<ホラー映画ナビ>邪悪な心・技・体を極めた殺人鬼“G”を猛プッシュ! 『マリグナント』

 次々と日本上陸を果たす最新ホラー映画から選りすぐりの注目作をピックアップ。独創的でスリリング、おもしろコワイ、観て損なしの「この1本」を独断と偏見でチョイスして、関連度の高い「おすすめ作品」とあわせてご紹介! 今回はハリウッド屈指の人気ホラーメイカー、ジェームズ・ワン監督の新作『マリグナント 狂暴な悪夢』を猛プッシュ! 『ソウ』シリーズで天才殺人鬼ジクソウ、『死霊館』ユニバースでは悪魔人形アナベルと、強力なホラーアイコンを次々と生み出し、ホラー映画界を牽引してきた彼が創造する史上最悪最凶の殺人鬼“G”とは何者なのか?

 妊娠中のマディソン(アナベル・ウォーリス)はDV夫に暴行されて頭を強打。ショックで流産してしまう。しかも、眠っている間に見た悪夢をなぞるように、夫はむごたらしい手口で何者かに惨殺されていた。以来、マディソンは謎の殺人鬼が暗躍するヴィジョンに苛(さいな)まれ、その犯行は必ず現実となる。忍び寄る魔手に怯える彼女は、幼い頃に“ガブリエル=G”と名乗る邪悪な存在に悩まされていた過去を思い出すが…。

 不安や恐れを具現化したホラー映画の怪物はまさに百鬼夜行。度肝を抜く多種多様なトンデモキャラを世に送り出してきた。その歴史を“G”は規格外の特徴で塗り替える。

 まずは超人的な身体能力。一瞬の光の点滅を利用して移動し、気がつけば背後にスッと立っている。座っていたソファがヘコむことから体重はあるのだろうが、予測不能な素早い動きは完全に人知を超える。刑事に追われてビルから飛び降り、ヒラリと宙に跳躍したかと思えば、壁を駆け抜けて暗闇に消える。その姿はまるで神出鬼没のゴキブリのよう(名前もGだし)。

 次に特徴的なのが、悪魔の職人を思わせる工作魂。屋根裏に身を潜めた“G”は犠牲者から奪った記念のトロフィを加工、鋭利なナイフ状のオリジナル凶器を自作する。禍々(まがまが)しい芸術性と高度なDIY技術。常に漆黒のロングコートを羽織り、黒手袋で獲物に迫る犯行スタイルにも、異常な執着心とフェティッシュなセンスが光る。

 そして、何よりも異色なのが現実と幻想の境界を操り、マディソンに殺人体験を「共有」させる能力。ドアや窓を釘づけした安全な自宅にいても、気がつけば周囲の風景がドローっと溶けて別の場所に直結し、目の前で凄惨な殺人が展開する。これでは気が休まる暇がない。狙った相手を精神的に追い詰める厄介な趣味の持ち主なのだ。

 邪悪な心・技・体を極めた孤高の殺人鬼“G”。その本性が解き放たれるクライマックスでは血の殺戮にも一気にターボがかかり、特にラスト15分はR18指定も納得のリミッターを振り切った未体験の異常事態が展開。いざとなれば素手で人体を容易に破壊できる“G”の本領が存分に発揮され、我々を「新次元の恐怖」へと誘う。

 かつて、少女時代のマディソンが「悪魔」と形容した恐るべき怪物“G”の正体。最後に明かされる驚愕の真実に身震いせよ!

 映画『マリグナント 狂暴な悪夢』は11月12日より全国公開。

【次ページ】“G”の謎を解くヒントになるかも? 勝手に選ぶ“とんでもホラーキャラ”BEST3を発表!

【“G”の謎を解くヒントになるかも? 勝手に選ぶ“とんでもホラーキャラ”BEST3】

◆3位:『エルム街の悪夢』(1984)フレディ・クルーガー

 毎夜、不気味な悪夢のなかで高校生たちを襲う正体不明の殺人鬼フレディ。彼が自作した鋭い鉄爪で切りつけられると、実際に深い傷を負い、目覚めた後に死んでしまう。誰もが避けられない眠りの世界を操る特殊能力、手製の凶器を愛用する設定は“G”とよく似ている。実体のないフレディを無理やり現実世界に引きずり出し、対決を挑むヒロインの孤軍奮闘、ラストの意外な退治法にも拍手。ホラー映画界の知性派ウェス・クレイヴン監督の名作だ。

◆2位:『死霊の罠』(1988)ヒデキ

 深夜のテレビ番組に投稿された猟奇的なスナッフビデオ。差出人不明の映像の真偽を確かめようと、女性ばかりの製作チームが人里離れた怪しい廃墟に潜入する。しかし、そこに待ち受けていたのは覆面の殺人鬼。杭で串刺し、大鉈で顔面叩き割りと、美女たちは趣向を凝らした死の罠の餌食となってゆく。今なお、カルト的な支持を誇る傑作和製スプラッター。怪人と共に血塗られた殺人を仕掛ける少年「ヒデキ」は、“G”に匹敵する謎生物だ。

◆1位:『ムカデ人間』(2010)ムカデ人間

 悪趣味を極めたアイデアで、21世紀厭ホラー映画の代名詞となった衝撃作。人体分離手術を得意としたドイツの名医に取り憑いた冒涜的な願望。それは人間の肛門と口を縫い合わせてムカデ状に連結、神をも恐れぬ「ムカデ人間」を創造することだった。旅行者を捕らえて誕生した前代未聞のクリーチャー。その先頭となる日本人役を北村昭博が演じたことも大きな話題に。“G”は精神を同調させるが、この“つなげる”というポイントは“G”の秘密を解くキーワードになるかも?

(文:山崎圭司)

2021/11/12 7:00

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