「普通の人だったら理解できる」が口癖の上司、“普通の人”って何?

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「親ガチャ」という言葉がネット上で流行している。子どもは親を選べず、ガチャガチャ(カプセルトイ自動販売機)のように運要素が強い——。たいていは親のせいで人生が困難に陥っているという文脈で使われるが、そこから派生して「上司ガチャ」まで登場。

 そこで今回は、上司に恵まれない部下たちの「上司ガチャ失敗談」をお届けする。ときには、退職に追い込まれてしまうこともある。

◆鬼上司の暴言にウンザリ「売上落ちるのあんたのせいやで!」

 上山美香さん(仮名・20代)は飲食店で働いていた。当時出会った女性上司のAがひどかったという。

 性格の浮き沈みが激しいAは、入社8年目の正社員。休み時間にはプライベートのことを話してくれる明るい人だったというが……。

「Aは彼氏と同棲中らしく、よくその話を聞かされました。そのときはとてもフレンドリーなのですが、仕事が始まると、ほんの数秒前とは一変して鬼上司へと変貌します」

 早口で「商品の在庫が足りない?」「発注したの誰?」とまくしたてる。

「またあんた?」「前も間違ってたよな?」

「私が(パソコンに)打ち直すから、その商品ストップして! 売上落ちるのあんたのせいやで!」

 上山さんや部下たちは何度も謝るが、Aは「ヘラヘラすんな!」「ほんまに社会人なん? 出直してこい!」と叱り続ける。
 
◆理不尽な出来事に転職を決意

 ある日、あまりにも理不尽な出来事に直面し、上山さんは転職を決意する。

「その日はお客様が少なくて、他の従業員たちと話をする時間がありました。恋愛話などをしていたのですが、突然、Aが入ってきたんです。怒られることはなく、むしろノリノリで会話に参加してきて。そこにお客様が来たので、Aが接客に向かったんです」

 笑顔で注文を受けに行ったA。しかし戻ってくると、その表情は曇っていた。そして、嫌な予感が的中する。

「他のお客様から『店内がうるさい』とのクレームがあったと言うのです。Aも会話に参加していたにもかかわらず、『あんたたちのせいだろうが!』と怒鳴られました。私の淹れたコーヒーに対しても『量が少ない、もう1回淹れ直して』と烈火のごとく叱り続けていました。最終的には、『生理前ってほんまイライラするわ』って。毎日こんな調子なので、転職しましたね」

◆「普通の人だったら理解できる」が口癖、“普通の人”って何?

 30代で初めて正社員という働き方で就職が決まった西島花さん(仮名・40代)。内定を出してくれた会社に感謝し、会社のために頑張ろうと意気込んでいた。

「念願の出版社で働くことになって本当に嬉しかったです。未経験の業界のうえ、年齢的なことで記憶力とかが心配だったのですが、少し時間はかかっても大丈夫だろうと思っていました」

 しかし、西島さんが思っていた以上に現実は厳しかったという。

「試用期間が3か月設けられていました。私以外の先輩たちは、すでに15年は勤めている大ベテラン。小さな会社だったので、ていねいに仕事を教えてもらえるというよりも『見て覚えて』という感じでした」

 そこで出会った上司や先輩たちは、ひとりでいくつも仕事を抱えている状態で、常に忙しくしていたと話す西島さん。仕事の進め方やクライアント対応など、それぞれが独自のやり方を貫いていた。

「わからなければ当然聞くのですが、聞くたびに返ってくる内容が違うんです。さすがに困りました。ただ、自分なりに解釈しなければならない。そう思って仕事をしていたのですが……」

◆今までの社会人経験を全否定された気分

 そんな毎日が続いたある日。西島さんをさらに困惑させる言葉もっとも言われたくない言葉が上司の口から飛び出す。

「きちんと教えてくれていないにもかかわらず、仕事に対する理解力が足りないと言われたんです。その原因として、私が今まで派遣とか契約社員でしか働いたことがないことを指摘されて。そして、『“普通の人”だったら理解できる、これまで入社してきた人たちは、みんな理解できていた』とのことでした」

 “普通の人”って何だろう……その言葉が、西島さんの胸に引っかかった。以後、何度も耳にするたび、違和感を覚えたという。

「私は、普通の人じゃないんだとすごく落ち込みました。これまでの社会人経験を全否定されているように感じてしまって。それからは、何の仕事に対しても不安で。でも、聞いたらまた“人間否定”されるのではないかと、拒否反応を起こすようになりました」

 仕事が思うようにできなくなっていった西島さんは、徐々に上司や先輩との距離が開いていくのを感じていた。作業ペースは落ち、ミスの連続で悪循環になっていったと当時を振り返る。

「私にも得意なことがあるはずなのに、それもできなくなっていってしまいました。認めてもらうためにはどうすればいいのか、考えれば考えるほどわからなくなって」

◆試用期間終了と同時に解雇通知

 試用期間が終了する頃には、他の従業員との間には険悪なムードが漂っていたそうだ。西島さんは、せっかく正社員として採用されたのだから「続けたい」という思いがあった。先輩や取締役にも相談したが、何の意味もなかったという。

 そして、試用期間終了当日に驚愕のメールが届いた。

「解雇通知が届きました。しかもメールで。その瞬間は、周りを気にすることなく涙が溢れていました。なんとなく予感はしていたけど、まさか当日言われるとは予想外でした。もう本採用されるものだと思っていたので、ショックだったのを覚えています」

 それだけでも落ち込んでいた西島さんに、上司の言葉が追い打ちをかける。

「最後に、『西島さんのために解雇という選択をした』と言われました。つまり、この会社にいても成長がないから、また新天地でがんばれってことだと解釈したのですが。悔しい思いしか残りませんでした」

 人を否定することは簡単だけど、否定される側のことも考えて発言してほしいと西島さんは訴える。現在は、フリーライターとして新たな道へ進み、充実した日々を過ごしているそうだ。

<取材・文/chimi86>

―[上司ガチャ失敗談]―

【chimi86】
ライター歴5年目。趣味は読書、ミュージカル、舞台鑑賞、スポーツ観戦、カフェ。Instagram:@chimi86.insta

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