“ちゃんと”はNG!? 無意識に使ってしまう「相手を怒らせる言葉」と「言いかえ」のコツ

人の悩みのほとんどは、人間関係によるものだと言われます。そこで今回は、相手の反応を変える「言葉の選び方」を紹介します。

相手を怒らせる原因は、自分の言葉選びにあった!?

「褒めたつもりなのに、相手が不愉快そうな顔をしている」

「ミスを注意しても、改めるどころか怒り出して扱いにくい」

「思っていることがいつもうまく伝わらない」

このようなコミュニケーションの問題で悩んだことはありませんか? 人間関係がうまくいかないのは、大きなストレスですよね。

でも、相手のその反応を引き出しているのは、自分の言葉の使い方や選び方なのかもしれません。

「話術を身につける」なんていうと敷居が高いけれど、ちょっとした言葉を「言いかえる」だけで、見違えるように印象が変わるというのは、心理研究家の津田秀樹氏と、精神科医の西村鋭介氏。

今回は、その著書『会話の9割は「言いかえ力」でうまくいく』から、相手の反応や行動を変える言葉選びのコツを紹介します。

いつも・全然・ちっとも… “極端語”を使わない

とてもおもしろい映画を観たとき、「おもしろかった」と言ったとしましょう。そのとき相手の反応がよくなかったら、次は「超おもしろかった」「最高におもしろかった」と強調したくなるかもしれません。

でも、おそらく相手の反応は同じです。「おもしろかった」だけでは、「どうおもしろかったのか」は伝わらないからです。

「超」「最高に」といった“極端語”を使うと、その言葉はかえって相手の心に届きにくくなってしまうことがあります。

映画のおもしろさを伝えるのに「母親と娘の関係がリアルに描かれていて、笑えるし、泣けるし、共感しちゃった」などと具体的に表現すると、相手に興味や共感を持ってもらいやすくなります。

本書では、このように実際以上にオーバーな表現を“極端語”と定義しています。

●極端語の例

絶対、ばっかり、なんにも、まったく、〜だけ、本当に、全部、全然、すべて、完全に、ちっとも、みんな、超○○、世の中には山ほどいる、世の中で君くらいのものだ…など

人に注意するときも、極端語はNG

何回か遅刻をした部下に「どうして、いつも遅刻するの?」と言ったとします。こう言われると相手は「いつもではないのに」とつい反論したくなってしまいます。

人に何かを注意するときも、極端語をやめるとだいぶ印象が変わります。

「どうして、いつも遅刻するの?」→「どうして、遅刻をするの?」

「資料はちゃんと持ってきた?」→「資料は持ってきた?」

ちっとも反省が生かされていないね」→「反省を生かしていこうね」

みんなから信頼されないよ」→「私は君には期待しているんだ」

しっかり伝えたいときほど、極端語を使わないように意識してみましょう。上の例のように、否定的な表現は、前向きに言いかえるのも有効です。

極端語を使う相手には、「反映技法」で安心させる

では逆に、相手が極端語を使ってきたら、どう対応したらよいでしょう。

人が極端語を使うのは「自分の言いたいことが十分に伝わっていない」と感じているときです。

たとえば相手が「こういうことがあって、こんなふうにツラくて…」と話しているときに、あなたが違う話を始めたり、「はあ」などと曖昧な返事をすると、相手はイラだちます。話をさえぎったり否定したりすれば、怒り出してしまうかもしれません。

反対に「理解してもらえている」と感じれば、極端語を使うことは少なくなっていきます。

そのために有効なのが「反映」という技法です。

方法は簡単。「こういうことがあって、こんなふうにツラくて…」と言われたら、「こういうことがあって、こんなふうにツラいんですね」と、相手の言ったことを反復するだけでいいのです。

これはカウンセリングでも使われる技法で、これだけで相手は「自分の話を理解してくれている」と安心できるようになります。

パートナーと長続きする秘訣!? 相手の「性格否定」をしない

親しい間柄ほど、相手にいろいろと言いたいことが出てくるものです。

「部屋を散らかさないで」「食べたものは片づけて」など、パートナーに文句がある人はたくさんいます。

にもかかわらず、長続きするカップルと、すぐ別れてしまうカップルがいます。いったいどこが違うのでしょうか。

心理学者アルベルトの研究によると、相手の「行動」について不満を言っているカップルはあまり問題がなく、相手の「性格」について不満を言っているカップルは別れる危険がかなり高いそうです。

部屋を散らかしたままにされると、イラッとしてつい「部屋を散らかさないで、だらしない性格ね!」などと言いたくなりますが、これは禁物。

「行動」は直せますが、「性格」は簡単に直せません。直せないことに文句を言われても、ただ追い詰められるだけだからです。

それよりも、改善してほしいことはなるべく具体的に言ってあげると効果的です。

「脱いだ服はここに置いて、生ゴミはここに入れて。とりあえず、それだけはお願い」といったふうです。

相手の行動を変えたいときには、否定をしないことも大切です。

相手に優しくなってほしいなら、少しでも優しいことをしてくれたときに「本当はやさしいんだね」などと言ってみましょう。そうすると相手は「自分は優しいところがあるのか」と自覚し、その性質をさらに引き出すようになります。

逆に「そういうところがダメなんだよ」「優柔不断だね」などと相手のマイナス面を指摘すると、ますます指摘したマイナス面が引き出されてしまいます。

こんなふうに自分が“言いかえ力”を身につけ、会話を変えていくことで、相手の反応も変わっていく可能性があります。もし「ああ、自分もこれ、言ってしまっているな」と感じることがあったら、ぜひ意識して“言いかえ”を試してみてくださいね。

津田 秀樹(つだ ひでき)

心理研究家。筑波大学卒。

女性誌『anan』や『non₋no』などの心理テスト作成、携帯公式心理サイトの主宰、心理学的映画紹介、心理マンガ(原作)、就職適性検査の対策本の執筆、ニンテンドーDSのソフトのディレクションなど多方面で活躍。

著書に『迷いがなくなる心理学 人生のサンタク』(PHP研究所)、『ジーパンをはく中年は幸せになれない』(アスキー新書)など。

西村 鋭介(にしむら えいすけ)

精神科医。精神保健指定医、精神科専門医。

東京大学中退、国立大学医学部卒業。

現在は理論的心理学と、科学としての精神医学を統合させ、悩みに潜む心理学的背景を解析するとともに、それを病院での臨床の場に実際に応用。「心理学」と「精神医学」の二方向からのアプローチで、人の悩みの真の解決を目指し、日々活動中。携帯公式心理サイトで、「ココロコラム」と「お悩み相談」のコーナーを長年担当。

2021/11/16 13:10

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