西島秀俊×内野聖陽のイチャイチャを見逃さないで/劇場版『きのう何食べた?』
よしながふみの漫画を原作とする『きのう何食べた?』の劇場版が11月3日、ついに公開されました。
2019年4月に西島秀俊・内野聖陽主演で深夜ドラマ化されて以降、ファンを増やし続け2020年1月にはスペシャルも放送された人気作。初日だけでなんと動員12万人を超えており、好評の声や続編を望む声も多く聞こえてきます。
ここでは原作漫画・ドラマ共に大ファンで、さっそく鑑賞してきた筆者が、本作の魅力と共に劇場版の見どころをご紹介します。(※予告編以上のネタバレはありません)
◆映画からでも全然OK!大人気の『何食べ』とは
『きのう何食べた?』(通称『何食べ』)は、弁護士のシロさんこと筧史朗(西島秀俊)と美容師であるケンジこと矢吹賢二(内野聖陽)ふたりのゲイカップルの日常を食卓中心に描いた作品です。
シロさんは弁護士という職業ながら、定時に帰って夕飯を一汁三菜で作り食費を月2万5000円に抑えることをモットーとする倹約家。自分がゲイであることを周囲には隠しています。
ケンジは、人当たりがよく自分の欲望や感情に正直に生きている“乙女”! ゲイであることやシロさんとの恋人関係もオープンです。
このふたりをベテラン俳優の西島・内野が見事に再現、熱演したことでも話題になった本作。また、同じくゲイカップルの小日向大策(山本耕史)とジルベールこと井上航(磯村勇斗)も愛すべきキャラクターとして注目され、人気を博しました。
シロさんの料理仲間である富永佳代子(田中美佐子)に、息子がゲイであることを理解したいと思いつつ…受け入れきれないシロさんの父(田山涼成)と母(梶芽衣子)も作品に深い味わいを与えています。
『何食べ』は、ホームドラマのような温かさが特徴です。美味しいごはんと共に、人生のほろ苦い部分、人と人との繋がりや絆が丁寧に優しく描かれています。劇場版もそこは全く変わらず、いきなり映画を観ても十分に楽しめる作品でした。
◆シロさんに胸キュン!そしてケンジの乙女心に共感の嵐
予告で「彼氏と京都旅行なんて乙女の憧れだよぉ~」とケンジが喜んでいる通りふたりは京都旅行に行きます。
ドラマ版では「旅行に行きたい」というケンジに「旅館に中年男ふたりでって…」と躊躇(ちゅうちょ)していたシロさん。そんなシロさんからのまさかの提案で実現した京都旅行では、予告通りケンジの夢を存分にシロさんが叶えてくれています。(裏には、シロさんのあることに対する後ろめたさがあるのですが…)
はじめはキュンキュンときめくケンジですが…優し過ぎるシロさんに徐々に不安を覚えるという展開です。
ケンジの繊細な感情を豊かに表現している内野の演技は、まさに乙女そのもの!映画館ではクスクス笑いが漏れるほどでした。また、いつもヤキモチを妬くのはケンジの専売特許でしたが…劇場版ではなんと「シロさんが?嫉妬?!」というシーンも登場します。その様子も微笑ましかったです。
ふたりがイチャイチャする姿を、いやらしくなく…思わずほっこり観てしまうのは、西島・内野の演技力があってこそだと改めて痛いほど感じました。ちょっとした仕草や会話、表情から、ふたりが本当にお互いを想い合っていることを感じ取って、観ている方も思わず胸キュンしてしまうのです。ドラマ版以上にふたりの仲良しぶりを堪能できます!
◆生きていれば誰もが抱える問題と葛藤に涙が
「人生はちょっぴりほろ苦い」こんなキャッチコピーもつけられた今回の劇場版。シロさんもケンジもアラフィフで、親の老後に自分たち自身の健康……それぞれの職場や友人を巻き込んで様々な問題に直面します。
衝撃的な事件とかではない……けれど、誰もが共感できる“家族”というテーマを様々な角度から描いている本作。ドラマ版でも、ゲイならではの悩みだけでなく……人と人との繋がりについて丁寧に表現されてきました。
血縁や社会的な結びつきがあったとしても、誰かと関係を作り上げていくのは難しい。ゲイである彼らは、あっけなく関係が壊れてしまうことへの怖さを人一倍感じているのかも知れません。だからこそ、彼らはパートナーのこと、家族のこと、友人のことをとても大切に…そして想い合って生きていくのです。
繊細で優しい人たちの、幸せな……そして時々ほろ苦い人生そのもの。劇場版でも、お互いを想うからこその誤解やすれ違い……悲しみ、葛藤が描かれており、涙なくしては観られません。最後には大事な人と美味しいものが食べたくなる!そんな幸せな気持ちにさせてくれる作品でした。
今回いつもの愛すべきキャラクターたちに、劇場版の新キャラとして松村北斗(SixTONES)も華を添えています。イマドキの若者が、シロさんとケンジに与えるちょっとした刺激も見どころのひとつ。心もお腹も満たしてくれる劇場版『きのう何食べた?』は、公開中に観てぜひとも癒されて欲しい1本です。
◆『何食べ』の料理が美味しそうに見える秘密
また、『何食べ』といえば美味しそうな料理。この作品に登場する料理の特徴は、家にあるもので簡単に作れる一般的な家庭料理ということ。
ご馳走メニュー(ドラマ版ではラザニア、劇場版ではローストビーフにアクアパッツァなど)が登場することもありますが、それでも特別な調味料や特殊な器具は必要ないものばかり。実際にレシピを試した視聴者はかなり多かったはず!(筆者もほぼ全メニュー作ってみましたが、どれも簡単で美味しくできました)
さすが飯テロを得意とするテレビ東京作品です。「久しぶりに食べたい」「こんなに簡単なら自分で作ってみたい」と思わせるレシピたち。
お洒落なテーブルコーディネートもインスタ映えもそこにはないけれど……節約しながら栄養バランスを考え、相手を想って作るごはんを大切な人と食べる。それがどれだけ尊いことかを、私たちは本能的に知っているからこそ『何食べ』の料理はどれも美味しそうに見えるのではないでしょうか。
もちろん劇場版でも料理の魅せ方は健在!筆者の隣の人はずっとぐーぐーお腹が鳴っていたので…空腹時の鑑賞はおすすめしませんけどね。
<文/鈴木まこと(tricle.llc)>
【鈴木まこと(tricle.llc)】
雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Instagram:@makoto_s.1213