「私は歌で生きていくんだ」i☆Ris若井友希がソロライブで見せた強い決意
声優アイドルユニット・i☆Risの若井友希がソロ名義”友希”として10月30日、東京の恵比寿ザ・ガーデンホールにてソロライブ「友希 Birthday Live 2021 #YOLO」を開催した。
◆祈るような気持ちで開催にいたった有観客ライブ
このライブはシンガーソングライターの「友希」名義のイベントで、26歳になる誕生日当日開催のバースデーライブ。20代の折り返し地点という節目の日をファンとともに過ごし、大人への第一歩を踏み出しただけでなく、ライブの終盤にはソロ曲のデジタル配信決定も発表。シンガーソングライターとしても新たな一歩を踏み出すライブとなった。
このライブの約1ヶ月前、「週刊SPA!」連載の取材時には、約2年ぶりとなる有観客のソロライブについて、こんなことを語っていた。
「2年前のソロライブは当日に台風が来て1公演しかできなかったんです。その振替公演もコロナ禍でなくなって……。そこからはオンラインライブを重ねてきて、まだ1ヶ月後にどうなっているかもわからないので、もう祈るような気持ちです」
感染者数も落ち着き、無事開催に至った2年ぶりのソロのステージでは、全14曲中8曲が描き下ろしの新曲(作詞を友希が担当、作曲は友希とバンドマスターの宮田'レフティ'リョウと共作で制作 ※後述の「ex」のみ作詞作曲ともに共作)と、今後もシンガーソングライターとしての活動を続けていく強い決意が現れたパフォーマンスを見せた。
◆開幕は音楽への真摯な気持ちが詰まった渾身のナンバー
ギター、キーボード、ベース、ドラムのバックバンドを従えたライブの開幕1曲目は、サビの強いシャウトが印象的な「No more」。冒頭からエンジン全開で2年分の溜まりに溜まったうっぷんを晴らすかのような強い歌声を披露。
〈No more 湿った言い訳は要らないわ
もう 昨日に Say good-bye
つまらない 無駄話する暇ないから
No more 泣かない ほら戦うの〉
コロナ禍でライブができない環境でも、腐らずに曲を書き続け、音楽に向き合い、戦い続けた……。そんな気持ちを込めた渾身のナンバーでライブが始まった。
2年間ライブを我慢していたのは、ファンも同じだ。コロナ禍で発声はできないながらも、クラップで熱量を表現して、特にファン人気が高い「カフェラテ」の演奏時には、盛り上がりは最高潮。シアター形式で階段状に組まれた恵比寿 ザ・ガーデンホール後方の客席が、ノリノリなファンの動きで揺れるほどだった。
◆「これまでとは違った私」を見てほしい
これまで作詞と作曲の両方を手掛けてきた友希だが、今回の作曲は、バックバンドのバンドマスターを務める宮田“レフティ”リョウとの共作となっている。その理由は、アーティストとして自身だけでは到達できない世界を目指すためだった。
「これまで自分でも曲を書いてきたけど、自分が表現したい世界観を実現するには、もっと違う要素がほしいと思っていました。そこでレフティさんに、一緒に曲を作ってくださいとお願いして。
私が、こういうのがやりたいですと提示すると、レフティさんは『こうかな?』と、これまでにたどり着けなかったところまで、私の可能性を大きく広げてくださるので、これまでとは違った私を見せられていると思います」
◆年下キャラを忘れさせる大人の魅力も
確かに新曲にはギターサウンドが中心の曲もあり、ピアノの弾き語りを得意とする友希だけでは表現できなかったであろう曲もある。
しかし、共同製作によって変わったのはメインの楽器だけではない。「これまでとは違った私」という言葉通り、マイナーコードのロックナンバー「Daydream Devil」では大人の色気も垣間見える表現や、ミッドテンポでシンプルかつ音域が広く高い技量が求められる「ex」を軽々と歌いこなす姿は、かつてi☆Risでは年下キャラであったことを忘れさせるような成長ぶりといえるだろう。
「Lost」では黄色のテレキャスターを持ち、サビでは弾き語りを披露するなど、新たな魅力を引き出す楽曲を演奏した。
◆「私は歌で生きていくんだ」っていう強い気持ち
アンコールのMCでは、冒頭で披露した「No more」が12月15日にデジタルリリースされることを発表。このリリースと今後のソロ活動についてこのように語っていた。
「シンガーソングライターとして、イチから踏み出す気持ちでこの曲をリリースさせていただくということで。今日歌った新曲も今後もリリースできるように、私はこれで生きていくんだっていう強い気持ちでソロの活動もガンガン続けていきますので、ぜひみなさんも付いてきてください!」
2年ぶりの有観客ライブが実現したことに加え、i☆Ris加入前には見知らぬ人々の前で路上の弾き語りをしていた時代もあるだけに、ソロ楽曲のリリースは感慨深いのか、終演後の舞台裏では涙ぐむ様子もみられた。
今後も制作やライブを重ね、さらなる嬉し涙を流せるような場面を実現してくことだろう。
<取材・文/森ユースケ>