上白石萌音、朝ドラで“大好き”が溢れ出す「このままみんなで、ここで寝たい」

――お気に入りのセリフはありますか?

「ん~なんだろう…」

質問の答えを探すその時間さえも、幸せそうに見えた。

NHKの連続テレビ小説105作目となる『カムカムエヴリバディ』が、11月1日にスタート。“朝ドラ”史上初の3人のヒロインが登場する本作で、初代ヒロインとして登場するのが、女優・上白石萌音。岡山の商店街にある和菓子屋「たちばな」の看板娘、安子(やすこ)を演じる。

ドラマは、この安子編からスタートし三世代にわたる100年の物語が描かれる。昭和から平成、そして令和へ。安子の娘・るい(深津絵里)、るいの娘・ひなた(川栄李奈)へとバトンが繋がれていく。上白石の言葉を借りれば「3倍濃縮でお届けする形」だ。

放送が始まる前、上白石萌音に話を聞くことができた。終始笑顔でインタビューに答える様子からは、この作品への愛情や愛着がひしひしと伝わってくる。「脚本に書いているあの温かさをそのまま届けたい」。そう語った上白石同様、上白石から滲み出た“作品愛”、そして彼女の人柄をなるべくそのまま伝えられればと思う。

昭和の時代を生きる安子。上白石が演じる安子の登場は14歳の頃だ。

まず目を引くのは、安子の着ているレトロなワンピース。「安子のお洋服、めちゃくちゃ可愛いなと思ったのですが…」そう伝えた瞬間、一気に破顔して「可愛いですよね」と相槌を打つ上白石は笑顔いっぱい。

「衣装さんが型から作ってくださったんです。それに、安子が家族から受けてる愛情をすごく感じて、わたしもあのお洋服たちが大好きでした。」

演じる“14歳”というのは、現在23歳の上白石からするとずいぶん若い。

「役をつかむのが結構大変で。今の14歳では考えられないくらいピュアだったりしますし、もっともっと幼い印象があったりもして。でもすごく大人びているし…。不思議な子だなぁと。とにかく声の出し方や表情の作り方などを、監督と一緒に相談しながら撮っていました。」

「衣装や髪型が年齢に応じてどんどん変わっていったので、そこからムードをもらって、演じていることもありました。」

安子はワンピースに下駄を履く。監督のこだわりが出ているというそのスタイルは、上白石もお気に入りだ。

「わたしも下駄の音、大好きで。安子がいろんな感情で歩いたり走ったりするのに、下駄の音がついてきて。当時ってすごく静かだったので、下駄の音などがすごく響くんですよね。木のぬくもりと言いますか、一歩一歩に音がある感じが、すごく丁寧でいいなあと思いながら演じていました。」

心を掴まれたというキャラクター“吉右衛門ちゃん”のことを「本当に大好きです」「最高です」と語り、兄・算太役の濱田岳のことを「本当にわたしは岳さんのことが大好きで」と話す。松村北斗が演じる稔(みのる)についても「稔さんが話す岡山弁が私はとっても好きでした」と振り返る。この作品に関わる“大好き”が、次々と溢れてくる。

そこで、お気に入りのセリフを聞いてみると…

幸せそうな表情で作品に思いを巡らせたあと、少し身を乗り出して

「あの、すごくささやかなんですけど、稔さん(松村北斗)と一緒にいるときに外国人が来て、稔さんが英語をしゃべった後に、『今の英語ですか?』『英語がしゃべれるんですか?』と安子が聞いて、『ちょっとね』って言われた後に、『なんで?』って(安子が)言うんです。それがすごい可愛くて好きです!」

安子はラジオ講座をきっかけに英語を学び始めるのだが、英語が堪能な稔との出会いが安子の運命を動かしていく。

「あの時代って“そういうこと”だったんだろうなぁって。“なんで英語なんて喋れるんですか!?”っていう。ト書きに“心から不思議そうに”って書いてあって。それが安子の運命を変える出会いでもあるし、純粋に『なんで???』って言える安子って、めちゃくちゃ可愛いなって思います。」

しかしその一方で、

「台本読んで、安子が可愛すぎてプレッシャーで。私にできるだろうかって悩みました。」

とも。

念願だった“朝ドラ”のヒロイン。

「マネージャーさんの計らいで、家族がわたしより先に知らされていたのですが、喜ぶわたしを見てみんな本当にうれしそうにしてくれました。」

ドラマの中で安子は、もちろん和菓子が大好きなのだが、「お菓子食べよる人の顔見るん、もっと好き」と発言する場面がある。上白石自身が誰かの様子や顔を見て、嬉しい瞬間はどんな時だろうか?

「わたしも安子と一緒で、みんながご飯を食べて美味しそうにしている姿が好きです。あと、電車とかで、向かいに赤ちゃんが座った時に、おじさんとか強面のお兄ちゃんが、なんかこう…「ウー」みたいな(笑)愛嬌ある顔とかして笑わせている、その顔を見るのも好きです。美味しいものと可愛いものってみんな好きなんだなって(笑)。」

では、ドラマに出てくる「和菓子」のように、怒ってても迷っててもくたびれてても、自然と明るい顔にしてくれるものは?

「お笑いです。アハハハ!」

即答だった。

「どうしようもなかった一日の終わりに、『あぁ笑って寝たいな』ってときは、好きな芸人さんのコントをみて寝ます。」

ちなみに今一押しは?

「えー!一押しですか(汗)わたしはずっと東京03が大好きです。」

「好きです」「大好きです」…取材中、たくさんの“好き”を伝えてくれる上白石は、本当にずっと笑顔だ。ドラマのシーンやセリフをこちらが引用すると、大きくうなずきながら目を細める。「稔さん」の発音は、ドラマと同じ「の」にアクセントがあるイントネーション。そんな些細なところからもこの作品への愛が伝わってくる。

『カムカムエヴリバディ』は100年の物語。上白石が「毎シーンがハイライト」と言うように、展開は早い。それでも、安子の生まれた橘家のあたたかさは、「ずっとある変わらぬもの」として伝わってくる。

――現場であったかさって感じてました?

「(うなずきながら)めちゃくちゃ感じてました。このままみんなで、ここで寝たいって思ってました(笑)」

「私は心から皆さんのことが大好きだったので、デレデレしすぎないようにしようと…(笑)」

上白石萌音の“大好き”が、ドラマ『カムカムエヴリバディ』のあったかさを生む一つの大きな力になっていたのだろう、そう感じずにはいられなかった。

<すみません、お時間になりましたので…>

取材終了のコールに、少し申し訳なさそうな表情を浮かべた上白石萌音。そんな彼女だから、みんなの愛情を受けて育つ安子を、きっと視聴者にも愛される安子にしてくれるに違いない。最後の最後まで、あったかい気持ちにさせてくれた。

取材・文 長谷川裕桃

■連続テレビ小説『カムカムエヴリバディ』

11月1日(月)放送 スタート

毎週月曜~土曜

【総合】午前 8:00~8:15 (再)午後 0:45~1:00

【BSプレミアム・BS4K】午前 7:30~7:45 (再)毎週月曜~金曜 午後 11:00~11:15

※土曜は一週間を振り返り

(C)NHK

2021/11/5 6:00

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