Uber配達員が語る“クエスト”の中毒性「心はハイでも体は廃人」

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「Uber Eats」配達員をしながら車載カメラでコロナ禍の東京を描いたセルフドキュメント映画『東京自転車節』が好評だ。それを記念し、監督の青柳拓氏にインタビューを敢行。前回は映画の撮影秘話や見どころについてたっぷり語ってもらったが、後編となる今回のテーマは、「深淵なるUber Eatsの世界」。社会問題となったUber Eatsの様々な問題を次々と指摘する青柳氏。しかし、その一方「中毒的な魅力もある」と語る。普段あまり語られることのない、Uber Eats配達員の真実、そして悲哀とは?

◆Uber Eatsに言いたいのは、人扱いしてくれ

――「Uber Eats」といえば労働条件でも問題が指摘されています。登録する配達員は基本的に個人事業主。そのため'19年9月までは配達員が事故を起こした場合も、Uber本社から労災などが対人・対物をのぞき保証が一切出ませんでした。また報酬の不透明さも叫ばれたりしています。

青柳 僕が配達員を始めたのは'20年4月からだったので、すでに労災はありました。でも、それも長期入院でもしてしまったら全然まかなえないような額のものですし。今は配達員が個人で入る保険ができましたが、それだってお金がない人は入れない。まだまだ保証面に関しては手薄。また、保険や支払いシステムもグレーな部分が多く、配達員側から見て「よくわからない」状態にしてあるのが一番よくないと思います。

――たとえば、タピオカドリンクを1個運ぶ途中で死ぬリスクを抱えて配達している。それなのに個人事業主という名の搾取をされる。そういった「Uber Eats」のシステムに思うところは?


青柳 運営側からは、僕らは“配達パートナー”と呼ばれてるんです。でもパートナーと呼ばれるほど、人扱いはされてないなあと(笑)。最初、「報酬の不透明さが問題」と仰いましたが、まさにそうで。以前の運んだ時間、距離など、報酬設定の理由を明確に表示してくれました。でも、今年の5月に“改悪”され、『配達調整金』という大きなくくりで報酬金額が出されるだけで、「なぜその値段になるのか」についての説明が一切ない。システムの都合で僕らは振り回されてるなあと思ってはいましたが、今回の新料金システムの件でそれがよりハッキリしましたね。だからマジで「人扱いしてくれ」って思います。今のままだったら、続けていい仕事じゃないです。

◆とにかく自由。それが「Uber」最大の魅力。もう他の仕事なんかできません

――サステナブルじゃないと。

青柳 無理です。他人にお勧めできる仕事ではないです。でもUberって、“飴と鞭”を本当に上手く使い分ける。クエストというアメをくれたり、まあ基本ムチ多めなんですけど(笑)。

――クエストとは?

青柳 3日間で70件配達するとインセンティブが入るという、Uber Eatsが作ったゲーム的なものです。あと一軒届ければクエスト達成して報酬が増えるぞ!という中毒的な魅力があります。

――システムへの不満もあるが、それ以上の魅力もあるわけですね?

青柳 はい、やっぱり自由にできるところですね、そこに尽きます。いつでもどこでも、どのタイミングでも働ける。隙間時間で配達できる。雨が降ってきて「休みたいな~」と思えば、すぐに引き上げられる。この自由さは今までにないし、これを知っちゃうとUber Eats以外の仕事はちょっとできまない。フツーのアルバイトには、もう戻れないぐらい中毒性があると思う。例え普通のバイトを与えられたとしても「その間にUberさせてよー!」って。

――「人扱いしてくれ」と言いながらも、Uber Eats大好きじゃないですか(笑)。さきほど監督が「Uberは飴と鞭がえぐい」と仰いましたが、その魅力もUber側が敢えて仕組んでいるもの?

青柳 そうだと思います。先ほど言った『クエスト』というのも、ゲーム性が凄く高いですし。「Uber Eats」のアプリ開いて、出発ボタンをポンと押したら始まるスマホゲーム、みたいな。

――やさしい『カイジ』じゃないですか(笑)。

青柳 それで配達が1件完了するごとに、チャリーンってお金が入る音が鳴るんですよ。だから“やった感”がハンパなくて、じゃあもう1件、もう2件と止まらなくなる。もうそれが楽しい。

――地獄みたいな話ですね。

青柳 (笑)。それで「俺は〇件もやったんだ!」という達成感がヤバイんです。まさにリアルゲーム。スマホのマップと現実のビル群を交互に見ながら配達していくんですけど、どちらが現実でどちらが虚構なのか、よくわからなくなってくる。

◆システムに踊らされてるんじゃない。俺は自覚的に踊ってるんだ。

――それはヤバイですね。でもヤバイシステムだとわかっていても、やめられない?

青柳 もう受け入れるしかない。そう言われても「じゃあ他のどの仕事なら稼げるの?」って思っちゃうんですよ。そのぐらいUberの「いつでも、どこでも」という身軽さには、どんな理屈も敵わないというか。頑張って週に10万円稼いだこともありますから。

――でもクエスト達成するには、3日間で70件も配達しなければいけない。体はもうズタボロじゃないですか?

青柳 でも「あと2件でインセンティブ!」ってアプリに言われたら、頑張れるじゃないですか。当然、その時点で疲れ果てているんですが、「俺の体は壊れてもいいから、あと2件!」って、凄くハイになれて。心はハイでも、体は廃人なんですけどね(笑)。インセンティブはもちろん嬉しいんですが、クエストというゲームをクリアする快感のほうが大きいですね。

――そのインセンティブはいくら?

青柳 1万5千円です。

――体がズタボロになる代償が、たかが1万5千円。でもそれがゲーム性を帯びてるとは本当に怖いシステムですね(笑)。

青柳 中毒ですよ(笑)。保険や保証に関して戦ってくれているウーバーイーツ・ユニオンという団体があるんですが、そこにはなかなか人が集まってなくて。むしろ、「ユニオンのヤツら、何勝手に言ってるんだ。そんなこと言ってたら、雇用化の流れが進んじゃうじゃねえか」とか、「服装自由とかクエストとかUberの面白さがなくなっちゃうじゃねえか」っていう声が配達員側から出てるんですよ。

――当の配達員たちが「このままでいさせてくれよ!」って(笑)。

青柳 そうなんですよ。「自己責任でいいじゃねえか!」「それよりも俺たちに自由を!」って。そういった意見に共感してしまう自分もいますが、それでも絶対に保険や保証はされるべきだと思っています。

――映画のなかで「青柳君ははっきり言って貧困層だよ」と言われても、監督は「でも、やるんだよ」的な言葉で返したじゃないですか。本当にそうだなって思いました。

青柳 自分たちは使い捨てだというのもわかってるし、だからこそ状況を変えなきゃいけないと思うんです。でも、どうしたらいいかわからない。とりあえず稼がないといけない。僕は映画のなかでクエストをクリアすることを「掌握する」と表現しました。「Uber Eats」のクエストというシステムに踊らされてるだけかもしれないけど、少なくとも僕は自覚的に踊ったつもりです。

――それゆえの「掌握」という表現だったと。ちなみに、配達員はまだやってるんですか?

青柳 はい、今もやってます。映画の宣伝ラッピングを作ったのでそれを「Uber Eats」のバッグに巻いて宣伝しながら配達してます。特に歌舞伎町方面で配達やってるので、見かけたら声かけてください! そして映画『東京自転車節』、ぜひご覧ください!!

取材・文/村橋ゴロー

■『東京自転車節』
2020年3月。青柳監督は代行運転で生計を立てていたが、コロナ禍で仕事がなくなってしまう。そんなときプロデューサーから自転車配達員の仕事を撮ってみないかと声がかかる。しかし、仕事の現場は感染者数が日に日に増えていた緊急事態宣言下の東京。感染しないようにとおばあちゃんが縫ってくれたマスクをして、外出自粛で人がいない街を駆け抜ける。半径2メートルの配達員視点にあって、東京の真の姿までもが浮き彫りになる路上労働ドキュメンタリー。

制作年:2021
監督:青柳拓
2021年7月10日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開


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