豪メルボルンに暮らすヘイリー・ブラウンちゃんは2016年6月、鼻の中に悪性腫瘍が見つかり「横紋筋肉腫」と診断された。後鼻腔にできた腫瘍は約5センチと大きなもので、ヘイリーちゃんは地元のロイヤル小児病院に入院すると、抗がん剤治療（化学療法）、放射線治療、数回の手術を受けて病気と闘った。

がんの治療が始まる前、ヘイリーちゃんは茶色のフサフサの髪と長くてボリュームのあるまつ毛が自慢だった。しかし入院から数週間が過ぎると髪や眉毛が抜け始め、10月初めには最後まで残っていたまつ毛も抜け始めた。

アンドリューさんは当時のことを「娘の身体の全ての毛がなくなっていくのを見るのはつらかった。でもまつ毛1本だけは治療から4か月経っても留まっていてね。娘が化学療法を終え病院のベッドで眠りに落ちた時、少しばかり感傷的になって『あのまつ毛の写真を撮りたい』と思ったのさ」と振り返る。

そして2016年10月末、アンドリューさんは自身のFacebookに「たった1つ、最後のまつ毛が残っている。1本だけの状態で2、3週間になるよ」と言葉を添えて投稿、これが大きな反響を呼んだのだった。

アンドリューさんは「あの1枚の写真がきっかけで、世界中から愛が注がれたんだ」と微笑むと、特に心に残ったという温かい言葉についてこう明かした。

「イラクでがんと闘う子供たちのために活動する男性から『あの写真に心を動かされた。あなたたちのためにアラーの神に祈りをささげるよ』というメッセージがあったのを覚えているよ。またある女性からは『私の息子は3歳になる2か月前に横紋筋肉腫と診断され、生存率は20％と言われた。でもその息子が今日、12歳の誕生日を迎えた。子供は私たちが考えるよりずっと強く回復力がある。あなたたちのために祈っている。あなたの娘は病気を克服できる』と胸に迫る言葉が送られてきたね。」

そうして写真の投稿から約5年が経ち、アンドリューさんは『7Life』に「あのまつげの写真は、小児がんで苦しむ子たちの厳しい現実を物語る象徴になったと思う」と語ると、病気を告知されてから5年が過ぎたヘイリーちゃんの様子や現在の胸のうちをこう吐露した。

「今の娘はとても幸せで、健康で、来年には中学校にあがるんだ。それにもう少しで、がんを抑えることができている“寛解”になって4年を迎える。フサフサの茶色の髪の毛も戻ったしね。」

「ただ娘の健康状態にはいつも注意を払っている。病院での6か月ごとのスキャンは欠かさないよ。よく『もうがんとの闘いは終わったのでしょう』って言われるけど、終わるということは決してないね。最悪の時が過ぎたってだけさ。もちろん以前に比べたら、今の問題なんて小さなことだけどね。」

「医師は頻繁に検査を行うことで、ヘイリーにがんの治療による副作用がないかどうかをチェックしている。歯に問題はないか、しっかりと成長しているか、他にがんを発症していないか…などあらゆる可能性があるからね。そしてそんななかで私たちにできることは、前向きに楽しく生きることなんだ。」

なおヘイリーちゃんは今年7月に12歳の誕生日を迎えており、アンドリューさんは「ヘイリーは5年前とは性格も違う。今はまさにティーンエイジャーそのものだよ。態度もね」と笑い、こう続けた。

「入院していた頃のヘイリーはとてもシャイでね。腫瘍専門の主治医と一度も話をしたことがないほどだった。でも今は、学校のロックグループで歌を歌うまでになったよ。ここまでの道のりはとても長かったけどね。」

「そんな娘のことで一番誇りに思うのは、優しさなんだ。」

「実は以前、鼻をぐずぐずさせていたことがあってね。『学校を1日休みたい』って言うんだ。そんなに酷くないし学校を休むほどではなかったけど、ヘイリーは『小さな女の子ががんの治療中だから』と説明してくれた。あの子はがんの治療中には免疫力が低下すること、そして軽い風邪であっても命取りになることをしっかり覚えていたんだよ。そして女の子を守ってあげたんだ。」

「今のヘイリーを見たら5年前にがんと闘っていた子だなんて誰も思わないだろうね。」

娘が可愛くて仕方ない様子のアンドリューさん。これからもヘイリーちゃんの成長を温かく見守っていくに違いない。

画像は『TODAY　2016年11月11日付「Dad’s heartbreaking photo shows daughter’s last eyelash as she fights cancer」（Courtesy of Andrew Brown）』『7NEWS　2021年11月1日付「The girl with the single eyelash: Seven-year-old Aussie Hayley Brown touched hearts around the world. Where is she now?」（Credit: Andrew Brown supplied）』のスクリーンショット

（TechinsightJapan編集部　A.C.）