i☆Ris9周年ライブで見せた軌跡と絆「これからも続ける気が満々です!」

 2021年、11月7日。声優アイドルユニットのi☆Risがデビューシングル「Color」をリリースした日からちょうど9年が経過したこの日、幕張メッセのイベントホールにて、「i☆Ris 9th Anniversary Live ~Queen's Message~」が開催された。

 本記事では、後日メンバーたちを取材して聞いたコメントを交えながらライブの様子をお届けするが、「Queen」の冠にふさわしい9年間で培ってきた技術の結晶たるライブであったといえるだろう。

◆きらびやかなマントをまとった5人の女王たち

 これまで、8周年なら「i☆Ris 8th Anniversary Live ~88888888~」と拍手のクラップ音をタイトルにしてきたように、数字にちなんだ周年ライブの名前を決めてきた彼女たち。

 9年目のライブの冠にする言葉をメンバー全員で探したなかで、茜屋日海夏が出したアイデアのひとつが「queen」だった。

強くてかっこよくて、美しくて、かわいさもある。そんなイメージで、このタイトルに決めました」(山北早紀)

 ステージ上には、王宮をイメージした豪華なつくりのセットと、階段を11段のぼった先に配置された5つの女王たちが座る椅子が配置。ライブが始まると、冠を頭に付けて、きらびやかなマントをまとった5人の女王が姿を表す。

 冒頭の「幻想曲WONDERLAND」終了後にはステージが暗転。2曲目の「ありえんほどフィーバー」の出だしで「最高の瞬間に逢いに行こう!」と叫んだ瞬間にステージが明るくなり、マントを脱いだメンバーたちの姿があらわになった。

 色と生地は統一しながら、衣装の形状がメンバーごとに異なる。これは、9年前に運命共同体として活動をスタートさせながらも、いつしかそれぞれの夢が枝分かれし、個々人の仕事も充実させつつ、グループの活動も続けるi☆Risを体現しているかのようにも見えた。

◆統一感のなかで個性豊かなメンバーの衣装

 5曲目が終わったあとのMCでは、各メンバーが衣装のポイントを解説。

(山北)「今回のポイントは露出です。肌を出してるけど、引き締まってるからスポーティでいい感じ。定期的に肌をみせて、きれいな状態を保つために頑張っていきます」

(芹澤)「クイーンのほうがより女性らしいイメージだけど、首のチョーカーや肩のフリルなど、プリンセスっぽさも意識しました。すぐそこの舞浜の…私の大好きなプリンセスたちと同じです(笑)」

(茜屋)「ニーハイブーツをはいて、珍しく足を出しました。袖は健在で肩パッドを入れて。さきさまからバブリーを拝借しました」

(若井)「最近スカートが多いので、久々にショートパンツなんです。じつは足が長いんですっていうのをわからせるコーデです(露出度が)さきさまと同じくらいです」

(久保田)「パフスリーブのふわふわ、すけてる感。クイーン感もありつつ、わんわん王国のお姫様もやらせてもうとるので、一応髪の毛をストレートにしてプリンセス感も出しました」

◆女王の冠にふさわしいパフォーマンス

 衣装だけでなく、パフォーマンスも女王の冠にふさわしいものだった。

 後日、ライブを振り返る山北が「クイーンって言葉を使うからには、実力もないとだめだなってって思いまして(笑)」と謙遜していたが、スキルの点でいえば、9年間の積み重ねから、アイドル業界でも指折りともいえるレベルまで成長している彼女たち。

 ストリートダンスのプロ集団・リアルアキバボーイズも「グルーヴとキレがすごい」「複雑なフォーメーションをステップ踏みながらナチュラルに動いている」と舌を巻くほどに練り上げられたダンスを、茜屋日海夏・若井友希のロングトーンのフェイクに代表される、声優としての訓練の賜物でもある高レベルな歌唱とともにこなしている。その様子はまさに業界でも最高水準のグループのひとつといえるだろう。

◆怒涛のスケジュールの中で迎えた周年ライブ

 さらに今年は澁谷梓希の卒業により、すべての歌割りと振り付け、フォーメーションを構築せざるをえない状況に。

「6人時代に比べてフォーメーションと動きが変わった曲は、すごく頭を使いました」(若井)「ちょっとだけ動きが変わった曲だと、前の動きが出ちゃうこともあります。自分ではわからないのがこわくて、リハ映像を見てはじめて気づいて慌てて直したことも」(芹澤)「単独初の演出もあって、体もだけど、頭の体操だった」(茜屋)と苦労が垣間見えるコメントも。

 それぞれのメンバーが個人の仕事で忙しくなり、リハーサルの回数も徐々に減っていく。

「これまではみんなリハーサルでもほとんどミスをしなかったイメージだけど、今年はそれがちょこちょこあって、i☆Risも人間なんだなって思いました」(久保田)

 それでも個々の活動を充実させながら、シングルリリース2回、全国ツアー、9周年ライブと、水の下ではバタバタもがきながらも、水上では優雅に舞う白鳥のようにめまぐるしいスケジュールをこなしてきた。

◆“大人i☆Ris”の集大成

 そんな2021年のi☆Risは、スキルに加えて楽曲の方向性や表現についても新境地を開拓した。

 今年リリースのシングル2曲「Summer Dude」「12月のSnowry」は、これまでにない恋愛ソングであり、色気のある衣装や表情で新たな一面を見せる演出がなされている。

 2021年は“大人i☆Ris”の第一歩を踏み出した年でもあったわけだが、その集大成がこの9周年ライブだったともいえる。

 山北の「誘惑しちゃうぞ」という曲振りから披露された6曲目「Vampire Lady」から「Baby…」「One Kiss」、シングル曲「Summer Dude」「12月のSnowry」と続くブロックは象徴的で、既存の曲ながら9年目のi☆Risがこの順番で歌うことで、これまでとはひと味違う、大人の魅力あふれるパフォーマンスとなっていた。

◆積み重ねてきた9年の歴史と歩んできた絆

 9年という決して短くはない年月を積み重ねてきたメンバーたちも、その歴史を感じた瞬間があった。グループ史上初のトロッコとリフターに乗る演出で客席の近くまで行ったときには、長きにわたり応援してくれているファンの顔も見かけたというのだ。

「9年前に活動を始めたころから応援し続けてくれてる人たちをみつけたんですよ。最初はお客さんが本当に少なかったけど、この日はその古参たちがたくさんのお客さんに埋もれてるのを見て、あらためて、多くの人たちに観てもらえるようになったんだ…って歴史を感じました」(山北)

 13曲目、高いリフターに乗りながら「Thank you forever!」を歌うシーンでは、〈振り返るたびに支えられていることが とてもうれしくて何度でも前に進めるよ〉と歌う部分で山北が涙を流し、感極まって歌えなくなってしまうシーンもあった。

 その直後、間奏に入るやいなや「さきちゃーん、リーダーでいてくれてありがとう!」(芹澤)「ありがとう!」(全員)というフォローがあり、9年間ともに歩んできた絆が感じられる。

 そして会場を見渡して「みんなもありがとう!」(若井)とメッセージを贈り、涙ぐみながら続きを歌う。

〈これからもずっと一緒にこの道を歩む 

ひとりひとりの夢は違うけど 

どんなときだってそばにいてくれてありがとう〉

 会場に集まった大勢のファンとメンバーたちの心がつながった瞬間だった。

 周年など節目のライブでも湿っぽくならず、楽しく明るくパフォーマンスを繰り広げるi☆Risであるだけに、その強い思いが垣間見える貴重なシーンだった。

◆「5STAR☆(仮)」から真の「5STAR☆」へ

 ちなみにアンコールまでの時間には、メンバーがファンに向けて書いた直筆メッセージがモニターに映し出されていたので、ぜひアーカイブ映像でチェックしてほしい。

 ライブの冒頭では久保田が「9周年 i☆Risちゃんおめでとう! これからもまだまだ大きいステージに立てるよう頑張っていくから、よろしくなー!」と宣言し、締めくくりでは山北が「次は10周年イヤーということで、ここで終わるのかなと思う人もいると思いますが、続ける気が満々です。コツコツ頑張って……売れるぞー!」とさらなる野望を語り、節目のイベントが幕を閉じたのだった。

 幕張メッセのイベントホールという大きな会場でライブを開催しながらも、まだまだ上を目指す。いまはまだ「5STAR☆(仮)」だが、いつか「(仮)」がとれて、真のスターとなり、名実とともに女王として君臨するーー。そんな日に向けての第一歩となったライブだった。

◆強くてかっこよくて、美しくて、かわいさもある「クイーン」に

――まずライブのタイトルについて、「i☆Ris 9th Anniversary Live ~Queen's Message~」とつけた経緯は?

 8周年まで数字にちなんだタイトルを決めてきたので、今回は「9」という数字にかけて、いい言葉はないかなって考えてるなかで、ひみ(茜屋日海夏)が「Queen」って言葉を出してくれたんです。いままでは年齢的に「プリンセス」寄りだったけど、そろそろそういう年じゃないかなっていうこともあり。

「Queen」と冠に付けるからには実力もないとだめかなって感じはありますが、私たちのなかでは、強くてかっこよくて、美しくて、かわいさもあるってイメージでタイトルにしました。

――そのタイトルどおり大人っぽさ全開のセットリストでしたが、どこを軸に曲を決めていったのでしょうか。

芹澤 「Queen」をテーマにしたけど、そういうイメージの曲をシングルで出してたわけじゃないから、クイーンっぽさをどこで出そうかと考えたなかで「Vampire Lady」、「One kiss」あたりで女性っぽさが出るゾーンを作って、それ以降はみんなが入れたい曲を選んで……って流れでした。

山北 ライブ中の曲振りでも「誘惑しちゃうぞ」って言ったブロックですね。

◆「みんなのうれしそうな顔が忘れられない」

久保田 今回は大きい会場だからトロッコやリフターに乗りたいとか、演出面でやりたいことも軸になりました。本番ではスイッチが入るから大丈夫でしたけど、リフター、高いからリハではかなり怖かったですね。ひどい顔してたと思う(笑)。

若井 私は余裕じゃんと思って手を広げて気持ちよく歌ってました。

山北 他の人より(背の)高さがないから怖さが半減したのかな(笑)。

若井 関係ないでしょ(笑)。トロッコで観客席の近くまで行けたときの、みんなのうれしそうな顔が忘れられないです。遠くの席の人たちは「ハズレ席だ……」って残念に思ってたかもしれないので、きらきらした笑顔を見れてよかった。今後もこういう演出ができる大きい会場でライブをできるようにがんばっていきたいです。

茜屋 わかる。みんなのマスク越しでもわかる笑顔を直接見られるライブはやっぱり大好きなだなって感じた! 今回、楽しかった!嬉しかった!悔しかった!を一個一個冷静に感じられたライブだったから、10年目は理想にもっと近づける自分であるようにさらに努力したい!

◆新曲よりも苦労した微妙な振り付けや歌割りの変化

――今年は3月に澁谷梓希さんが卒業して新体制となり、振り付けやポジション、歌割りなど変化の大きい1年でした。振り返ってみて、苦労したポイントはありますか?

若井 9周年ライブでいえば、「Cheer up」とか新曲はわりと大丈夫なんですけど、「Vampire Lady」「Baby…」あたりは振り付けとフォーメーションがすごく変わったから、頭を使いましたね。逆に、冒頭のあたりは5人バージョンの新しい振りを入れてるから、感覚としては新曲寄りなんです。

芹澤 わかる。ちょっと変わった曲は、前の動きが出ちゃうよね。前の動きをしてる!って自分ではわからないのがこわくて、リハ映像を見てはじめて「うわ、これは前の動きだった」って気づいたこともありました。

「Baby…」でも、梓希さんが踊ってて、私はしゃがんでいたところを踊ることになってるとか。歌割りも変わったから、リハーサルで歌ってるときに急にシーンとなって、全員が「え、誰?」って顔してたこともあったよね(笑)。

茜屋 それに、トロッコにリフターとか単独ライブ初の演出が多かったから、覚えることが多くて結構大変だったよね。体もだけど、頭の体操だった(笑)

久保田 私は「幻想曲WONDERLAND」で首を傾けるタイミング変わったの、ほんとに大変!(笑) 1、2、3番で全部微妙に変わってるから難しいんですよ。

山北 友希ちゃんと私は変わらないから、そこは楽させてもらってます(笑)。

若井 たしかに(笑)。

◆「i☆Risもちゃんと人間なんだなって」

久保田 でもこの1年を振り返ると、そういう間違いがあることで「i☆Risも人間なんだな……」って思いましたね。私のイメージでは、リハーサルでメンバーがミスすることってほとんどなかったけど、今年はポジションや振り付けが変わったり、それぞれの仕事が忙しくなったことで、そういう場面もあって。あらためて我々もちゃんと人間だったって思った(笑)。

芹澤 昔はリハの回数も多かったんですよね。最近はそれぞれの仕事もあるから、準備が前よりもギリギリになっていって。みんな本番には絶対間に合わせるって気持ちでやってます。

久保田 でも、それぞれの仕事が増えたのはすごくいいことだし、ありがたいよね。

茜屋 うん。体力や体のガタはやはり年齢とともにだけど、耐えられる体でいれるよう日々鍛えなきゃと思いました(笑)

◆「4日間ラーメン抜きでがんばりました」

――ライブのアーカイブ(11月14日まで)を見るうえで、見てもらいたいポイントを教えてください。

久保田 さっきも話した「幻想曲WONDERLAND」の首を傾けるタイミング、ズレないようにがんばってるので、みてください(笑)。

芹澤 ファンの方から、「Baby…」の追いかけがあったあと、私がひとりで「Baby」っていうところが史上最高の「Baby」でしたって言ってもらったので、そこですかね(笑)。梓希さんの卒業で、しゃがみから踊るに変わったのも、そのすぐあとのところです。

茜屋 「Vampire Lady」のテーブルの演出かな。コレオグラファーのMIKAさんのこだわりがたくさん詰まったとても可愛らしいシーンだと思うので! 実は、歌詞にある通りトマトジュースもしっかり飲んでるんです!(笑)昔歌ってた時より年齢を重ねて、より大人になった「Vampire Lady」が見られるのではないかと(笑)

山北 私はあらためて衣装をみてほしいですね。最終のフィッティングがライブの4日前で、鏡に映った自分がちょっと強そうな感じだったので、4日間ラーメン抜きでがんばって体型を仕上げたんですよ。露出を多くして自分で自分の首を締めたけど、なんとか戻せてよかった……。

若井 4日間で戻せるのがすごいよ。私は曲中に入れるフェイクの部分に注目してほしいです。今回の「幻想曲WONDERLAND」では気持ちよくハマったので、良い幕開けだ〜って思ってました(笑)。逆にフェイクがうまくいかないと、失敗をひきずってダンスをミスすることもあるくらいなので。

「One kiss」のフェイクは、もっとできたはずと感じて悔しかったので、「これは若井の100%じゃないんだな」と思って見てください(笑)。

◆客席を見渡して感じた9年の歴史

――ライブ中に9年間の記憶が蘇ったポイントはありますか?

山北 トロッコで客席に行ったとき、9年前からいるオタクたちをぽつぽつ発見して、うわ〜ずっと来てくれてるんだって。9年前はお客さんも少なかったから、みんな顔と名前が一致してたんですよ。古参たちがたくさんのお客さんのなかに埋もれてる……って思うと、歴史を感じますね。

芹澤 私たちもけっこう長くやってるから「i☆Risを最後のオタ活にします」って言ってくれる人もいるんですよ。

山北 じゃあ、その人はまだまだオタク、やめられないね(笑)

 i☆Risはついに2022年から10周年イヤーに突入する。i☆Risの躍進から目が離せなさそうだ!

【i☆Risプロフィール】

‘12年に結成された声優とアイドルを両立するユニットi☆Ris。i☆Risの21枚目のニューシングル「12月のSnowry / ハートビート急上昇」が12月8日に発売決定。ふたつの“冬の恋”を歌った両A面シングルとなっている。デビュー日の11月7日に行われたソロライブでは、22年より10周年イヤーに突入することが発表され、4月より全国ツアー「i☆Ris 7th Live Tour 2022」の開催が予定されている

<取材・文/森ユースケ>

2021/11/14 8:51

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