年収1億男とドライブデート。女に「車を置きに家へ帰ってもいい?」と言うのは下心ではなく…

人間は「生まれながらに平等」である。

これは近代社会における、人権の根本的な考え方だ。

だが一方で”親ガチャ”が話題になっているように、人間は親や生まれる場所、育つ環境を選べない。

事実、親の年収が高いほど、子どもの学力が高いこともデータ(※)によって証明済みだ。

私たちは生きていくうえで、多くの「生まれながらに不平等」な場面に遭遇してしまう。

中流家庭出身の損保OL・若林楓(27)も、東京の婚活市場で、不平等さを数多く実感することに…。

(※)お茶の水女子大「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

▶前回:「年収1,000万って、東京では貧困層なの?」UNIQLOやZARAも着る男と、デートしてみたら…


外苑前のイチョウ並木の下に、重低音のエンジン音が鳴り響く。

私はオープンカーの助手席に座り、黄金色の木々を眺めていた。すっかり肌寒くなってきた、秋の冷たい風に当たりながら。

…いや。そう言うと聞こえはいいかもしれないが、実際は寒さでブルブルと震えていたのだ。

「楓ちゃん、どう?楽しい?」
「は、はい…」

一成さんからの質問に、そう答えるのが精一杯。

なぜ私が唇を紫にし、体を震わせながら、高級外車の助手席に座っているのか?

それは、話せば少し長くなるのだけど…。

楓が寒さを我慢してまで、オープンカーに乗っていたワケ

成り上がりの経営者


私が一成さんと出会ったのは、港区で開催された飲み会でのことだった。

ある店の個室で繰り広げられていた、その会。主催者と思われる男性の周囲には、似たような風貌の男性陣と、そして派手な女性陣が群がっていた。

― みんな華やかだなぁ。

そう思いながら部屋の隅っこのほうにいると、その華やかな輪の中へ入りにくそうにしている私を不憫に思ったのか、突然主催者の彼に呼ばれた。

それが、一成さんだったのだ。


「楓ちゃんだよね。飲んでる?楽しんでる?」
「はい、楽しいです」
「よかった。楓ちゃんは、今どこに住んでいるの?何をしているの?」

急な質問攻めに面食らいながらも、私は思わず一成さんをジッと見つめてしまった。

わかりやすい大きなブランドロゴが入ったパーカー。腕には、こちらもわかりやすい高級時計。

カジュアルで若々しい風貌だが、年齢は意外と40代後半くらいに見える。

「私は損保OLをしていて、今は初台に住んでます」
「初台!?意外な所に住んでるね」

なぜか急にパァッと笑顔になった彼。悪い人にはなんだか見えなくて、私は思わず笑ってしまった。

そして皆同じような顔をしている美女が溢れるなか、一成さんは私の連絡先を聞いてきたのだ。

「楓ちゃん、よければ今度2人でご飯行かない?連絡先教えてよ。お鮨とか好き?」
「お鮨大好きです!ぜひお願いします」

こうして、私は一成さんとデートすることになったのだ。



低音のエンジン音が鳴り響いているせいで、歩いている人の視線を感じる。

今日はお鮨デートだったはずなのに。どうして私は、一成さんが運転している車に乗っているのだろうか。

― 少し期待していたけど、今日は飲まずに軽く食べて解散かな。

寒空の下、無駄に晴れた東京の空を仰ぎながらそう考えていると、一成さんが満面の笑みで私に話しかけてきた。

「楓ちゃん。一旦、車を置きに帰ってもいいかな?」

― 今から車を置きに行くの?この時間は一体…?

別に現地集合でもよかったはずだから、わざわざ車を見せたかったとしか思えない。

結局私たちは一度、彼が住むタワマンの地下にある駐車場へと戻り、そこからタクシーに乗ってお店へと向かったのだった。

先に車を見せてからの、自宅披露。すべて彼のこだわりプランみたいだ。

「一成さんって、素敵な所に住んでいるんですね」

移動中の車内で、私はきっと相手が望んでいるであろう言葉を捻り出してみる。けれども、彼からは意外な答えが返ってきた。

「そんなことないよ〜。うちさ、元々貧乏で。大学も出てないんだよね」
「そうなんですか?」

港区アドレスのタワマンに、高級外車に腕時計。そしてわかりやすいブランドの洋服…。

タクシーの車内が暗くてその表情は読み取れなかったけれど、一成さんの突然の告白によって、その真意がだんだんわかってきた。

なんでも持っている経営者が、どれほどお金を出しても買えないモノ

お育ちコンプレックスのある男


一成さんが予約してくれていたのは、SNSで話題の麻布十番にある『鮨 よしかわ』だった。

「ここ、最近SNSで話題なんだよね。知ってた?」
「はい!気になってたんです」

キラキラ系女子が、インスタによくあげているお店だった。

「一成さんって、こういうお店にはよく来られるんですか?」

立派な檜の一枚板で作られたカウンター席が、印象的なお店。自然と高揚感に包まれる。

「うん。ほぼ毎日外食だね」
「そうなんですか?本当に、華やかな暮らしを送っているんですね」

ニコニコと、変わらず笑顔を向けてくれる一成さん。けれども少しずつ本音が漏れてきた。


「まあね。でも、この前の飲み会にいたような派手な女の子たちも好きなんだけど、元カノで痛い目にあって。もう港区女子系の子は、こりごりなんだよね」

― なるほど、だから私と連絡先を交換したのかあ。

今日デートに誘われた理由が、なんとなくわかった気がする。ただ彼が憎めないキャラであることだけは確かで、嫌な気はしない。

「楓ちゃんみたいな、純粋で清楚な感じの子のほうが落ち着くんだ」

それはきっと、一成さんの本心なのだろう。

わかりやすいブランド物という鎧をまとっているのも、どこか不安があるから。なので私のような、一見確実に落とせそうな“ちょっと地味な子”にも寄ってくる。

「楓ちゃんは今、何歳なの?」
「私ですか?27歳ですけど…」

ただ女性も、彼にとってはブランディングの1つ。

「そっかぁ、27歳か。そろそろだね」

若くて可愛い女の子を連れていなければ、負けそうな気がして怖い。なぜなら、大人になるにつれて悟ってしまったから。

育ちはお金で買えないことに。

幼い頃から一流のモノに触れてきたことによる、卓越したセンス。「お金があるのが当たり前」という環境で育ってきた人たちのみが放てる、余裕。

それらを知ったとき、絶望感に陥るのだ。


圧倒的に育ちがいい人と、自分たちとの格差を。


両者の間には、どうあがいても埋めることのできない溝がある。

だから、お金で買えるわかりやすいアイテムで周囲を固めて、自分の今の地位を誇示したくなるのだ。

それに一成さんのような人は、他人から見たら計り知れないほど努力してきたはず。ここまで稼げるようになるのも1つの才能であると思う。

でも血の滲むような努力をして、自分がようやくすべてを持てたと思ったとき。

ふと隣を見ると、平然と、生まれたときからすべてを持っている人がいたりする。

「一成さんって、普段はどういう方と遊んでるんですか?」
「僕は似たような経営者の友達が多いかな。決まった男友達でよく飲んでるんだけど…。IT系の会社をやってる、中里とか畑田って知ってるかな」

彼の口から出てくるのは、一成さんと似たような雰囲気の有名経営者ばかり。そこに生粋の東京BOYや二世軍団の名前は一切出てこなかった。

「今度、よければ旅行しない?1日1組限定の、すっごくいい宿があってさ…」

その後も一成さんは、お金がある人しか入れなさそうな場所やお店、そしてブランドの自慢話をし続けた。

そしてそんな話をされればされるほど、皮肉にも先日デートした慶應幼稚舎ボーイ・裕二さんのことを思い出してしまう。

― そういえば。育ちのいい人に限って、わかりやすいブランド物とか持たないし、SNSもしないんだよなあ。

そんなことを思いながら、私は光り輝くお鮨をどこか虚しい気持ちで見つめていた。

育ちは、お金では買えない。

だから何歳になっても、どんなにお金を持っても。その人の品格は自然と滲み出てしまうのだ…。


▶前回:「年収1,000万って、東京では貧困層なの?」UNIQLOやZARAも着る男と、デートしてみたら…

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