女子アナやミスコン系大好き。でも結局、身内に落ち着く慶應ボーイの恋愛事情

人間は「生まれながらに平等」である。

これは近代社会における、人権の根本的な考え方だ。

だが一方で”親ガチャ”が話題になっているように、人間は親や生まれる場所、育つ環境を選べない。

事実、親の年収が高いほど、子どもの学力が高いこともデータ(※)によって証明済みだ。

私たちは生きていくうえで、多くの「生まれながらに不平等」な場面に遭遇してしまう。

中流家庭出身の損保OL・若林楓(27)も、東京の婚活市場で、不平等さを数多く実感することに…。

(※)お茶の水女子大「保護者に対する調査の結果と学力等との関係の専門的な分析に関する調査研究」

生まれながらにして、圧倒的勝ち組の男


「ヤバッ、もう行かなきゃ…」

今日は、久しぶりのデートだ。ゆっくり準備をしていたら、気づけば家を出る時間になっていた。

全身鏡の前で、ブラウスのボウタイを結び直す。

一昨年の誕生日に元カレからもらったヴァンクリのピアスをつけてから、慌てて自分の部屋を飛び出した。



私は、今年で27歳になる。

埼玉出身で、父親は銀行員で母親は主婦という中流サラリーマン家庭に育ち、明治大学に入学。

卒業後は日系の大手損害保険会社に入り、現在は初台にある家賃8万5千円の家でひとり暮らし。綺麗でセキュリティは万全だけれど、狭い部屋だ。

これまでの平凡な人生に、特に不満はなかった。

だが「27歳までには結婚したいな」と思っていたのに、2年交際していた会社の先輩から、先日フラれてしまったのだ。

別れた後は死ぬほどツラかったけれど、私は決意した。「絶対に、彼より稼げる男と結婚する」と。

今夜のデート相手は、私より5歳上の裕二さん。食事会で出会った彼は、下から慶應のいわゆる“お坊ちゃま”で、父は大企業の社長。

現在は大手広告代理店に勤務している、育ちのいい完璧なエリート男性。

だが裕二さんとのデートで、私はあることに気づいてしまった。

“生まれながらの勝ち組”である彼らが生きる、限られた世界に。

人生楽勝なはずの裕二が、ポツポツと語ったこと

“無敵の慶應ボーイ”が使う、頻出ワード


裕二さんとのデートを楽しみにしていた私は、予定よりも少しだけ早く到着してしまった。仕方なく、ソワソワしながら店の前で待つ。

だがそんな私を裏切るかのように、約束の時間を少し過ぎたころ、ようやく彼からLINEが届いたのだ。

裕二:ごめん、10分くらい遅れるかも!


集合時間を過ぎてからの連絡に驚きつつも、先に入店する。スマホを見たり、手鏡でメイクをチェックしていると、ようやく裕二さんがやってきた。

「楓ちゃん久しぶりだね。ごめん、待った?」

今日は初デート。それに、こんなハイスペックな彼を逃したくない。

私は、ここで怒るのは得策ではないと考え、口角を上げるとニッコリ微笑んだ。

「いえ、全然!」
「そっか。先に飲んでてくれて良かったのに。何にする?」

そんな私のモヤモヤを微塵も感じとることなく、裕二さんは無邪気にメニューを見始めた。

「とりあえずビールでいい?」
「あ…。はい!」

こうして『カラペティ・バトゥバ』でのデートが始まった。


「普段はどんなお店に行かれるんですか?」
「うーん。知り合いの店が多いかな。家族では『中國飯店 六本木店』とか『キャンティ 飯倉片町本店』には、昔からよく行ってたけど…」

決して、恵まれた家庭環境を自慢しているわけではないのだろう。幼少期から、それがごく普通のことだったと思わせる、裕二さんの淡々とした口ぶり。

そんな彼の話を聞きながら、埼玉で暮らす親の顔がふと浮かぶ。

きっと私の両親は、東京の素敵なお店なんて知らないだろう。一生縁のない世界かもしれない。

そう思うと、急に胸がチクリと痛んだ。

幼少期から六本木の高級イタリアンにも通う慶應ボーイと、平凡な私。すでに圧倒的な差を見せつけられた気がして、悲しくなってきてしまう。

「楓ちゃんって、ミス系?」
「えっ。ミス、ですか?」
「そうそう。学生時代、そういうの出なかったの?」

― あぁ。ミスコンのことか。

「いや、私はそんな…」
「なんで?もったいない!こんな可愛いのに」

可愛い子=ミスコン出身。その法則が、彼の中にあるのだろうか。

下から慶應の、華やかな裕二さん。学生時代から、周囲にはキラキラと輝く女子が多かったのかもしれない。

「裕二さんって、普段はどういう方と遊んでいるんですか?」
「僕?そうだなぁ。男はほとんど幼稚舎から一緒のヤツで。女の子はアナウンサーとかモデルとかが多いかも。でも、普通の子ももちろんいるよ!」

― その“普通の子”の中に括られるのが私だよ…。正直、女子アナやモデルと同じ土俵に立てる気がしないなあ。

「慶應時代のメンバーと、ずっと一緒にいるんだよね。仲間内で結婚したり、付き合っている人も多いし」
「それは楽しそうですね…」
「そういうのが一番落ち着くんだ。忖度もないし、似たような価値観を持ってるし」

結局人は同じような幼少期を過ごし、同じような環境で育ってきた人と結婚するのだ。そんな彼らの結婚相手として、外部の人間が入り込む隙はないような気がする。

こうして戦意を喪失しかけていた私は、あることに気がついた。

裕二さんの会話に「幼稚舎」もしくは「慶應」というワードが、頻繁に出てきたことに。

デートをしていくなかで出身地や大学の話になることはあるが、そもそも小学校の話になんてならないし、小学校の名前を聞くことも少ない。

だが必ずどこかに、それらのワードを入れてくるのは、彼らの特徴なのかもしれない…。

学生時代が最盛期!?慶應に潜む、静かなる序列とは

父親は大企業の社長だけど…。


「楓ちゃんは、何の仕事をしてるんだっけ?」
「私は損保のエリア総合職です。裕二さんは、代理店でしたよね?」
「そうそう。よく覚えてたね」

そう言って微笑む裕二さん。彼の体型にピッタリ合っていて、シワひとつない綺麗なシャツは、オーダーメイドなのかもしれない。

「楓ちゃんは、どこ出身なの?」
「私ですか?埼玉です…」

ただ地名を言うだけなのに、田舎者と思われる気がして(別に埼玉は田舎ではないけれど)少しだけ恥ずかしくなる。

「へぇ、埼玉なんだ!」

しかし裕二さんは、バカにすることもなくリアクションしてくれたのだ。…ただその反応があっさりしすぎていたので、私に興味がないだけなのかとも思ってしまったのだが。


「裕二さんは?」
「出身は文京区だよ。でも今は引っ越して、実家は六本木一丁目にあるんだ」
「え!?ご実家が、ですか?」

― 泉ガーデンあたりかな…。

そんな推測をしていると、お酒が進んできたからだろうか。裕二さんがいきなり、ペラペラと語りだした。

「同族経営の会社をやってる奴のクラスと、医者や弁護士のクラス。あとは僕みたいに、親が世襲制じゃない会社の社長をしてるとか、芸能系の親を持つその他のクラス」

その言葉で、なぜ親が大企業の社長であるにもかかわらず、彼が大手広告代理店で働いているのかが分かってしまった。

継ぐことはないから、会社員をしているのだ。

そして裕二さんはグラスのワインを飲み干すと、こう続けた。

「見えないところで、微妙な差があったんだよね」
「…でも私からすると、幼稚舎出身というだけですごいなぁと思いますけど」

結局この後も、仕事に関する話題を振っても、なぜだかすぐ学生時代の話に戻ってしまった。

「今日は楽しかったなぁ。次はいつにする?」

気づけば、完全に彼のペースに巻き込まれていた。けれども、何となくこの先は見えている。

交際まで進んだとしても、結婚となると家柄の問題などが出てくるのだろう。

― 私には、ちょっとプレッシャーだわ。

こうして、私は勝手に自爆したのだ。だが裕二さんは最高にポジティブで、その後何度も連絡をくれた。

「やっぱり幼少期から特別な男性って、拒否されるっていう感覚がないのかな…?」

そう思いながら、私は裕二さんとのデートを振り返ってみた。



ずっと明るい人生を送ってきたはずの彼。

お金をかけて大事に育てられてきた過去は、自信として積み重なっていく。そしてあるとき、気づくのかもしれない。

自分は選ばれた人間である、と。

その後も同じように“選ばれた”側の、幼稚舎上がりの友人に囲まれて幸せに過ごす。

そんな、狭い人間関係の中で生きてきた彼ら。どれだけモテて華やかな女性陣が群がってきても、きっと最後に選ぶのは“同じような環境で育ってきた相手”だと思う。

愛する“慶應”の女性を、仲間として特別視するから。

「華やかそうな人生に見えるけど…」

過去の思い出にすがり、現状に不満を抱えていそうな裕二さん。そんな彼を見ていると、何のしがらみもない、平凡な自分の人生がちょっぴり平和にも思えてくる。

“選ばれた側”の男性に、選ばれてみたいという願望もある。でも私は現状を悲観しすぎず、これから始まる婚活続きの日々を乗り越えようと、決めたのだった。


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