【アジア最前線:タイ #16】札幌×ミズノが進める「アジア戦略」。バンコクでの異色の取り組みとは

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★札幌とミズノが組んでのタイ進出


 北海道コンサドーレ札幌が今年8月、タイの首都バンコクの都心にショールーム「スタジオ・コンサ・イン・バンコク」をオープンした。11月末までの期間限定で設置されたもので、クラブのユニフォームやグッズなどの展示や各種イベントが開催されるなどタイのファンへ向けてクラブの魅力を発信していく。Jクラブが海外にこういった形での情報発信拠点を設けるのは初めての例となる。

「スタジオ・コンサ・イン・バンコク」は、札幌がオフィシャルトップサプライヤー契約を結ぶミズノ社と共同で企画されたものだ。Jリーグでのチャナティップの活躍によってタイでの認知度が飛躍的に向上したコンサドーレと、タイをはじめとするアジアでのブランド浸透を狙うミズノがタッグを組んで実現した。クラブと企業がパートナーとしてアジア進出を目指す構図は、2011年から本格的に進められてきたJリーグ「アジア戦略」のビジョンとも重なる。

 ミズノは発展著しい東南アジアを、アジアにおける重要市場と位置付けている。特に親日的でサッカー熱が高く、所得水準も高くなってきているタイは最重要の市場であり、すでにバンコクには複数の直営店を展開している。ミズノとスポンサー契約を結ぶチャナティップがJリーグで活躍を続けていることも追い風となり、タイにおけるサッカーシューズの販売は右肩上がりの状況だという。

 2021年シーズンからミズノは札幌のユニフォームサプライヤーを務めており、クラブとともにタイでのユニフォーム販売にも力を入れていく構えだ。これまでもタイではJリーグのユニフォームへの需要が高かったものの、海外での商権の問題などが障壁となって販売は実現しなかった。そんななか、札幌とミズノがタッグを組んだことによって東南アジア市場における「BtoC」(企業と一般消費者の取り引き)が実現。Jリーグの「アジア戦略」にとってもまた大きな一歩が刻まれることとなった。

★タイでの高い認知度を生かした新たな展開



「スタジオ・コンサ・イン・バンコク」は当初、タイのファンに足を運んでもらうことによってSNS等で情報が拡散されることを期待していた。だが、スタジオがオープンした8月は、タイで新型コロナウイルスの感染が急拡大していた時期で、バンコクでは厳しい行動規制が実施されていた。そのため計画はシフトされ、インフルエンサーらを会場に招いてのオンラインイベントなどが積極的に展開されていった。

「スタジオ・コンサ」のオープン日となった8月14日には、タイ出身でムエタイのONEフライ級世界王者であるロッタン・ジットムアンノンを招いてのイベントを実施。当日、札幌ドームでのFC東京戦は「ミズノサポーティングマッチデー」として開催され、試合前後にバンコクのスタジオと札幌ドームをオンラインでつないでのライブ配信が行われた。

 チャナティップの活躍によって、タイにおけるコンサドーレの認知度は高まっている。クラブのタイ語フェイスブックページは約7万5000人のフォロワーを抱えており、日本語ページの約7万9000人に迫る規模だ。現地におけるJリーグの試合中継でも札幌の試合は常に高い視聴者数を記録している。「スタジオ・コンサ」のイベントでもクラブへの注目度の高さがうかがえ、オープン日のライブ配信は延べ30万人以上のファンが視聴した。

 タイ人初のJ1プレーヤーとして獲得したチャナティップの大成功によって、札幌はJリーグの「アジア戦略」を大きく前進させる役割を担った。タイでの知名度や注目度もJリーグトップクラスとなった強みを生かし、また次のステップへと踏み出した形だ。こういった事例が成功を収めれば東南アジア市場に目を向けるJクラブがさらに増え、海外におけるJリーグの放映権の価値も高まることは間違いない。札幌とミズノによる新たな挑戦は、Jリーグにとってもまた新しい扉を開く可能性を秘めた動きと言えるだろう。

文=本多辰成

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  • サッカーキング

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