鼻フックは女性への加害?ポリコレを切り抜けてショーに出演した話

もう10年ほど前のことですが、興行でロサンゼルスを訪れる機会がありました。アメリカ人の男性と結婚して渡米した友人(職業:SMのミストレス)が、現地でフェティッシュなクラブイベントを開催するというので、遊びに来がてら、ショーに出ないかと誘われたのです。交通費や宿泊費などは手弁当ということでしたが、ロスのクラブのショーに出演する機会は貴重だし、絶対に楽しいに違いない……ということで、他に誘われた数人の友達と相談し、旅行も兼ねていくことにしたのでした。

同行メンバーはDJの女性とその彼氏、そして某鼻フックビデオの監督とわたしです。わたしの役どころは鼻フックショー(注:鼻にフックをひっかけて豚鼻にしたりするショー)のモデルで、ついでにもうひとつ、主催者の友人から「フロアに大きな鳥籠があるので、その中で踊って脱いで、客を盛り上げてほしい」とも頼まれていました。

ロサンゼルスのクラブの鳥籠の中で踊る! まるでコヨーテ・アグリーか、フロム・ダスク・ティル・ドーン! ならば衣装はギラギラのエナメルのボンテージスーツで……と同行するメンバーと打合せしていたところ某鼻フック氏が言ったのです。

「日本人が外国で踊るなら、セーラー服だろ!」

言われてみれば確かにまったくそうで、海外のストリッパーのファッションを真似したところで、スタイルのいい外国人女性たちの中では見劣りしてしまうし、セーラー服姿の日本の女は、俄然にレア。注目を浴びそうです。これは勝てる……! 何に勝つつもりなのかは不明ですが、アダルトショップで買ったペラッペラのコスプレセーラー服をスーツケースにつめて、ロサンゼルスへの旅だったのです。

ロサンゼルスでトラブルが発生

渡米当日。一行で飛行機搭乗前から飲み始め、飛行機の中でも延々飲みつづけていたところ、CAさんから「酔いが醒めるまでは、もうこれ以上、アルコールは提供できません」と断られるなどのハプニングもありつつ、現地の飛行場までイベントのクルーが迎えに来てくれました。ハンバーガーを食べたり、地元のショッピングモールでワンピースを買ったりと、旅は快適にスタート。

ショーは三日目の夜の予定でしたが、一応前もって見ておいてほしいということで、夜は会場の下見に行きました。するとそこで、箱側とトラブルが発生。鼻フックは女性への加害にあたるため、ショーをするのは難しいというのです。モデルのわたしが合意しているか否かは関係なしに、とにかく鼻フックという行為がNG、パンツを脱いでもいいけれど、鼻フックはダメだという。

いや、しかし我々は鼻フックをしにアメリカを訪れたのだ。できないのは困る。交渉に交渉を重ねた結果、「モデルの女性が、鼻フックをされている最中、ずっと笑顔でピースをしていること」という条件でショーができることになったのです。ポリコレを切り抜けた!

ショー当日に注目されたのは…

そしてショー当日。鼻フックショーはカメラを併用し、モニタに鼻責めされているわたしの姿を写しだす予定だったのに、モニタとビデオカメラが上手く接続できないというトラブルもありつつ、なんとか乗り越えて無事にスマイル&ピースな鼻フックショーを終え、さらには憧れの鳥籠ダンスに至ってはセーラー服のお陰で人々の注目を集め、チップの雨を浴びることに。「やっぱりセーラー服、強いわー!」と悦に入っていたところ、人々は口々に「ヘアー!」「ブラックヘアー!」「ピュービックヘアー!」と声をあげて驚愕の表情を浮かべています。

どうしてかはわからないけれど、セーラー服以上に、わたしの陰毛が注目を浴びているらしい……。陰毛を見せれば見せるほど、チップが飛んでくるという謎の事態に困惑しながらも、その夜は無事に終了。笑いながら鼻フックされてドル札を浴びるという、なかなかレアな経験もでき、大満足な旅だったのでした。ちなみに後から聞いたところ、なんでもアメリカでは陰毛を処理するのが普通だとか。だから一切処理していない漆黒の陰毛を目にして、衝撃を受けたということだったようです。アメリカでは陰毛はインモラル。

Text/大泉りか

2021/11/13 11:00

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