吉高由里子のサスペンス『最愛』が「今期イチ面白い」と言われるわけ

初回放送以来、SNSでも話題沸騰で「今期イチ面白い!」という声も多い秋ドラマ『最愛』(TBS系、毎週金曜夜10時~)。吉高由里子が殺人事件の重要参考人を演じるサスペンスラブストーリーで、5日に第4話が放送されますが、ここからがいよいよ本番というところ。観ていないという人は、4話から観始めてもまだ追いつけます!

主演の吉高由里子と、若手俳優のなかでも注目株の松下洸平、幅広い役柄を演じ魅了する井浦新の三角関係と、連続殺人事件とが交錯する本作。それぞれの想いや背景が少しずつ見え、ここから一気に展開が加速しそうです。今回は「これさえ押さえておけばまだ間に合う! 人間関係とあらすじ」に加え、作品の魅力と見どころをご紹介します。

◆吉高由里子と松下洸平、初恋が実ったその日に悲劇が

連続殺人事件の重要参考人となった実業家・真田梨央(吉高由里子)、梨央の初恋の相手で事件の真相を追う刑事・宮崎大輝(松下洸平)、会社の弁護士として梨央を支える弁護士・加瀬賢一郎(井浦新)の3人を中心に展開する『最愛』。第3話までの流れを簡単にご紹介します。

物語のはじまりは、15年前の岐阜県。記憶障害をもつ弟・優(異母兄弟・当時小学生)のために東京の大学の薬学部への進学を希望する高校3年生の梨央と、梨央の父(光石研)が寮夫を務める白山大学陸上部で、エースとして活躍する大輝の微笑ましい初恋が描かれます。

ところが、ふたりの想いが重なりあったその日の夜に悲劇が……。父も大輝もいない寮に、薬学部の大学院生・康介(朝井大智)が遊びに来ます。その目的は、寮生とのドラッグパーティであり、クスリを使わせた女性に乱暴することでした。深夜に梨央が目を覚ますと、体には覚えのない傷があり記憶があやふや……そこには血のついた服と、いつもと違う様子の父。困惑しているうちに、父がくも膜下出血で急死してしまいます。

◆サスペンスなのに、ラブストーリー要素も秀逸

第2話では、見つかった携帯動画が重要な鍵に。動画には、梨央が康介に襲われている様子と、弟の優がそれを助けようと康介に危害を加える様子が納められていました。梨央は、襲われた自分を優が守り、父が隠蔽(いんぺい)したのではないかと推察します。

父の死と大学進学をきっかけに、大企業「真田ホールディングス」の社長で離婚した実の母・真田梓(薬師丸ひろ子)のもとへと上京する梨央。彼女には、兄・政信(奥野瑛太)との確執や慣れない東京での生活が待っていました。そして、後から呼び寄せた優も5年後に失踪。そんな梨央を弁護士・加瀬(井浦)がずっとそばで支え、包み込んでくれたのでした。

そして2021年、梨央は「真田ホールディングス」の子会社「真田ウェルネス」の代表取締役となり、実業家として新薬の開発に邁進。加瀬も顧問弁護士として変わらずに支えてくれています。一方、15年前に梨央を襲ったあと行方不明になっていた康介の白骨遺体が山中で発見され、その10日後には康介の父・昭(酒向芳)も世田谷区内の公園で遺体となって発見されます。その事件を追うのが、警視庁の刑事となった初恋の相手・大輝(松下)だったのです。殺された昭と接触があった重要参考人として浮上した梨央への事情聴取というかたちで、ふたりは15年ぶりに再会。第3話では、梨央が事件への関与を完全に否定したものの疑いの目は晴れないなかで、新薬の説明会会場で梨央が襲われる事件が起こります。

物語は、登場人物の心情ナレーションからはじまり(第1話は松下洸平・第2話は吉高由里子・第3話は井浦新)、過去の回想と現在が交錯する描かれ方で展開します。事件に関する描写はほどよいスピード感もあり、もちろん目が離せません。一方で登場人物同士の会話や心の変化はとても丁寧に描かれており……サスペンスなのに毎話キュンキュンしてしまう、ラブストーリー要素も秀逸。まさに究極のサスペンスラブストーリーに仕上がっているのです。

◆松下洸平と井浦新、どちらかなんて選べない!

事件のミステリー性と同時に注目されているのが、吉高由里子×松下洸平×井浦新の三角関係です。

初恋の相手である大輝を演じる松下洸平は、朝ドラ『スカーレット』で、戸田恵梨香の相手役を好演して注目を集めました。以後『MIU404』では繊細な殺人犯、『東京タラレバ娘2020』では吉高由里子演じる主人公と婚約しながら結婚式当日に逃げ出す今どきの若者、最近では映画『燃えよ剣』で謎の多い重要人物・斎藤一を演じるなど活躍が目覚ましい俳優です。優しいけど優柔不断といった役どころが多い松下ですが、本作の大輝役では男らしい芯の強さと刑事という職業人としての誇りを表現しており、新たな魅力を開花させています。大学生時代の、陸上に打ち込みながら梨央を大切に想う柔らかい表情から一転、刑事として駆け引きしたり相手を追いつめたりする表情の変化には、男としての成長が見えキュンキュンしてしまうのです!

一方、梨央を15年間ずっと見守り続ける加瀬を演じるのが井浦新。もともと雰囲気のある役者として評価が高く、数多くの作品で名演を重ねてきた井浦。『アンナチュラル』で演じた、恋人の死の真相を追及する偏屈な解剖医役で、彼の魅力に改めて気づかされた人も多いはず。今回は『アンナチュラル』から一転、働く女性を支えながら癒してくれる弁護士役に。要所要所で発揮される、井浦の包容力がたまりません!

ふたりとも主人公を大切に想う気持ちと心の葛藤を丁寧に演じているからこそ、その表情一つひとつにキュンとしてしまうのです。

第3話では、梨央を脅迫した犯人から守るふたりが描かれており……キュンが止まりませんでした。体を張って犯人から梨央を守り負傷する加瀬に、犯人を取り押さえる大輝。既にファンのなかでは「大輝派」「加瀬派」と盛り上がりを見せていますが……個人的には、大輝に軍配! 取り押さえても報道陣に向かって梨央への罵倒を続ける犯人に対し「黙ろうか! 署で聞くから、少し黙っとけ」と必死に押さえ込む姿と、そのあと病院で梨央と昔の話をしながらそっと寄り添う姿は素敵でした。しかし包容力爆発の加瀬も捨てがたい……と、やはり選べない展開が続きそうです。

◆第4話からはもっと“沼”に。鳴りを潜めていた人物たちが動き出す

第3話までは事件の概要と3人の関係性が丁寧に描かれてきましたが、ここからは関係者を巻き込んで一気に物語が加速していきそうです。

失踪してしまった弟の優(現在では月に1度無事を知らせるハガキが届くだけ)は、15年前の事件を思い出しており避けては通れない重要人物。また、実の母親・真田梓(薬師丸)は一見理解のある母親ですが根っからの仕事人間で手段は選ばないタイプ。どこか裏がありそうな人物です。梨央の会社で対立関係にあり専務の後藤信介(及川光博)と、彼が梨央を陥れるための情報収集で手を組む情報屋(高橋文哉)やフリーライターの橘しおり(田中みな実)もとってもきな臭い。一方、大輝と一緒に大学時代を陸上部で過ごし、富山県警の刑事となった友人・藤井隼人(岡山天音)や、コンビを組む桑田仁美(佐久間由衣)に、上司の山尾敦(津田健次郎)も、今後どういう絡みを見せてくるのか注目です。

そして5日に放送される第4話! 梨央の会社の疑惑を追及する記事が出回り、会社や世間の風当たりがどんどん強くなります。殺人事件の方は被害者・昭に500万円を渡したとされる男の足取りを追う展開となり、殺人事件と社会的なスキャンダル両面から追及される梨央を、大輝と加瀬のふたりがどう守るのか注目です。

緻密に組み立てられたサスペンスとしての面白さと、女性を胸キュンさせる三角関係が交錯する『最愛』の沼。この秋、どっぷりハマってしまいましょう!

<文/鈴木まこと(tricle.llc)>

【鈴木まこと(tricle.llc)】

雑誌編集プロダクション、広告制作会社勤務を経て、編集者/ライター/広告ディレクターとして活動。日本のドラマ・映画をこよなく愛し、年間ドラマ50本、映画30本以上を鑑賞。Instagram:@makoto_s.1213

2021/11/5 15:45

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