女系天皇を認めると、「圭上皇」が誕生するところだった/倉山満

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◆女系天皇を認めると、「圭上皇」が誕生するところだった

 もはや、「国民を敵に回した10分間」としか言いようがない。小室眞子・圭夫妻の記者会見だ。

 一方的に声明を読み上げて退席。質疑応答の代わりの回答文には、殺伐とした返答が並ぶ。生放送で、民放のスタジオには困惑が広がっていた。「こんなものは記者会見でも何でもない」と。今後、女性週刊誌を中心に井戸端会議が繰り広げられるだろう。暗澹たる気持ちになる。

 あえて小室圭氏を褒めよう。神経が縄文杉のように図太い。また、小室圭氏のおかげで、女系天皇論を葬り去る流れが出来上がった。かつては旧皇族の男系子孫の皇籍取得に反対だった国家議員の先生方でも「アレが皇族になるなど、とんでもない」との声が多数だ。

 もし女系天皇が認められたら、小室圭氏は皇族となる。眞子内親王殿下との間の子供は皇族、天皇になれる。その暁には、「天皇の父」として上皇になる資格が生じる。あまり知られていないが、天皇にならずに上皇になられた方は、「不登極帝」と言って、三例ある。女系天皇を認めると、史上初の民間人出身「圭上皇」が誕生するところだったのだ。

◆皇室の歴史で男女関係が政治を動かした事例は星の数ほどある

 皇室の歴史は公称2681年。男女関係が政治を動かした事例など、星の数ほどある。

 推古天皇は蘇我馬子と不倫関係にあったと伝わる。

 中大兄皇子は大海人皇子から恋人の額田王を奪い、対立。二人の子孫は100年に渡る抗争を繰り広げた。

 称徳天皇は、愛人と噂された弓削道鏡を皇位につけようとした。

 平城天皇は愛人の藤原薬子に誑かされて変を起こし、「二所朝廷」が出現。日本を二分する動乱に突入しそうになった。

 保元の乱の遠因は、白河法皇が孫の鳥羽天皇の妻を孕ませたことだった。鳥羽天皇は、崇徳天皇を実の子と認めなかった。

 承久の乱は後鳥羽上皇が裁判で自分の妾に依怙贔屓せよと鎌倉幕府に迫ったところから始まった。

 後深草上皇は実の妹と近親相姦関係にあったが、これまた実の弟の亀山上皇がその妹を奪った。ところが、それは兄のハニートラップだった。南北朝の動乱の始まりである。

◆政府の崩壊、自殺未遂、権威の失墜……

 建武の親政において大功のあった護良親王は、後醍醐天皇の寵姫だった阿野廉子が追い落とされた。建武政府が崩壊する始まりとなった。

 足利義満は後円融天皇の後宮を漁りまわった。妻の不貞を疑った天皇は錯乱、自殺未遂の末に、廃人同様の状態に追いやられた。

 江戸初期には猪熊事件と呼ばれる宮中乱脈事件が発覚。美男子と評判だった公家の猪熊教利が天皇の女官達との不義密通を重ねていた。これは徳川幕府の朝廷への介入を招き、後陽成天皇の権威は失墜した。

 近代でも、「大正天皇の従妹が不倫した」というだけの白蓮事件は大騒動だった。

 無理やりの弁護になるが、小室夫妻は、ここに挙げた人々ほど問題を起こしたわけではなかろう。

 ただし、「さーやさん」と親しまれた紀宮殿下が一般人の黒田慶樹さんとご結婚された時のような、国民からの歓迎がなかった事実だけは指摘しておく。

◆皇族の立ち居振る舞いで大日本帝国は滅んだ

 これまた近代史の話になるが、皇族の立ち居振る舞いは、時に国の存亡にかかわる。

 昭和初期。海軍軍令総長に伏見宮が、陸軍参謀総長に閑院宮が就かれた。つまり、天皇の統帥権を代行する立場だ。宮様総長が実務などするはずがないが、結果は無残だった。ロンドン海軍軍縮条約で、伏見宮は反対派に担がれる。満洲事変以降、陸軍の一部は閑院宮の名前で組織を壟断。国策をも左右した結果、大日本帝国は滅んだ。皇族は存在しているだけで影響力が大きいのだ。だから、自制が求められる。

◆卑劣で巧妙なのが、「皇族の人権」という言い方

 さて、この程度の事実は踏まえた上で、現在と未来の話をする。

 先週から、秋篠宮家バッシングが燎原の火の如く広がっている。特に、毒を薬と言いくるめて。最も卑劣で巧妙なのが、「皇族の人権」という言い方だ。

 確かに、天皇・皇族には、言論の自由も、居住移転の自由も、営業の自由も、職業選択の自由もない。あまりのバッシングに、皇族にもプライバシー権(憲法13条幸福追求権に含まれると解される)は無いのか、との声もある。改善の余地はあろう。正すべきは正すべきだ。

 しかし、大原則がある。憲法の前に皇室はある。日本国憲法を基準に皇室を考えるなど、許されない。男女平等も、国民主権の民主主義も、恋愛の自由も、風の前の塵に同じ。皇族に対し最も認めてはならないのが、婚姻の自由だ。

◆皇族に人権はない。だから尊い

「せめて皇族に好きな人と結婚させてあげて」と煽る輩は、幼稚な世間知らずだ。日本の政財界の子女で政略結婚でない人物など何人いるのか。少し調べれば閨閥の網の目のようなネットワークは一目瞭然だ。ほとんどの総理大臣は閨閥で繋がっているのが日本の現実だ。何をいまさら「皇族にも婚姻の自由を」などと偽善を言うのか。

 皇族に人権はない。だから尊い。そして今、公称2681年の歴史を悠仁殿下が負われている。ここに価値を認めないなら、いかなる理屈も通じまい。皇位は一度も例外なく、男系継承されてきた。一部には、非人間的な面もある。世襲の常だ。では、先例を無視、歴史を変えるならば、世襲をやめるか?

◆日本の皇室を壊したい人間がいる

 国民の多数がそれを望んだとき、止める方法は無い。スウェーデンの国王は、ナポレオンの将軍の子孫だ。占領軍を受け容れたスウェーデンは、二度と欧州の大国に返り咲くことはなかった。カンボジアでは国王が突如「王制をやめる」と宣言。大混乱に陥り、最後は国民の25%が虐殺される大惨事となった。

 一度も途切れることなく歴史を守ってきたのは、世界で日本だけだ。その象徴が皇室だ。それを壊したい人間がいる。

◆敵は手段を選ばず、皇室に累を及ぼす気だ

 この数年の秋篠宮家バッシングは目に余るが、その連中は今や「小室が義兄になるから悠仁天皇はダメ」などと、「愛子天皇」待望論を言い出した。つい最近まで「小室圭さんには民間人皇族第1号になってほしい」と言っていたではないか。失笑するほかない。

 だが、敵は手段を選ばず、皇室に累を及ぼす気だ。狙いは小室バッシングを秋篠宮家叩きにつなげること。

 陽動に乗らず、悠仁殿下を御守りするしかない。

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【倉山 満】
’73年、香川県生まれ。中央大学文学部史学科を卒業後、同大学院博士前期課程修了。在学中より国士舘大学日本政教研究所非常勤職員を務め、’15年まで日本国憲法を教える。ネット放送局「チャンネルくらら」などを主宰し、「倉山塾」では塾長として、大日本帝国憲法や日本近現代史、政治外交についてなど幅広く学びの場を提供している。著書にベストセラーになった『嘘だらけシリーズ』のほか、9月29日に『嘘だらけの池田勇人』を発売

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  • 11/8 8:51
  • 日刊SPA!

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この記事のみんなのコメント

2
  • グレイス

    11/8 18:57

    悠仁殿下を護るのは良いが旧皇族の男系子孫の皇籍復帰は反対。一旦、民間に降った人を男子だからって……。

  • イギリスはどうなのかなあ?

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