『有吉ゼミ』も…バラエティで人気の「激辛グルメ」が人体に与える危険性を医師が警告「致死量は激辛ソース一瓶」

 今年8月、BPO(放送倫理・番組向上機構)が「痛みを伴うことを笑いの対象とするバラエティー」を審議対象にすると発表した。つまり、稲川淳二や片岡鶴太郎→ダチョウ倶楽部→出川哲朗といった系譜で受け継がれてきたテレビバラエティのリアクション芸に、「待った」がかけられた格好だ。

 とはいえ、テレビの中の痛みにはいろいろな種類がある。ビンタやザリガニもあれば、熱湯風呂だってそうかもしれない。さらには、いまバラエティ界でブームになっている「激辛グルメ」企画はどうだろう。見るからに辛そうな「激辛料理」にタレントたちがチャレンジし、汗を掻いてヒイヒイ言いながら食べ進める様子を面白おかしく眺めるというもの。しかも、番組のマネをして「激辛グルメ」を食べまくる一般人YouTuberも多く、その影響が心配である。

 ただ、激辛料理を食べすぎることによる人体への危険性は、ビンタや熱湯風呂なんかと比較すると、正直わかりにくいところ。そこで、「南流山内視鏡おなかクリニック」の院長の前田孝文医師に、「激辛グルメ」の危険性についてズバリ聞いてみた。

「市販の激辛ソースを一瓶丸飲み」で致死量

 前田孝文医師よると、「激辛グルメ」にはいい面と悪い面があるらしい。適切な量の唐辛子は、人体にとってメリットだという。

「辛み、痛みの成分であるカプサイシンは少量だと胃の粘膜を保護してくれ、胃腸に良い作用があります。また、カプサイシンを摂ることで体の活動を活発にするアドレナリンがたくさん分泌され、代謝が促されて体重が減ったり脂肪減少にもつながります。血行を促進して血流を改善するので、冷えにも良いですね。また、唐辛子に含まれるβカロテンにはビタミンAがあり、視力を維持したり、皮膚と粘膜と髪の毛を保護する作用もあります。あと、唐辛子に含まれるビタミンEには、動脈硬化や心筋梗塞を予防する作用と疲労回復の効果が期待できますし、生の唐辛子にはビタミンCが豊富に含まれているので、風邪を予防する作用とシミやシワを防ぐ美肌効果もありますね」(前田医師)

 こう聞くとなんだか良いことづくめな気がしてくるが、これはあくまで適量を食べた場合。食べすぎれば、人体に害を及ぼす。

「まず、カプサイシンが体内の様々な場所にあるカプサイシンの受容体と結合すると人は痛みを感じます。気管や気管支にある受容体とくっつき、気管を刺激して咳が出たりむせ込んだりしてしまいます。あと、肛門の近くの腸にも受容体が多いので、カプサイシンを多くとると刺激が起きて肛門がヒリヒリします。激辛料理を食べた翌日、お尻の穴が痛くなるという方も多いでしょう。痔の方は、香辛料を摂りすぎないほうがいいですね。
 また、胃腸の粘膜を刺激すると、胃にあるものが食道に逆流する『胃食道逆流症』が起きます。これによって咳やムカムカする作用が起きることがあります。また、便秘や下痢をしてお腹が痛くなる場合もあります。排尿障害が起こり、おしっこが出にくくなることも。胃腸の弱い方は香辛料等の刺激物を摂ると悪化するので、摂りすぎはおすすめしません」(前田医師)

 つまり、「痔持ち」と「胃弱」の人は「激辛グルメ」に向いていないようだ。

 さて、ここで気になるのは、激辛料理の適量と摂りすぎの境目である。

「動物実験で検証されているのですが、体重50キロぐらいの人が3~4グラムのカプサイシンを摂ると約半数は死ぬとされています。ですが、カプサイシンを3グラムも一度に摂取するのは物理的に不可能なので、カプサイシンの作用で亡くなることはほぼ起こり得ません。とはいえ、カプサイシンは400ミリグラムの摂取で胃の細胞が障害を受けると言われています。市販の激辛ソースを一瓶まるまる飲めば、それくらいのカプサイシンは摂れてしまいますから、死なないまでも内臓にダメージを受けることはあり得ますね」(前田医師)

 激辛ソースを丸飲み……無茶する人ならあり得てしまう量だ。チャレンジ精神旺盛の人は要注意! 

 余談だが、人間は“辛味”を脳内で“痛み”と認識する。「辛さに強い」は、「痛みの感じ方が鈍い」と言い換えられるのだ。

「本来、動物は痛みから逃げようとしますよね。つまり、辛さに強いということは、その感覚が鈍感で、危険な状況を感じ取れないのと同じなんです。生物的にはまずい状況ですね」(前田医師)

 激辛料理の人体への影響はわかったが、摂取のしすぎで重大な事故につながる症例は存在するのだろうか?

「カプサイシンは粘膜に障害を与える成分で、目や鼻に染みて相手を攻撃する催涙スプレーにも含まれています。米国では催涙スプレー経由で麻薬常用者がカプサイシンを摂取し、死亡率が上がったという報告もあります。カプサイシンはドラッグとの相性が悪く、一般人なら死なない量でも麻薬常習者は死に至ってしまうこともあるということです」(前田医師)

 もし隠れて薬物を摂取しているタレントがいたなら、「激辛グルメ」企画に出演することはちょっとリスキーだ。「クスリを一発キメてから収録に出よう」、決してあり得ない話ではないだろう。

「あと、アメリカで報告があったのは、激辛料理の大食い大会での事例。参加者が辛さのあまり嘔吐を繰り返したのですが、『オウェッ!』と嗚咽する度におなかの圧がものすごく高くなり、その結果、食道が破れてしまったということがありました。嘔吐の繰り返しによって食道が裂け、穴が空いてしまう『特発性食道破裂』という症状です。食物には菌がたくさんついていますし、口の中も細菌がたくさんいます。食道にいる菌が破れたところから食道の外へ侵入すると縦隔炎という重篤な感染症を引き起こし、死につながる可能性もあります。また、食道が突然破れるわけですから、その参加者の方は食道が裂けて吐血をし、ものすごい激痛だったと思います」(前田医師)

万が一体調を崩した場合の対処法

 とは言え、芸能人にはオファーされた企画に「NO!」を言えないシチュエーションもあるだろう。もしそうなった場合、「激辛グルメ」を食べやすくし、
ダメージを緩和する対策法はあるのか?

「受容体とカプサイシンが結合しにくい状況にしておくのが第一です。吸収を悪くするという意味で、飲み会の前に牛乳を飲むのと同じ。粘膜を保護するような乳製品を摂っておき、辛み物質がくっつかないようにしておくと食べやすくなります。特に『辛い!』と感じるのは口や鼻なので、口内を牛乳で保護しておくといいでしょう。ただ、後ほどお尻が大変なことになるのは避けられませんね」(前田医師)

 では、食後に体調を崩した場合はどういった処置が必要になってくる?

「カプサイシンの成分が一度吸収されてしまうと、それを解毒する方法はあまりありません。そうなると、できることは対症療法になります。下痢をして脱水になったら、それを補うために点滴をする。胃腸の症状が出た場合は、それに応じた対処をする。お尻がヒリヒリしたら、粘膜面を保護するために軟膏を塗る。出てきた症状にどうリアクションするかという話で、摂取したカプサイシンそのものを取り除くことはできないんです」(前田医師)

 激辛料理を無理に食べることで人体に及ぼす悪影響は明白だった。なのに、「激辛グルメ」企画が姿を消す気配はない。現在のこの流れを、前田医師はどう考えているのだろう?

「激辛企画が過剰なブームになるのはあまりよろしくないと思います。正直に言うと私も昔はビートたけしさんの『スーパージョッキー』(日本テレビ系)でやっていた熱湯コマーシャルを面白おかしく見ていました(笑)。だけど、ああいうのを真似して大やけどする人がいたら大変。『激辛グルメ』企画も同じです。『辛いものを食べてみた』という動画をアップするYouTuberはいますし、激辛料理を売りする飲食店もありますよね。バラエティは専門家の監修のもとで行っているはずなので一線は越えないでしょう。でも、一般人がノリで行うとそうではないことも。ちゃんと常識で考えれば、いきなりタバスコ一本を入れてしまうなんて無茶はしないと思うんですけどね」(前田医師)

 なるほど、常識が常識でなくなっているいまの社会も不安要素のひとつか。だからこそ、昨今の「激辛グルメ」ブームは心配だ。

  • 11/8 18:00
  • サイゾー

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