朝ごはんの「ケロッグ」に“米化オートミール”が流行するワケを聞いてみた

 一日の始まりに活力をつけ、元気よく過ごすために欠かせないのが朝食だ。

 パンやヨーグルト、納豆、味噌汁、たまごなど定番の食材を中心に、ライフスタイルに合わせた形で朝食を摂っているのではないだろうか。そんななか、手軽に栄養を取り入れられると人気なのが、コーンフレークやグラノーラといったシリアル食品だ。

 シリアルにミルクをかけて食べるのは一般的だが、最近ではさまざまな食べ方やレシピも登場し、ニーズが多様化しているという。

 今回は日本ケロッグで、マーケティング本部 PRマネージャーを務める山路真由さんに、シリアル食品のトレンドの推移やおすすめの食べ方について話を聞いた。

◆朝食シーンでシリアルを食べる習慣が根付いてきた

 ケロッグはシリアル食品の世界シェアトップブランドとして知られる企業だ。日本には1962年に上陸し、国内のシリアル食品市場における礎を築いてきた。

 同社が日本で初めて商品を出したのは1963年。「コーンフレーク」と「コーンフロスト(現 コーンフロスティ)」を発売した。

 当時、グローバル全体で朝食シーンでの訴求を重視していたこともあり、日本でも朝にシリアル食品を食べる文化を根付かせようと、プロモーションに力を入れていたという。

「日本の食卓には馴染みのなかった商品でしたので、有名人やキャラクターを起用したテレビCMを実施し、認知度向上に努めていました。また、子供向けの商品についても、ケロッグお馴染みのキャラクターである『トニー・ザ・タイガー』や『ココくん』をパッケージに入れて親しみやすい印象を与えたり、おまけの景品を付けてみたりと子供が楽しんで食べられるような商品を心がけていました」

 時代は進み、シリアル食品市場へと参入する企業が増えたことにより、朝食シーンのひとつの選択肢として、ミルクと一緒にシリアル食品を食べるのが浸透してきたわけだ。

◆シリアル市場拡大の転機となった「グラノラブーム」

 そんなシリアル食品だが、カテゴリーが大きく成長する転機となったのが2012年頃から伸び始めたグラノーラブームだった。

 朝活が注目され、同時に“おしゃれな朝食”としてパンケーキやエッグベネディクト、フレンチトーストなどがメディアに取り上げられるなか、「グラノーラ」が脚光を浴び、シリアル食品全体への注目が高まったのだ。

「グラノーラブームによって、これまでシリアル食品を食べてこなかった方や、子供の頃に食べた経験のある大人の層も再びシリアル食品に興味を示すようになりました。日本ケロッグも2000年に『フルーツグラノラ』、2013年に『フルーツグラノラ ハーフ』を発売し、新たな消費者へ向けた拡販を行なってきました」

◆腸活ブームに乗った「機能性シリアル食品」が好調

 そして、直近のトレンドとしては、コロナ禍でより一層健康に気を遣う消費者が増えたことで「機能性シリアル食品」のオールブランシリーズに注目が高まっていると山路さんは説明する。

「コロナ禍で巣篭もり需要が生まれ、かつ時短ニーズや健康志向の高まりから、シリアル市場全体が伸長しています。とりわけ、『腸活』が注目されていたことに加え、学識者がオールブランに含まれる「発酵性食物繊維」が発酵を通じて、腸に有用な成分がつくり出されることに注目し、発信し、多くのメディアが報道したことも相まって、日本ケロッグが2020年4月にリニューアル発売した『オールブラン』シリーズが大きく売上を伸ばすきっかけになりました。

 機能性表示食品として進化したオールブランは、『善玉菌を増やして腸内環境を改善する』という明確な機能便益を訴求できるようになり、消費者にも腸内環境を整える効果があることを伝えやすくなったんですね。こうした腸活ブームや外出自粛による健康意識の高まりが相まって、機能性シリアル食品のニーズが拡大している状況です」

◆オートミールの“米化”、新たな主食になる?

 また、コロナ禍で生活様式が一変し、食シーンもさらに多様化したことで、消費者志向は「従前の朝食だけでなく、小腹がすいた時の間食やおやつの需要も増えた」と山路さんは続ける。

「テレワークが普及し、在宅にいる時間が長くなったことで、シリアル食品の喫食機会が広がったと感じています。もちろん、朝食のシーンは主流として顕在化しつつも、クルトンの代わりにサラダやスープにシリアルを添えたり、おやつとしてシリアル食品を食べたりと、間口は確実に広まっていると言えます。ケロッグでも、さらなる喫食機会の拡大に向け、朝食に限らず、様々な食シーンでお召し上がりいただく機会を増やしていくことで、さらなるカテゴリーの成長を目指したいと思っています」

 なかでも、大きな話題を呼んでいるのがオートミールによる“米化”だ。

 米化とは、文字通りオートミールをお米のように食べること。オートミールに水を加え、電子レンジで温めることで、米特有の粒感やもちもちした食感になるという。

 まさに、お米の代用として新たな主食になりうる可能性を秘めているわけだ。

「多くのメディアがオートミールについて取り上げ、露出がされたことで、オートミールの米化はシリアル食品市場のなかでも非常に関心度が高いトピックになっています。弊社でも料理家の方が監修したレシピの展開や食べ方の訴求をしていますが、インスタグラムなどのSNSで消費者の方が考えたレシピの投稿から口コミで拡散されるくらい、ブームに火がついていると感じています」

◆ヘルシーで健康目的にぴったりなオートミールのレシピ

 そんなオートミールのおすすめの食べ方について山路さんに伺った。

「お米の代用としてオートミールは活用できるので、おにぎりや雑炊、カレー、チャーハン、リゾットなどお米を使うメニューであれば、さまざまな料理との相性も良く、汎用性が高い。興味のあるものからトライしてみて、自分なりのアレンジの仕方を楽しみながら、美味しい食べ方を見つけていただくのがいいかもしれません。

 また、ヘルシーな食品や健康目的で小麦粉の代わりとしてオートミールを使うニーズもあり、お好み焼きやクッキーなどのお菓子づくりにも適していますので、レシピを参考に料理の幅を広げてみるのもおすすめですね」

 グラノーラブームがひと段落し、新たなに盛り上がりを見せるオートミールの米化など、シリアル食品市場のこれからの動向に注目したいところだ。

◆「腸活ブームを牽引するブランドになれたら」

 最後に山路さんに今後の展望について伺った。

「来年は日本ケロッグが創業60周年を迎えるので、改めてシリアルを食べてもらっていない人に興味を持ってもらえるよう、いろいろな企画を考えています。直近では、健康志向の文脈から機能性シリアル食品のニーズが高まっているので今後も注力しつつ、発酵性食物繊維が含まれるオートミールやオールブランを中長期で戦略的にサポートをしていくことで、腸活ブームを牽引していけるようなブランドになれたらと思っています。また、商品ラインナップの充実ぶりは他社に負けない強みでもあるので、老若男女問わずに食べていただけるように尽力していきたい」

<取材・文・撮影/古田島大介>

【古田島大介】

1986年生まれ。立教大卒。ビジネス、旅行、イベント、カルチャーなど興味関心の湧く分野を中心に執筆活動を行う。社会のA面B面、メジャーからアンダーまで足を運び、現場で知ることを大切にしている

2021/11/15 8:52

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