苦痛でしかなかったです。僕は音さえ良ければいいとは思わなくて、そいつの気迫とかが面白い。でも、こんなバンドの時代はもう来ないでしょうね。90年代が嫌な時代だったみたいに思われるのは悲しいです。お笑い界でも、昔は自分みたいな人ばっかりだったけど、今は僕と(サイキック芸人の)キックくらいしかいないですから。

――キックさんは同志なんですね(笑)。

永野  あいつはわかってるみたいな顔でヤバいことをやるじゃないですか。キックがおかしなことをやって、変な空気にするのって超面白いですよね。

――わかります!

永野  でも、今のお笑いでは「なんで変な空気にするんだよ」で終わっちゃうんですよ。そこからがゾクゾクするところなのに。もうちょっと泳がせてくれよ、って。

――芸人の発言でさえも、冗談を冗談と受け取ってもらえないようなことが結構ありますよね。すぐ炎上につながってしまうから、「その気まずい空気が面白いんだよ」みたいなことがなかなか伝わらない。

永野  今もあるカルチャーだからあんまり悪く言えないけど、90年代ってノイズとかが流行っていて、CDを買って聴くたびに「俺、なんでこんなのに金払ったんだろう?」って後悔してたんです。でも、今はサブスクとかが主流だから、ちょっと聴いて嫌だと思ったらすぐにとばしちゃうでしょう。

 お笑いも、不穏な空気にするのは本来ダメことなんですけど、でもその不穏さが面白いっていうこともありますからね。今は利口なやつだけが残っていて、「こいつ、ダメなんです」って紹介されたりしていて。いや、それは全然ダメじゃないだろ、って思うんですよ。ノイズみたいなやつがいないですよね。

――永野さんって音楽の聴き方もすごく真面目じゃないですか。ちゃんと歌詞の意味を調べたり、音楽雑誌の評論を読み込んだりして。

永野  そう、だからある意味、不良よりヤバいというか、いびつなんですよ。

 やっぱり俺とかキックみたいなやつを絶やすなって言いたいです。自分とキックは何やっても地獄に行くと思うんですよ。そういう人って大好きなんです。そういう人にお笑いをやっていてほしいんですよね。

――それが永野さんにとってのロックということなんでしょうか。

永野  そうなんですよ。


■「老害上等」気持ち悪い今の世の中に喝

――それと関連するかもしれませんが、本の中で「実は真面目に生きているサラリーマンこそロックなんだよ」という風潮には納得できない、と書かれていたのが面白かったです。

永野  家族を食わせるために上司に頭下げているやつこそがロックなんだぜ、みたいな。そんなのロックじゃねえよ、守るものがあるから生きているだけだろ、って。そういういい話は聞きたくないんですよ。

 たとえば、甘やかされてきたロックスターがホテルで暴れて物を壊しまくってるのって、全部そいつが悪いじゃないですか。バカだなこいつ、みたいな、そういうのが大好きなんです。調子に乗って暴れて、あとからめっちゃ怒られるとか。

 生活のために会社で頭下げているのは、ただのちゃんとした人であって、やっぱりロックではないじゃないですか。教訓を言うやつが嫌いなんですよね。普通の質問をしても教訓で返してくるやつとかいるじゃないですか。ロックもいつのまにかそういうやつに侵されちゃってるんですよね。

――でも、世間では教訓的な話の方が受け入れられやすいから、そういうケースが増えてきてますよね。

永野  みんな、いい言葉に飢えていますよね。なんか安心したいんでしょうね。でも、それはあんまり良くないと思うけどな。いいことばっかり言うのはごまかしですからね。

――永野さんは絶対にそういうことを言わないですよね。「ラッセン」のネタでブレークしたときにも「今まで一生懸命努力してきたのがようやく報われた」というようなことは一切言わなかったじゃないですか。

永野  そうですね。年齢だけで勝手に「中年の星」みたいに言われて、なんでお前たちの星になんなきゃいけないんだよ、気持ち悪いな、と思ってました。こっちは多感な時期の若者にウケたいのに、中年の人に「がんばってくれてありがとう」って言われても、いやいや、お前らのためにがんばってねえよ、という。

――勝手に代表にされちゃってる。

永野  でも、僕みたいなのはわかりにくいでしょうけどね。結局、ディストピア映画なんですよ。ただ、みんな本当に楽しいのかな? 昔の方が楽しかったって言ってると、頑固オヤジみたいだけど。

――昔の方が楽しかったっていう感覚は私もわからなくはないんですけど、いま10~20代の人って、そもそも今の文化しか知らないじゃないですか。昔の価値観を知らないから、今のこともそういうものだと割り切っているんじゃないですか。

永野  なるほど、そっか。「殺伐」って楽しかったですけどね。ニルヴァーナのアルバムみたいな殺伐としたものって、見ていて楽しかったんです。今は殺伐としたものってないですよね、たぶん、今はコロナもあるし、みんな余裕がないんでしょうね。90年代ってまだ余裕があったから、闇とかを見ることもできたんじゃないですか。

――たしかに、まだ景気も良かったですからね。

永野  景気が良かったからそういうバッドなカルチャーも楽しめたんでしょうね。今はみんな前向きなことを悲しい顔で言っていますもんね。暗い時代だなって思います。

 でも、思うのは、「老害」っていう言葉があるでしょう。俺、老害になってやろうと思っています。だって違う世代と話が合うわけないじゃないですか。

――たしかに、変に若者に合わせたり、わかっているふりをしたりするのも違いますよね。

永野  違いますし、もう無理ですわ。生まれた時代も違うし、価値観も違うし。カート・コバーンがいま生きていたら、絶対に「老害」って言われてますからね。これからは僕もそれを目指していきますよ。老害、オワコン、上等です。

〜おわり〜

前編:「ニルヴァーナに憧れて人生間違った!?」永野が真意を語る!
中編:永野の生い立ちと「感動させない」ことの格好良さとは!?

  • 11/15 16:00
  • TOCANA

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