20年間変わらぬ圧倒的な存在感「セルリアンタワー東急ホテル」
東京で20年間、第一線を走るのは難しい。
新しさに合わせる革新と、変わらぬ伝統のバランスを図るのが、生き残る秘訣のようだ。
今年、創刊20周年を迎える「東京カレンダー」と同じく、2001年生まれの「同級生」の今に迫った。
渋谷を代表するラグジュアリーホテルとして揺るぎない地位を確立する「セルリアンタワー東急ホテル」。
進化し続けるこの街で、不動の人気を誇る秘訣は何かを探った。
都市開発が進んだこの20年。ホテルからの眺望には新国立競技場が加わったが、渋谷を見守り寄り添うことはずっと変わっていない
渋谷を大人の街に昇華させた立役者、ここにあり!
いまでこそお洒落な新鋭ホテルも点在する渋谷だが、20年前はホテル不毛の地。
若者の街というイメージが強く、ギャルが闊歩し円山町ではクラブカルチャーの勢いがあった。
そんな渋谷は、もともと小区画が多く高い建物を立てられない事情があったが、東急電鉄(現・東急株式会社)の本社跡地の渋谷駅すぐの立地に「セルリアンタワー東急ホテル」が開業。
海外のビジネスマンが宿泊するホテルがなかったことや、IT関連のニーズを見込み大胆なオープンに到った。
その読みは的中し、ビットバレー(渋谷を表すbitterとvalleyにデータの単位bitを掛け合わせた造語)は躍進。ホテルの20年はITの成長と重なり、ラウンジやダイニングにはIT業界の人々が行き交った。
当時の渋谷でひときわ高くそびえ立つ初のラグジュアリーホテルを、「渋谷に大人のランドマークが誕生」とメディアも大きくとりあげたほど。
誰も見たことがなかった渋谷高層階からの眺望や夜景を目当てに、大人が渋谷に集まるようになり、外国人客が2005年頃から急増。
そして、2003年には映画『ロスト・イン・トランスレーション』でスクランブル交差点が印象的に映されたことでSHIBUYAの認知が広まり、交差点を眺める客室も人気となった。
現在の渋谷は、時代の先端をいく業種と世界を相手にしてきたからこそ、エネルギー溢れる街で存在感を放っていられるのだ。
貫き通したのは本物であることと、「大人の渋谷」という世界観
刷新されるものがある一方、本物を求める大人に長く愛される伝統もある。
館内に能楽堂を有する都内唯一のホテルであり、能や狂言のほか現代アーティストのライブも行われる。
能楽堂を臨む料亭『セルリアンタワー 数寄屋』からの眺めも一興。
日本の中華料理界を牽引し続ける、陳建一氏の味を堪能せよ
開業時から営業する、中華の匠、陳建一氏が手掛けた『スーツァンレストラン陳』も注目。
同店での名物といえば、和歌山の青山椒の香りが鮮烈な「四川飯店伝統の麻婆豆腐」2,735円。
20年ほぼ変わらない彼によるレシピは、今も昼時には行列ができる。
「SHIBUYA」の艶やかさを体感!まるで秘密基地のようなバーとは?
“日本ブランド”でありつつも、随所に感じる世界の「SHIBUYA」の艶やかさ
インバウンドの増加にともない、外国人客の好みを意識しデザインをアップデート。
シンプルモダンから、色彩と艶やかなライティングを重視した空間へと移り変わった。
2019年秋にオープンした『R261 CIGAR & ROCK(アール261 シガー&ロック)』は渋谷の秘密基地のようなバー。シガーと美酒を揃え、BGMはレコードから流れる60~80年代のロック。
「和と洋のクロスオーバー」がテーマの客室が2019年春に誕生。
85.3㎡ある「コーナースイート」は紫を挿し色に随所に和素材が使用されている。
今後の展望は……変貌する激動の渋谷に、変わらず寄り添い続けたい
2012年から2027年まで渋谷駅周辺の再開発プロジェクトが本格始動。
街並みが変わるなか、次世代やインバウンドを意識し2019年3月に客室デザインの刷新を終え、同年11月には3軒の新たなレストラン&バー、2020年には2軒の日本料理店を開業。
そう柔軟にアップデートしながらも、核は変わらないのが「セルリアンタワー東急ホテル」。
例えば総料理長は日本のフランス料理を牽引し、“現代の名工”にも選ばれた福田順彦氏が20年務め、調理、サービス、空間、食に関するすべてを統括している。
新しいダイニングが誕生しても、「食は文化交流」というブレない世界観を伝えるプロデューサーがいることは強みだ。
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渋谷は次の20年も大きく変化するはずだが、ホテルは同じ場所で見守り続けるだろう。
「大人の渋谷」という確固たる軸は変わらず、ゲストを癒し、時に鼓舞する場所として今日も扉を開けるのだ。