【エリザベス女王杯プレイバック】これぞユタカマジックの真骨頂! ハナ、ハナ、クビ、クビの死闘の果てに…

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 GI馬がアカイトリノムスメ、レイパパレの2頭のみで、混戦が伝えられる今年のエリザベス女王杯。一方、GI馬が4頭集い、戦前から実力伯仲の好レースになると見られていたのが2001年のレース。そんななか、テイエムオーシャン、レディパステル、ティコティコタック、ヤマカツスズランというGI馬を相手に、初タイトルを獲得したのがトゥザヴィクトリーだ。悲願のGI勝利となった当時のレースを振り返る。

■二重のハンデを覆して手にした勝利

 15頭で行われた2001年のエリザベス女王杯には、同年の桜花賞と秋華賞を制した2冠牝馬テイエムオーシャン、オークス馬レディパステル、オークス、ローズS、秋華賞と3戦連続で2着に惜敗し、是が非でもタイトルが欲しいローズバドという3歳勢に加え、前年の秋華賞馬ティコティコタック、1999年の阪神3歳牝馬S(現阪神JF)を制したヤマカツスズランなどが参戦。他にも前哨戦の府中牝馬Sを勝ってきたマルカキャンディ、前走でカブトヤマ記念を制したタフネススターなど多士済々なメンバーが顔を揃えた。
 
 同年の牝馬3冠路線の勝ち馬が揃って出てきたのはこの年が初めてのことで、1996年にそれまで牝馬3冠の最終戦として行われていたエリザベス女王杯が古馬に解放されて以降、この年まで延べ29頭の3歳馬(当時の数えでは4歳馬)が挑んできたが、古馬の壁は厚く、1999年フサイチエアデールの2着が最高だった。

 主役に推されたテイエムオーシャンの単勝オッズは3.0倍。3歳馬が1番人気に支持されたのも初だった。ベストよりもやや長いと見られていた2200mという距離ではあったが、今年こそは初めて3歳馬が制するのでは、というファンの期待がオッズにも表れていた。

 一方のトゥザヴィクトリー。その素質は早い時期から高く評価されていたものの、順調にレースを使えなかった不運に加え、自身の気性も災いし、牝馬3冠は無冠で終わってしまう。ようやく重賞タイトルを手にしたのは4歳夏の札幌・クイーンSでのこと。

 続く、府中牝馬Sも連勝。4歳で挑んだエリザベス女王杯では4着に敗れたものの、さらに阪神牝馬Sで重賞タイトルを積み重ねた。そして、5歳初戦として選んだフェブラリーSでは勝ち馬と僅差の3着となり、ダート適性を見抜いた陣営はドバイ・ナドアルシバ競馬場で行われるドバイワールドCへの参戦を決断。そこで日本馬として初めて2着となり、世界の競馬ファンの衆目を集めた。

 とはいえ、ここはそれ以来となる7カ月ぶりのレース。調教技術が進歩し、外厩設備が整った現在でこそ、休み明けでのぶっつけ本番も当たり前になったが、当時は一度、前哨戦を叩いて本番に向かうのが通例のステップ。中間に帝王賞を使えなかった誤算はあったものの、当時としては異例のローテーションといえた。

 そうした過去に例のないローテーションに加え、ダートからの芝替わりや海外遠征帰り初戦という点も不安視されたのか、単勝5.9倍の4番人気にとどまっていた。

 レースは大外枠から先手を奪ったヤマカツスズランにタイキポーラが絡み、これまで前目の競馬で結果を残してきたトゥザヴィクトリーもこれに続くものと思われたが、京都競馬場に詰めかけた大勢のファンはここで我が目を疑うことになる。鞍上はこの大一番で、これまで見せたことのない“控える競馬”を選択したのだ。

 13番枠から好スタートを切ったトゥザヴィクトリーは、スタンド前で馬群に寄せることなく、武豊騎手は馬の行く気を削ぐように1頭だけ外目に誘導。テイエムオーシャンが3番手で続き、レディパステル、ティコティコタックは中団から、トゥザヴィクトリーはそれらを見る位置に控え、ローズバドは定位置の最後方といった隊列で序盤は展開する。

 前半1000mは58秒5という超ハイペース。飛ばした2頭と3番手テイエムオーシャンの差が10馬身以上という大逃げの展開で、後方待機組に有利なのは誰の目にも明らかだった。しかし、これまで試したことのない後方からの競馬。

 果たして、本当に伸びるのか―――。期待と不安が入り混じった多くのファンの目線が、淀の坂を下ってくるトゥザヴィクトリーに向けられていた。

 そして、直線。先に抜け出したのはテイエムオーシャンだった。馬場の3分どころから抜け出しにかかるが、内に潜り込んだレディパステルが独走を許さない。さらに、外からはティコティコタックと並んで上がってきたトゥザヴィクトリー。

 残り50mほどでいったんは先頭に出たティコティコタックを差し返したように見えたが、固唾を飲んでゴール前を凝視するファンの視線の外から、最後の最後に飛び込んできたローズバド。

 ティコティコタックか、トゥザヴィクトリーか、ローズバドか―――。粘りこみを図るテイエムオーシャンやレディパステルを含めた、5頭の馬体が重なったところがゴールだった。

 残ったか、届いたか―――。ゴール前の勢いは完全にローズバドだったが、黄色いシャドーロールが、外から飛んできた漆黒の馬体にわずかだけ先んじていた。引き上げの際、鞍上の武豊騎手が「自分? 自分が勝ったの?」とでもいいだけに自分を指さし、1着の枠場に馬を入れるのをいぶかるほど。前走のドバイワールドCを含めれば、7度目の挑戦でようやく手に入れた悲願のGIタイトルだった。
 
 結果的にはトゥザヴィクトリーが勝利し、ローズバドが2着とGI未勝利馬によるワンツーフィニッシュ。以下、ティコティコタック、レディパステル、テイエムオーシャンと掲示板を5番人気までの馬が占めたわけだが、もう一度レースをしたら、間違いなく着順は入れ替わるだろうと思える大接戦だった。

 結果的に、トゥザヴィクトリーが終始後方からレースを進めたのは、後にも先にもこの一戦のみ。折り合いの難しい馬をピタリと折り合わせる技術にかけては、右に出る者はいないといわれる名手・武豊騎手の“神”騎乗が際立った一戦だった。

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  • 11/11 7:07
  • netkeiba.com

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