くりぃむ上田『トーク検定』ほか新トーク番組続々! 元芸人語るトラウマ級難しさ

 今回は少し毛色の違った軽掘りを。僕のコラムを楽しみにしてくれている読者の方はもちろん、売れることを目標に邁進している若手芸人にも読んでいただきたい。

 芸人が売れるために必要なスキルは2つある。

 ひとつは発掘してもらうために必要な”ネタ”というスキル。もうひとつは発掘してもらった後、入れ替わりの激しい芸能界で生き残るために欠かせないスキルである”トーク”だ。

 お笑い芸人が活躍する番組において、ネタを披露する番組を除くとほぼトーク番組といっても過言ではない。10年以上前から放送されている『アメトーーク!』(テレビ朝日系)や『踊る! さんま御殿!!』(日本テレビ)はもちろん、ほかにもトークをメインとした番組が増えつつある。

 最近でいうとくりぃむしちゅーの上田さんと売れっ子の若手芸人達のトーク番組『上田晋也VS人気芸人トーク検定』(フジテレビ)や複数の女性タレントを集め、ゲストの男性タレントをトークで丸裸にしていく『トークィーンズ』」 (フジテレビ)など。

 今回はこの”トーク”について元芸人目線で掘り下げようと思っているのだが、間違いなくマニアックなコラムになるはずなので、あえて軽掘りジャンルでお届けしようと思う。

“トーク”とひとくくりにしても、実はいくつものジャンルにわかれている。若手芸人がまず最初に必要とされるのは「エピソードトーク」だ。

 先述した『上田晋也VS人気芸人』や、トーク番組の金字塔と言われている『踊る! さんま御殿!!』(日本テレビ)でよく見かけるトークだが、何かのエピソードが紹介され、そのエピソードをお題にしたトークを展開するというパターンだ。このパターンは基本的に事前にエピソードに関するアンケートを渡され、そのお題に対して「こういうトークが出来ます」という話をいくつか用意し、当日までに番組のディレクターと何を話すか検討し、選ばれたエピソードを本番で話す。

 これは比較的、楽なトークパターンで、ある程度話の筋も決まっているし、オチも考えられるので笑いになりやすい。落ち着いて考えた通りの話ができるのであればそこまで苦にならないが、MCが大物の場合、要注意である。

 目の前に明石家さんまさんや、くりぃむしちゅーの上田さんがいると想定してほしい。舞い上がってしまいパニックに陥る可能性があるのだ。一度パニックに入るとそこからは手が付けられない状態になる。

 思ったところでウケない→笑いをとろうとしてトークに関係ないボケをする→それについてMCに「どういうこと?」と聞かれうまくこたえられない→目が泳ぎ汗が噴き出て周りの出演者も助けられなくなる→自分の順番が終わる。という、マイナスの連鎖が発生する。突発的に売れてしまうとこの現象が多発するが、結局そこを乗り越えて徐々に慣れていくという方法しか解決策は無い。

 パニックに陥るという点で、一番多いのはアドリブのトークだ。

 22日に放送された『上田晋也VS人気芸人』ではそのアドリブ力がかなり試されていた。

 エピソードトークが一通り終わると、上田さんが「〇〇はそんな話ないの?」と問いかけるシーンがいくつか見られたが、番組後半はほとんどがアドリブであった。さすが“トーク検定”という名前の番組だけあり、ウケないところもそのまま放送している。

 ただ勘違いしないで欲しいのは、番組中人気女性芸人・ぼる塾のきりやはるかさんが滑っているという見せ方をされていたが、彼女はキャラクターもあり、滑ろうがウケようが関係ない。むしろ何を考えているかわからないのが良しとされるキャラなので、訳が分からず滑っているほうが彼女としては正解だ。

 MCの上田さんも彼女が滑るとわかっていても話を聞くし、つっこむ。これが本当に滑ってしまい場の空気を壊すようなキャラであれば、あそこまで話を振ることはしない。ウケないところもそのまま放送しているというのは、トーク終わりでこれといったフォローもなく、笑いも少ないメンバーのことだ。さらにやばい芸人は、トークしてないことになっている。

 つまり画面には映っているが、まったくトークしていない芸人こそが。本当に滑っているということになるのだ。さすがのトーク検定でも本当に滑っている人は放送しない。だからいるかどうかわからない芸人が、真のやばかったメンバーということになる。

 正直トークが苦手だという若手芸人は多い。しかし、僕から言わせてもらうと今は随分と楽な時代になっている

 たとえ滑って変な空気になったとしても必ずMCが助けてくれるし、ボケなかったとしても「ボケろや!」とつっこんでくれるはず。普通の話をしても「マジメか!」と言って笑いを起こしてくれる……正直この時代だったらどれだけやりやすかったか!

 僕が若手のころに大御所と一緒にトークをする機会があったが、ほとんどの大御所はボケとしてのクオリティが低かったり、ボケが浮かばずにパニックになっていると何もしゃべらずに無視をして、一呼吸おいて次の話をし始める。

 どういうことかおわかりだろうか?

 それは編集でそこをカットしてもらう間、つまり今の話はオンエアで使わないということなのだ。今のように使うか使わないかわらないが、とりあえず突っ込んでくれるなんて先輩はいなかった。本番中に無視をされ、使われないという現実を突きつけられることがどれだけきつかったか。はっきりいってトラウマになるレベルで、それで芸人を辞めていった者も少なくはない。

 今は本当に優しい時代になっている。昔のように無視をする先輩は少なくなっていて、どんな事をしてもフォローをしてくれると思えば怖いものなんてない! 何もしなければ0だが、何かすれば最低でも1になる。自信があろうが無かろうがとにかくやるべし!

 甘い時代に甘ったれない芸人になることが売れる為に必要とされる第三のスキルであり、最も意識すべき事なのかもしれない。

 

  • 11/3 18:00
  • サイゾー

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