筒美京平のハロプロ曲のレア度にモノ投資のプロが惹かれるワケ

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

 腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は普段から、マニアックなモノに目を光らせているのですが、そういったモノの中で「良い要素」を持つものが、いずれ注目されるという現象があります。

 そして、そういった原石を発見することによって、高くなる前に買うということができるわけです。実際私は、今1000万円以上するパテックフィリップ ノーチラス(腕時計)を90万円ぐらいのときに購入したり、1万円で買ったウイスキーを25万円で売却したりしています。

 そんなマニアック眼力を持つ私が、今回お伝えしたいと思うのは、腕時計でもウイスキーでもなく、アイドル曲です。今回お伝えするのは、そんなアイドルの中でも、ハロプロの曲であります。

◆ベテランが提供するハロプロ曲も

 ハロプロといえば、つんく♂プロデュースというイメージがありますが、実はベテランも曲を提供していたりします。特に、三浦徳子作詞作品が多いのですが、三浦徳子といえば、松田聖子の「夏の扉」が非常に有名です。

 ここからは、少々私の個人的な持論になってしまうのですが、80年代アイドルと、平成アイドルとの間には、分断された歴史があるように感じるのです。そのため、80年代アイドル文化と平成以降のアイドル文化が、どこかでつながっているというのはとても面白いと感じる次第です。なぜ、80年代アイドルと平成アイドルとの間に、分断された文化のようなモノがあると感じるかというと、それは、平成初期にアイドルが不在だったからだと思います。平成初期という時代は、「昭和=古くさい」とされ、そういった古いものからの脱却というのが1つのテーマだったと思います。

◆レア度が高い楽曲は?

 実際、平成のヒット曲は、それまでの歌謡曲から打って変わって、小室ファミリーといった激しい曲が中心になります。そして、いわゆる「アイドル」として売り出されている女性タレントは存在せず、もっともそれに近いといえたのが、SPEEDだったといえるでしょう。

 そして、モーニング娘。の登場から、後藤真希の加入後、1999年になって、ようやく「アイドル」が、平成時代に再び登場したといえるでしょう。その後は、AKBなどが登場し、「アイドル戦国時代」といわれるようになるわけです。ですから、80年代以前と、モーニング娘。以降との間には、同じ「アイドル」でも文化の差があると思うのです。

 実際、楽曲提供者も、80年代と2000年以降とでは異なります。特に80年代において既に「ベテラン」といった年齢だった、松本隆や筒美京平といった方々の提供曲は、モー娘。以降のアイドルに多くありません。そのため、80年代アイドルの名曲で知られる方々が作った、2000年代以降のアイドル曲、というのが、なんとも「レア感」が高いと思うのです。

◆筒美京平提供のハロプロ曲があった

 そして、その中でも、最も「レア感」が満載と感じられるのが、筒美京平作曲のハロプロ曲であります。ハロプロといえば、まさにモーニング娘。を筆頭とするアイドル集団。「つんくプロデュース」というイメージがありますが、実は筒美京平の提供曲が、2曲だけ存在するのです。

 

 それが、Buono!の「星の羊たち」と「紅茶の美味しい店」です。

 

 Buono!のメンバーは、嗣永桃子、夏焼雅、鈴木愛理。あのももちがリーダーを務めるグループです。いずれのメンバーも10代のときに、筒美京平提供曲をもらっています。

 そして、興味深いのは、作詞が橋本淳という点です。作詞・橋本淳、作曲・筒美京平のコンビの大ヒット曲といえば、「ブルー・ライト・ヨコハマ」でありますが、これは80年代アイドル以前の、いわゆる歌謡曲。ですから、これら2曲は、昭和に活躍した大ベテランが、平成生まれ世代向けに作ったという珍しい組み合わせ。映画で例えるなら、『増村保造監督、白坂依志夫脚本で、現代のアイドル主演映画を撮った』てな感じでしょう。ちなみに、80年代アイドルといえば角川映画がありますが、薬師丸ひろ子主演の名作「Wの悲劇」で知られる澤井信一郎監督の作品にも、嗣永桃子と夏焼雅は出演。「仔犬ダンの物語」がそれです。

◆2曲とも可愛らしい楽曲

 では、橋本淳作詞、筒美京平作曲の2曲はどんな感じかというと、2曲とも可愛らしい曲であります。2曲とも、「昭和ノスタルジー」を狙った曲というわけではなく、アルバムの中に収録される曲としてひっそりと存在。実は、それが橋本淳&筒美京平コンビによる提供曲というのが面白いのです。もちろん、かつての名曲のカバーというわけではなく、Buono!の曲であります。

「星の羊たち」は、2008年にリリースされたBuono!の1stアルバム「Café Buono!」に収録。非常に幻想的な曲で、「星の羊たちが 草を噛んでいるわ」という歌詞が印象的です。

「紅茶の美味しい店」は、2010年にリリースされた3rdアルバム「We are Buono!」に収録されています。「角を曲がったお店は 紅茶が美味しいの」という歌詞を書いたとき、おそらく橋本淳は70歳だと思われます。このとき、嗣永桃子と夏焼雅は17歳、鈴木愛理が15歳だったことを考えると、おじいちゃんと孫ぐらい年が離れているのが面白いといえます。

 ちなみに、私は橋本淳作品では、ザ・ピーナッツの「大阪の女」が好きなのですが、あの渋い歌詞を30歳ぐらいで書いた方が、70歳で「紅茶が美味しいの 時間も止まる」という歌詞を書いてしまうのが、ツボであります。

◆CDは現在、廃盤に

 今回紹介した2曲はとても素敵なのですが、これらが入ったBuono!のアルバムは、既に廃盤となってしまっている模様です。

 また、中古品もプレミアム価格というわけではなく、現在のAmazon価格だと、「Café Buono!」(星の羊たち収録)が、350円程度(送料込)、「We are Buono!」が600円程度(送料込)となっています。ちなみに、CDの場合、「安かった中古CDが、後に結構な上昇」という現象はあまり多くないといえますが、一部「高い相場」となっているモノも存在。例えば、酒匂ミユキの「Man」などがそれに該当します。

 私が酒匂ミユキを知ったきっかけは、リリー・フランキーのラジオ「TR2 Wednesday」ですが、その当時買ったCD(定価2000円)が、現在Amazonで5000円以上することに驚いています。酒匂ミユキのCDは、おそらく、評価が後に高くなったゆえに値上がりしたのではと推測できますが、そうであるならば、今回紹介したBuono!のCDも、数千円単位ぐらいまで評価されても不思議でないと思います。

 いずれのアルバムも、これら2曲以外にも良い曲が入っているため、中古CDを購入されてみてはいかがでしょうか。

<文/斉藤由貴生>

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】

1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

2021/10/31 15:51

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