『呪怨:呪いの家』が本当にいわくつきなワケ… VODでホラー映画が百花繚乱

 映像配信サービス百花繚乱により、さまざまな作品を自宅で手軽に楽しめるようになった昨今。それはB級を含めたホラー映画も同様だ。

 熱心な愛好家の多いホラー映画。人気ロックバンドAlexandrosの元ドラマーで、現在は音楽、ファッション、マンガやアニメのカルチャー面で活躍する庄村聡泰もそのひとり。そんな彼が会ってみたい人として指名したのが、映画プロデューサーの叶井俊太郎だった。

 叶井氏は映画バイヤー兼宣伝マンとして国内興行収入16億円の大ヒットフランス映画『アメリ』を買い付けたことで知られているが、『八仙飯店之人肉饅頭』や『ネクロマンティック』といった知る人ぞ知る名作ホラーや『いかレスラー』などのカルトな作品を世に広めたことでも知られる業界の名物男だ。

 ということで、時世に合わせて、最近のVOD(映像配信サービス)のホラー映画をテーマに、庄村氏が切望したホラー対談が実現。オタク垂涎のマニアックなトークが展開された。

“考えなくても見られる映画”大量生産の背景とは?

庄村 僕、『八仙飯店之人肉饅頭』(93年)が大好きなんですよ。これは叶井さんがバイヤーとして初めて買い付けた作品なんですか?

叶井 そうだね。26歳の頃で、どうしても買いたくて会社(当時在籍していた配給会社、アルバトロス・フィルム)を説得したんです。子供をバラバラにする内容だったからみんなドン引きしてたけど(笑)。

庄村 あの映画はスゴかったですよ。

叶井 これが当たって、『人肉天婦羅』とか『人肉竹輪』といった人肉に便乗した謎シリーズができました。当時はタイトルに人肉ってつけるだけで、レンタルが回ったもんです。

庄村 便乗作品たちはどれも本当に面白くなかったですけど、それはそれとしてすげぇいい時代でしたね。でも今、映像業界的にはその時代が戻ってきてる感じが僕はしてるんですよ。

叶井 確かに。いろんな配信サービスができて、各プラットフォームのオリジナルを含めて、いろんな作品を家で簡単に見られますよね。

庄村 ブロックバスター(アメリカの元大手ビデオレンタルチェーン)が戻ってきたということなんでしょうね。ホラーで見ると、単純にコロナ禍の巣ごもり消費で刺激が欲しかった心理も働いたりして追い風なのか、どこもかしこもホラーがいい意味で大量配信されています。

叶井 Netflixは次々と新作を配信してるけど、だいたいがホラーかサスペンス、アクションだもんね。ホラーはほとんど見てるけどほぼタイトルは覚えてません(笑)。それはある意味、考えなくても見られる映画が戻ってきてるってことなのかも。ハリウッド映画の雰囲気を見ても、そういう傾向は感じますね。

庄村 ビデオ安売王で安価なホラーが大量生産されてた時代を彷彿とさせますね(笑)。

叶井 1本500円投げ売りのオリジナルね。僕も何本も買いましたよ。聡泰さんは、配信サービスは結構チェックしてますか?

庄村 実はあまりできてなくて……。国産バイオレンスはHuluが強いんで加入してますが、あとはあんまり。最近の配信ホラーには疎いので、叶井さんに“配信ホラーの歩き方”を教えてほしいんです。

叶井 とはいっても、配信はプラットフォームも作品もいっぱいあって、選ぶのが大変ですよね。

庄村 ホラー映画専門と謳うOSOREZONE(オソレゾーン)も“ほんこわ系”(「本当にあった怖い話」)とかの実録系、半ドキュメンタリータッチのものがメインです。

叶井 海外ドラマは見ます?『ウォーキング・デッド』とか。

庄村 これまた非常に申し訳ないんですが、そこに手を伸ばせてないんです。シリーズものって『ソウ』や『ファイナル・デッドコースター』みたいに尻すぼみで終わるんじゃないかっていう怖さがあって。

叶井 う~ん、ほかのはどうなのかよくわからないけど、『ウォーキング・デッド』はどんどん面白くなってますよ。いろんな配信サービスで見られるし。ちょうどシーズン11がやってるから、1から追っかけるのがオススメ。

庄村 がんばって追いつきます。ほかに最近のホラー作品で気になるものはありますか?

叶井 『ズーム/見えない参加者』(21年)なんていいんじゃないですか? ZOOMを使ったホラーで、今っぽさを引用してるところとか。『search/サーチ』(18年)がFacebookを舞台にしてるみたいな感じ。

庄村 そういう流れは昔からありますね。

叶井 それから昔の映画のリメイクも流行ってますね。今年リメイクされた『キャンディマン』も傑作でした。それと『ハロウィン』シリーズのリメイク2作目の『ハロウィン KILLS』。

――リメイク作品だと、最近勢いのある韓国から『ヨコクソン/女哭声』(21)という映画もありますね。オリジナル作品は86年の作品だそうです。

庄村 これは見たことないけど、面白いわけがない(笑)。

叶井 僕は『哭声/コクソン』(17年)は大好きで世間的にもそこそこウケてたから、便乗してるのかな?『新感染半島 ファイナル・ステージ』(20年)も、一応『新感染 ファイナル・エクスプレス』(17年)の続編だけど、内容的には全然関係ないんですけどね。

庄村 売れたコンテンツに便乗するのは人肉シリーズ時代と変わってない(笑)。

『呪怨』シリーズ、清水監督とプロデューサーの確執の原因とは⁉

庄村 配信オリジナルホラーで面白かったものはありますか?

叶井 やっぱりNetflixの『呪怨:呪いの家』はよかったですよ。同シリーズ初のドラマ作品なんだけど、これまでの映画の作り方とは違う。80~90年代に実際に起こった「女子高生コンクリート詰め殺人事件」や「神戸連続児童殺傷事件」などを背景に入れつつ、呪怨のドラマに持っていってるから、そこが新しかったですね。

庄村 『呪怨』はもともとビデオスルーでしたよね。それなのに、ビデオスルーも映画も配信オリジナルも全部面白いすごいコンテンツ。一度も作品として評判が落ちたことのないホラーって聞いたことがないですよ。

叶井 “ザ・ジャパニーズホラー”って感じですよね。世界でもかなりウケたし。でも今回は清水崇監督じゃないんですよ。

庄村 どうしてですか?

叶井 呪怨の清水監督と当時のプロデューサーがお金で揉めたと聞いてます……。確か裁判沙汰になって泥沼化したような……。多分まだ決着ついてないと思いますね……。

庄村 やばい話ですね……。めちゃくちゃいわくつきじゃないですか⁉

叶井 その意味でも、ホラー映画ファンは注目すべき作品ですね。

――不穏当な話に転がったところでひとまず、今回はここまででお願いします。次回からは実際におふたりに共通の作品を見ていただきつつ、対談をしてもらいますね。

2021/11/15 21:00

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