オラオラ顔も世代交代!? 新型ランドクルーザーに熱い視線を注ぐアルファードオーナー

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

◆新型ランクルはデカい! 強い! そして割安! でも盗まれる!

 ワタクシが両手に持っているのは、どちらも盗難防止用のグッズです! このステアリングロックとタイヤロックは、今回試乗した新型ランドクルーザーの広報車に積まれていた代物。長らく自動車業界にいますが、こんなに物々しい広報車は初めて~! フェラーリやランボルギーニの広報車だって、こんなに物々しい盗難防止用グッズを積んで貸し出されませんよ!

永福ランプ(清水草一)=文 Text by Shimizu Souichi

木村博道=写真 Photographs by Kimura Hiromichi

◆オフロードのキングから世界のキングへ

 10年ぶりに新型になったランドクルーザー、通称「ランクル300」が凄まじい人気だ。国内の月販目標台数600台に対して、すでにオーダーは2万台を超え、よくわからないが納車数年待ち。転売目的の業者阻止のため、注文時には誓約書への署名を求められる。にもかかわらず、オーダー停止状態に陥っているとか。

 ランクルは「キング・オブ・オフローダー」の異名を持ち、その信頼性や走破性により、途上国で絶対的な地位を確立している。ただ、先進国での人気は、マニア的な部分に限られていた。やっぱ先進国ではクルマが故障しても死ぬことはないですし、道路状況も良好なので、そこまでガチの信頼性より、華やかなブランド性が優先されますから。先進国の富裕層は、ランクルよりメルセデスGクラスを好んでいたのです。

 ところが、今度のランクルは様子が違う。サイズは旧型と同じだけど、見た目の威風堂々ぶりがケタはずれで、顔の威圧感がハンパじゃない。実物を見ると実感するが、「なんか凄いのが来た!」としか言いようがない。これまではキングと言っても途上国のキングだったが、今度は世界のキングの風格が漂っている。

◆実際にランクル300に乗ってると…

 実際にランクル300に乗ってると、Gクラスだろうがロールスロイス・カリナン(ロールスのSUV)だろうが、「なんでも来いや!」という気分になる。お値段は510万~800万円。Gクラスの1251万~2218万円に比べたら、タダみたいに安いけど、ぜんぜん負けてる気がしない。そして、そういった高級SUVからの視線も熱い!

 とあるスーパーカーオーナーは、ランクル300を速攻で3台注文したという。「ビニール傘みたいにいろんなところ(別荘など)に置いておきたいんです」だって。ハァ~。

◆アルファードからの乗り換え

 ランクル300に最も熱い視線を注いでいるのは、アルファードのオーナーだろう。実際にアルファードからの乗り換えが非常に目立つという。

 アルファードと言えば、史上最強のオラオラ顔を持つミニバンだが、そのアルファードをもってしても、ランクル300のオラオラ感にはかなわない。これはもう野生の法則と申しましょうか、見た瞬間に「負けた……」と思わせてしまう。

 しかも3.5リッターV6ガソリンターボ搭載モデルには、3列シートの7人乗り仕様がある。つまり、ミニバンとして使えるのだ! 受注の大部分がソレだそうです。

 それでいて、お値段がアルファードとあまり変わらない。アルファードだって最高770万円もしますからねえ……。オラオラを極めるには、アルファードからランクル300に乗り換えるしかねえだろ!

◆自動車ドロボーさんも…

 で、私が乗ったのは新開発の3.3リッターV6ディーゼルターボ搭載モデル。これまでのランクルは、超ヘビーデューディーゆえ、高速道路で真っすぐ走らなかったり、乗り心地がゴツゴツしてたりしたけど、新型は快適性が飛躍的に向上し、もはや単なる高級車として通用する。

 2.5トンのボディはさすがに重く、7リッターガソリンエンジン並みのディーゼルのトルクを持ってしても、あまり速くはないけれど、とにかく威風堂々、王者の気分である。通りすがりの通行人も、「なんか凄いのが来た!」という本能を刺激されて、一斉に視線を送ってくる。

 そんな熱い視線を注いでいるみなさまのなかには、自動車ドロボーさんもいるのでしょう。ランクルは2年連続で盗難件数日本一。販売台数を考えたら盗難率はダントツだ。

 新型は盗難防止のため指紋認証システムが導入され、お借りしたトヨタの広報車にはステアリングロックとタイヤロックも積んであったが、プロが本気になれば結局破られてしまうんだろう。盗まれやすいクルマに乗るのって、意外と気苦労があるものですね。

 結局クルマから一歩も離れずに、広報車はその日のうちにソッコーでお返ししました。いや~、フェラーリは盗まれないから気がラクだわ! 途上国で人気ないから。

◆【結論!】

この安さでこの威圧感。しかもこれほど注目を集めるクルマはほかにない。ただ、盗難には本当に気を付ける必要がある。気を付けたところで、盗難のプロに狙われたらどうにもならないのでしょうが。

―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―

【清水草一】

1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中。清水草一.com

2021/11/7 8:53

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