キャバ嬢たちの“キャバクラ離れ”が進行中。時短解除も「店に女の子がいない」

 10月25日、東京と大阪で11カ月ぶりに飲食店の営業時間短縮要請が全面解除された。飲食店のネット予約も増加し、コロナ流行前とほぼ同じ水準に回復したといわれている。

 第6波を懸念する声もありつつも夜の街に人出が戻りゆく中、「街に人が戻っても、お客さんをほとんど入れられません……」と、頭を抱えるのは大阪のキャバクラ店だ。時短要請の解除以降、多くの若者が往来する大阪梅田で夜の店に客が戻らない理由を聞いてみた。

◆リモートワークがなくなり出勤するキャバ嬢が激減

 大阪梅田のキャバクラ店に勤務する黒服の男性は、宣言明けの“リバウンド人手不足”に頭を悩ませる。

「時短制限の解除後からは、街にだいぶ人は戻ってきました。うちにも新規のお客さんが来るようになったのですが、女の子のキャストが出勤していないのでお客さんを入れられないんです。なぜ、キャストが出勤しないのかというと、リモートワークが終わって通勤が再開されたから。

 翌朝早いので、平日の夜ははなるべく出勤したくないというキャストが増えたんです。現在、平日の出勤はわずか3人ほど。お客さんが2、3人入ったら回らなくなります。席数は20席近くあるのに他の客を入れられないので、解除されたと思えないほど店内はガランとしていますね……」

◆客が来ても入店を断るほどのキャバ嬢不足

 男性いわく、女の子が少ないので客が来ても入店させることができないという。契約している無料案内所も再開されたが、客の案内も一時的に止めていると話す。また、別の昼キャバクラに勤務する黒服の男性からはこんな悲痛な叫びが聞かれた。

「うちは20代前半の、それも大学生のキャストがほとんどです。東京は都心に大学がたくさんあるイメージですが、大阪は市内に大学があまりないんです。そのため、京都か神戸方面の大学に通う子がほとんどです。

 つい先日まで、リモート授業で他に遊びに行くところもないからと出勤してくれる子も多かったです。でも、授業が再開されてからは店に来るのに遠いからと、まったく出勤してくれなくなりました。

 それどころか、時短が解除されて大学の友達と飲みに行きたいからと休む子も……。また、アルバイトが普通にできるようになったから退店する子もいます。時短中は他に開いている店がなかったから、一時的に働きに来ていたキャストが一気にいなくなりましたね」

 男性は現在、唯一残った3名のレギュラーキャストで店を回転させているという。

 しかし、キャストの指名が被ったときやキャパオーバーになったときは黒服業務の傍ら、客席で接客することもあるという。中にはキャバ嬢がつかないと文句を言う客もいるそうで、「正直、予約営業にしようか悩んでいる」とため息をついた。

◆掛け持ちでフル回転するキャストと時短営業が明けても早く帰ってしまう客

 大阪の夜の店は深刻な人手不足に苦しんでいる。それは元々、働いていたキャストにも影響しているようだ。現在、3店のキャバクラやスナックを掛け持ちしている女性に話を聞いた。

「前は北新地のラウンジで働いていたのですが、コロナ禍でお客さんがほぼ来なくなってしまったんです。北新地は経費で飲みに来る人が9割だったのですが、コロナ禍で飲み会が自粛されて経費が落ちなくなったんです。

 店が暇になったので、私も出勤制限をされてシフトは週3日から週1日に減らされました。収入が大幅に減って途方に暮れているときに、知り合いのスナックのママに声を掛けてもらいました。

 そこのスナックで働かせてもらえることになったのですが、しばらくするとアルコールの提供ができなくなってスナックも休業になってしまったんです」

 その後、女性は時短中でもアルコールを提供せず営業している別のスナックから声を掛けてもらい、どうにか生活はできたという。そして全面解除された25日、元々働いていた北新地の店に出勤できることになったのだが……。

「スナックのほうのキャストが、出社や通学を理由に出勤しなくなってしまったんです。そこで、私に出勤してほしいと頼まれたのですが、2店とも困ったときに助けてもらったので断るわけにも行かず……。今は3つの店をローテーションで出勤しています。

 でも、どこも女の子がいないのでお客さんが全然来ないんですよ。それに、お客さんも20時には帰る生活に慣れてしまったようで遅くまで飲まないんですよね。出勤して最初の1、2時間はお客さんが入っても22時前には『もう、眠いから帰るね』と言われます。

 長かった時短営業はお客さんの生活リズムを変えてしまったようですね……」

◆休業中に“転職”したキャストたち

 だが、店を開けられるだけまだマシなのかもしれない。筆者の知っているスナックでは長い間、休業を続けていたのでキャストが他のアルバイトを始めたという。そのため、営業が再開されてもキャストがほとんど出勤ができず時短解除された今でも週に3回ほどしか店を開けられないとママは嘆く。

 時短営業は全面解除されたものの、夜の店が元に戻るのにはしばらく時間がかかるのかもしれない。水商売は特に人員の確保が難しい。もっとも客が入る年末になる頃には、どうなっているのだろうか。

写真・文/カワノアユミ

【カワノアユミ】

東京都出身。20代を歌舞伎町で過ごす、元キャバ嬢ライター。裏モノ・夜ネタを主に執筆。アジアの日本人キャバクラに潜入就職した著書『底辺キャバ嬢、アジアでナンバー1になる』(イーストプレス)が発売中。ツイッターアカウントは @ayumikawano

2021/11/1 15:52

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