【JBCクラシック回顧】ミューチャリーが地方馬に悲願のタイトル/斎藤修

 これまで地方馬が一度も勝てなかったJBCクラシックの歴史で、21回目にしてようやくの勝利。ダートでは、2歳、3歳、スプリント、牝馬のカテゴリーでは、それぞれJpnIが年間1レースずつしかないのに対して、古馬が出走できるダートのマイル以上では、牝馬限定を除いてGI/JpnIが8レースもある。1着賞金6000万円から1億円のレースが年間にそれだけあれば、必然的に中央馬の層も厚くなる。それだけにJBCクラシックは、地方馬にとってなかなか越えられない高い壁だった。

 そのタイトルを制したミューチャリーはこれまでダートグレードのタイトルはなかったが、それは4歳以降、GI/JpnIを中心に使われてきたため。強敵相手に勝てないなかでも、昨年4歳時のJBCクラシック(大井)では地方馬最先着の4着。東京大賞典では着順こそ5着だが、勝ったオメガパフュームに0秒2差。中央に挑戦したフェブラリーSでは、4歳時は1秒9差をつけられて11着だったのが、今年5歳では0秒9差の7着と確実に進化を見せていた。

 その進化のひとつは、今年5歳になって、前目の位置につけたり、早めに位置を取りに行く競馬ができるようになったこと。かつては中団から直線の伸びが目立っても前には届かずというレースが多かった。きっかけとなったのは今年5月の大井記念。前半こそ後方に位置していたが、向正面から動いて3コーナーで4番手、4コーナーでは早くも先頭をとらえようかという位置まで進出。結果、地方馬同士だったとはいえ、2000m=2分4秒3という好タイムで、2着に6馬身差をつける圧勝となった。

 もうひとつ勝因は、本番を見据え前哨戦として同じ舞台の白山大賞典を選択したこと。さらにデビューから一貫して手綱をとってきた御神本訓史騎手から、金沢の吉原寛人騎手に鞍上を変更したこともあった。

 そして迎えた本番は、スローペースの外目3番手という絶好位。3コーナーで先頭に立ったカジノフォンテンを4コーナーでとらえ先頭に立って直線を向くと、オメガパフューム、チュウワウィザード、テーオーケインズという、中央の実績上位、人気上位馬を完封してのゴール。積み重ねてきた経験と臨戦過程があってこそもたらされた悲願のタイトルとなった。

 スタートで有力馬2頭が出遅れた。帝王賞の勝利から1番人気に支持されたテーオーケインズはそれでリズムを崩してしまった。すぐに好位を取りに行ったこともあり、最後のひと伸びを欠いて4着。

 もう1頭オメガパフュームの出遅れはよくあることで、ある程度は想定内だったと思われる。向正面からのロングスパートはむしろ得意とするところ。メンバー中最速の上り35秒4という脚で直線で前に迫ったが、半馬身届かずの2着は、4コーナー7頭一団の大外を回ったぶんもあった。それが小回りコースの難しさともいえる。

 3着のチュウワウィザードは1番枠もあって道中はずっと内に閉じ込められる形での追走。思うようなタイミングで動けなかったこともあっただろうし、最後のひと伸びがなかったのは、骨折と休み明けの影響も少なからずあったと思われる。

 カジノフォンテンは、逃げたダノンファラオにぴたりと2番手でスローペースは、おそらく理想的な展開。3コーナー過ぎで先頭に立ったあたりでは、ミューチャリーとの船橋ワンツーかとも思えたが、直線を向いて失速して6着。前走帝王賞でも手ごたえ十分に見えたが直線を向いてばったり。今年前半3連勝でJpnI・2勝を挙げたときほどの勢いがない。

2021/11/4 19:45

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