狂った笑いを追求する男・ハリウッドザコシショウ「俺にとってお笑いの舞台は、動物園と同じ感覚」

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『あらびき団』で頭角を現し、2016年には『R-1ぐらんぷり』チャンピオン、そして今年は審査員まで務めたピン芸人・ハリウッドザコシショウ。20年以上も地下でくすぶりながら、己を貫き通せた理由、そして狂気の芸に込めた信念とは?異能の芸人の生きざまに迫る――

 あら削りな一芸を持ったパフォーマーを紹介する伝説のネタ番組『あらびき団』が、10月14日に約3年ぶりに復活した。世界のナベアツやどぶろっくなど、数多くのクセの強い芸人たちを輩出してきたが、そのなかでも“キング・オブ・あらびき”の称号を我が物にしているのがハリウッドザコシショウだ。その狂気の芸の奥底には何があるのか? 28年にわたる、これまでの激動の芸人人生に迫る!(取材は、放送日前の10月7日に実施)

◆“キング・オブ・あらびき”はもう返上でいいかな

――ザコシさんが表舞台に浮上する大きなきっかけとなったネタ番組『あらびき団』が復活しました。

ザコシ:もちろん恩返ししたい気持ちが一番。ただ、あらびき団はMCの東野さんと藤井君にいじってもらって成立する番組で、ネタをやるというより、いかにインパクトを残せるかが勝負。そういう点で、くすぶってる地下芸人にとっては名を売る絶好のチャンスだし、実際、俺もめちゃくちゃ世話になったけど、やっぱり芸人としてはちゃんとネタがしたいよね。だから、恩返しはするけど、“キング・オブ・あらびき”はもう返上でいいかな。

――あらびき芸はネタじゃない?

ザコシ:あらびき団のネタは、二人の掛け合いが始まるきっかけにすぎなくて、たとえクソつまらないネタでもイジって面白く仕上げてくれる。それを「二人が爆笑していたから」なんて勘違いして、ライブでまんま同じネタをやったら、当然バカ滑りよ。MCの二人はプロだけど、こっちは遊びの延長みたいなもんだから。完全に他人のふんどし。

最近の番組で近いのは、『有田ジェネレーション』なんかがまさにそうだな。いるんだよ若手で、「有田さんにハマった」「番組でハネたから売れた」って自分の実力を過大評価するヤツが。俺が「有田さんや小峠がイジってくれるから、笑いになっているだけだからな」と釘を刺しても、本人は有頂天で耳を貸さない。そんな調子だから、よその番組で同じネタをやってド派手に散る。そりゃあ、そうでしょうよ。地肩ができてないんだから。

まあ、これは俺も通ってきた道だし、だからこそあらびき団でハマっても「ネタが評価されたわけじゃない」と、自分を戒めることができるようになったんだけどね。失敗を経験していないと、知名度だけの“なんちゃって芸人”に陥りやすいんだよ。

◆99%まで仕上げて残りの1%が見える

――では、自分のネタが評価されたと実感したのは、いつ頃?

ザコシ:本当に認められたと実感したのは、2016年の「R―1ぐらんぷり」で優勝したときだな。それまでは、あらびき団で知名度が上がって、よその番組でも笑いが取れるようになってきて、エゴサーチでも「ザコシ、面白い」と評判も上々。芸人仲間から「やっと売れるやん」と言われるのに、なぜか次の仕事に繋がらない。

現場でどんなに爆笑をかっさらっても仕事が増えないし、生活もカツカツ。不思議なもんでさ。っていうのも、仮に100%で売れるとすると、99%までは努力でなんとかたどり着ける。で、天才と呼ばれる人たちは残りの1%を才能で超えられるけど、俺みたいな凡人はその1%が超えられない。

――凡人が残りの「1%」を超えるには、何が必要なんでしょう?

ザコシ:やっぱり「運」がデカいよ。2016年の「R-1ぐらんぷり」ではファーストステージで8本、ファイナルステージで6本、計14本の誇張モノマネをやったんだけど、これらのネタは、過去10年の単独ライブやYouTubeでやった数百本のネタから選りすぐりの上位14本。これを仮に2015年にやっていたら、まだ芸風が認知されきってない状態で、ウケも弱かっただろう。

じゃあ、2017年ならイケたかというと、アキラ100%がいたから難しい。当時のあいつの勢いはすさまじかったし、裸芸もかぶるし、もし2016年が準優勝で終わったとしたら、15位以下のネタしかストックがないわけだから、なおさら厳しい。というわけで、自分にとっては2016年が唯一の優勝のタイミングだった。そこを逃したら、不運と踊って、売れない求道者を続けていただろうし、そんな芸人はごまんといるから。

――M-1が休止している間に涙をのんだ芸人も多そうですね。

ザコシ:だろうね。でも、運をつかみ取れるかも芸人次第だし、俺なんか20年以上も地下でくすぶっていたわけだから(笑)。俺にとってR-1と同じくらい勝負の場になっている『ドキュメンタル』だって、シーズン5とシーズン7で優勝したけど、くっきーのいたシーズン4、ゆりやんのいたシーズン6だったら、芸風的に正直きつかったと思う。

◆面白くないは罪。狂暴な獣でありたい

――狂気や不条理といったイメージが強い芸風ですが、ネタにはどんなこだわりが?

ザコシ:俺にとってお笑いの舞台は、動物園と同じ感覚。普段は見られない、まともな人生送ってない“芸人”を見に行くんだ。じゃあ、どんな動物だったら見に行きたくなる?って話でさ。俺だったら、犬猫なんかはカネを払ってまでは別にいいかなってなる。

やっぱりタランチュラ、毒蛇、虎、ライオンみたいな、対峙したときに死を覚悟させる毒々しさ、凶暴さ、狂気を感じさせる生き物を間近で見たい。“おお、やっぱすげえな”って興奮もしたい。芸風もそのノリ。だから俺は誰にも媚びない、気が狂ったような笑いがめちゃくちゃ好きだし、追求していきたい。犬猫をかわいがるのと同じレベルでワーキャー言われて喜んでたら、そいつは芸人じゃない。

――あるバラエティ番組で「親分肌で相談役」「パワースポット的人物」と意外な一面が明らかになりました。舞台上の姿からはまったく想像できません。

ザコシ:俺の中にはハリウッドザコシショウと本名の中澤滋紀の2つの人格があってさ。どちらも自分なんだけど、オンのときはブレーキが壊れた制御不能な人格であるハリウッドザコシショウ。たまに街中でいきなり“殺すぞ!”って大声で叫びだすようなヤバいサラリーマンいるじゃない。

誰しもの奥底に眠っている狂気がむき出しになった状態っていうのかな。で、もうひとつ、これはオフの顔だけど中澤滋紀。彼は常識というブレーキを持ち合わせている。プロレス界のグレート・ムタと武藤敬司の関係性に近いと言えば、わかりやすいだろ。

◆芸人のやるモノマネは、どこか1%でも似ていればいい

――2つのキャラをどう使い分けているんですか?

ザコシ:基本はハリウッドザコシショウの一点突破だけど、たまにトーク番組で「もう少し落ち着いてしゃべろうよ」と突っ込まれたりすると、“いやいや、真面目に会話なんてできるわけないだろ!”って戸惑うこともある(笑)。そんなことして中澤が出てきたら、なんか手を抜いているみたいだし、ハリウッドザコシショウではなくなってしまう。

自分はハリウッドザコシショウであることで、危険な非日常を見せたい。モノマネだってそうだよ。その道のプロがやるモノマネと違って、芸人のやるモノマネは、どこか1%でも似ていればいい。残りの99%でいかに面白く、非日常を見せられるかが、芸人の腕の見せどころになってくる。完コピはそりゃすごいけど、それは驚きや感動を与えるもので、お笑いじゃないから。同じように「映画みたい」「小説みたい」なんてネタも、「じゃあ、映画でよくね?というか、映画に失礼じゃね?」って、俺なんかは思ってしまう。

◆「ハンマーカンマー」誕生秘話

――誇張モノマネの代表作の一つ「誇張しすぎた古畑任三郎」では、「ハンマーカンマー」という謎の言葉が繰り返されます。

ザコシ:G★MENSでコンビ活動しているときだから、今からもう20年以上前のことになるけど、ライブで大御所芸人に大喜利を寸評してもらうという企画をやったことがあって、俺の回答を受けてMCがチャンバラトリオの南方英二師匠に「どうでしょうか?」って振ったら、答えに悩んだ師匠がもごもごと何か言ったんだけど、よくわからない。で、そのライブのビデオをバヤシ(ケンドーコバヤシ)と一緒に見ていたとき、師匠が口ごもったところであいつが、「『ハンマーカンマー』言うとるでっ!」って大ウケしたのが原点かな。

――そこから古畑任三郎に、どう繫がっていったんですか?

ザコシ:まずは俺の中に「悩む=ハンマーカンマー」という図式がインプットされた。その後、2002年のコンビ解散後、しばらくしてライブで新ネタを披露することになったんだけど、前日になってもネタが浮かばない。そんなとき、田村正和の記者会見がテレビで流れていて、やけくそで古畑任三郎のモノマネをやってみたんだけど、普通にマネるのはお笑いじゃないし、なんかパンチも足りない。それを、その場に居合わせた後輩に相談したら、「古畑の悩む感じを出したらどうですか」って言葉にピンときた。時を経て、点と点が繫がり、方程式が成立した瞬間だよね。古畑、悩む、そしてハンマーカンマー。

――若き日のケンコバさんのひと言が伏線となっていたわけですね。

ザコシ:まあ、あいつも狂った獣だから。話芸の猛獣・ケンドーコバヤシか本能の野獣・ハリウッドザコシショウか。これからの芸は、ケンコバ派かザコシ派かで二極化して、血で血を洗う抗争になるだろうな。

――お二人の芸がすでに特殊なカテゴリーのような気がしますが……。

◆吉本に入ったときに壁にぶち当たった

――40歳を過ぎるまで20年以上も売れずに地下芸人としてくすぶっていた時期がありました。心が折れることはなかったんですか?

ザコシ:ないよ。だって、俺の同期のバヤシ、中川家、陣内(智則)といった天才たちが、「いつになったら売れるんだ」って励まし続けてくれていたから。特にバヤシは、若手のときからしょっちゅう俺の家に遊びに来てくれて。「大喜利なんて即興でイケるやろ」って余裕なあいつに、認めているからこそ“おもんないヤツ”と絶対思われたくないから、「ああ、せやな」って強がったりしてね。

で、本番でバカ滑りして「ネタ繰(く)っときゃよかった……でも、あいつが丸腰なら、こっちも繰るわけにはいかねえ」って自問自答したり。実はあいつも裏で繰ってたかもしれないけど、そこは意地だよね。ジュニアさんにも目をかけてもらって。当時はめちゃめちゃ怖かったけどね(笑)。

――ジャックナイフ時代ですよね。

ザコシ:でも、あんな尖ってる人に笑ってもらえるなんて、芸人にとってこれ以上ない自信になるよな。そんなこんなで刺激的すぎる日々だったから、よく「20年も売れなくて苦労しましたね」とか同情されても、毎日楽しくて、しんどいなんて思ったことはほとんどない。しんどいと言えば、吉本に入ったときに壁にぶち当たったときくらい。

――お笑いの壁ですか?

ザコシ:いや、言葉の壁よ。今でこそ千鳥とか岡山弁がウケてるけど、当時は「ネタは関西弁でやるもの」ってのがしきたり。一方、俺と相方の茶っぱは静岡弁が強すぎて、ネタ以前に客に受け入れてもらえない。これじゃあ芸にならないってことで、苦肉の策で、万国共通の“叫び”“喚(わめ)き”“発狂”でネタを構成することにした。そこからだね、大声で叫ぶ芸風になったのは。本当は正統派の漫才がやりたかったんだよ。

◆孤立しなかったから芸人で居続けられた

――では、引退を考えたことはまったくない?

ザコシ:喚き芸だけじゃ大阪では通用しなくて、吉本を辞めて上京。で、2002年にG★MENSを解散してピン芸人になったけど、天才じゃあるまいし、急にピンネタができるようになるわけでもない。当時所属していたナベプロからも三行半を突きつけられて、このときばかりは心が折れかけたというか、気持ちの落ち込みが半端なくて、“引退”の2文字がすーっと頭をよぎったかな。でも、同期や後輩の芸人が、電話やメールをしょっちゅうくれて。

――芸人にとって「芸人仲間」は、やはり大事なものですか?

ザコシ:それが一番と言ってもいいくらいだと俺は思う。俺もいろいろなオーディションや舞台に立ってきたけど、仲間がいない場所だと、芸歴が長くなればなるほど絡みづらくなって、孤立しやすい。そして当然、ウケづらい空気になる。だから、俺が今の事務所に居続ける大きな理由の一つとして、俺を慕ってくれる後輩たち=ハリウッド軍団の存在がめちゃめちゃ大きい。こいつらがいる世界といない世界を想像すると、いない世界はちょっと考えられない。

もし仕事が順風満帆でも、きっと人生は面白くないと思うよ。芸人の世界は先輩後輩の関係性が濃く映るかもしれないけど、それは体育会系というより、単純に仲間がいたほうが面白いってのがあるんだと思う。軍団ついでに言えば、たけしさんに憧れがあるから吉本を辞めた後、「たけし軍団」の門を叩こうかとも思ったんだよ。でも、あそここそ猛獣だらけだからな。ベビーフェイスがいてヒールや怪奇キャラが際立つわけで、たけし軍団では俺の狂気も日常になってしまうから、結局思いとどまったなんてこともあった。

◆刺激を与え合える仲間がいるってことは人生において大切なこと

――遅咲きと形容されることがあります。早咲きがいいとは一概に言えませんが、20代の自分に声をかけるとしたら、どんな言葉を?

ザコシ:先輩、同期のお笑いの天才たちが、俺の芸で腹を抱えてゲラゲラ笑っているんだから、これで売れないはずはない。そう信じ続けて、今がある。だから、どれだけ心が折れそうになっても、信念を貫いて全力で走り続けろってことかな。まあ、言わなくてもやり続けるだろうけど。あえてもう一つ挙げるなら、「バッファロー吾郎A師匠となだぎ武師範代の二人には、もっと絡んでおけよ」ってことかな。

二人とも“見て盗め”の職人気質の放任主義で、自分もシャイだから積極的に絡みにいかなかった。今思うと、もったいないことをしたよな。やっぱり若い頃は先輩や同期と濃い関係になっておいたほうがいい。悟りだコミュ障だっていうけど、刺激を与え合える仲間がいるってことは、芸人に限らず、人生において大切なことだと思うし、何より生きることが何倍にも面白くなると俺は実感しているからさ。

【Hollywood-Zakoshisyoh】
’74年、静岡県生まれ。ソニー・ミュージックアーティスツ所属。「ザコシの動画でポン!」に加えて、新しいYouTubeコンテンツ「ハリウッドザコシショウの地獄大連発チャンネル」を開設。AuDee「逆襲ザコシのチョゲチョゲPARK」(毎週金曜17時配信)

取材・文/谷口伸仁 構成/宮下浩純(本誌) 撮影/ティム・ギャロ ロケーション協力/劇場「BeachV(びーちぶ)」

※10/26発売の週刊SPA!のインタビュー連載『エッジな人々』より


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  • 11/3 8:52
  • 日刊SPA!

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