湘南をベースに「スケーターの多様な生き方を見せる」高校生スケーター社長・坂本倭京の挑戦

スケートボードやサーフィンなど、湘南独自の色を持つカルチャーを全国に発信する、高校生社長がいる。

坂本倭京(わきょう)16歳。彼自身も世界で活躍するプロスケーターを目指す、湘南スケーターの一人だ。

倭京は高校生ながらも、今年(2021年)4月に合同会社ファーズを立ち上げ、現在はwearestar(ウィーアースター)というWEBサイトで、湘南人のインタビュー記事の掲載や、店舗の紹介など、湘南を全国へアピールする活動を行っている。

そんな坂本倭京が考える、会社経営とプロスケーターへの道の関係性を探ってみた。

坂本倭京プロフィール

【スポンサー】

ムラサキスポーツ湘南藤沢オーパ店/ninja bearing/soucebolts

【コンテスト成績】

JSF Skateboard Contest in Niigata [オープンクラス優勝]2016

ムラサキスポーツ湘南オープン [ファイナルリスト]2016

MJSL skatecircuit Aクラス [年間総合グランドチャンピオン]2016

element make it count 2017 第3戦in宮城 [under13 優勝]

element make it count 2017 JAPAN FINALS in 千葉柏 出場

ムラサキスポーツ湘南オープン[ファイナルリスト]2017

AJSA全日本アマチュアスケートボード選手権2017〜2019 出場

スケーターとしての多様な生き方を見せる事が出来る

倭京が高校生社長になったきっかけは、スケートボードだった。

海外の一流プロスケーターを目指す、16歳の高校生が“サポートしてくれているスポンサーに今出来る事、そしてプロスケーターを目指す自分に足りないものは何か”と考えた末にたどり着いた答えだった。

「最近だと阿部直央君が、スケートボードデッキのリサイクルを世の中に提案していたりと、いろんなスケーターが活躍している中で、自分にもスケーターとしての多様な生き方を見せる事が出来ると思い、自分の会社を作って地元湘南をアピールしつつ、スケートボードでも結果を出す事が出来れば、今自分をスケートボードの面でサポートしてくれているスポンサーに、スケーターとして以外にも、いろんな形での恩返しが出来るのではと考えました」と倭京は話す。

幼い頃から「好きな事は全力でやれ」という親の応援もあり、今年(2021年)2月頃から起業に向けての手続きを毎日コツコツと進めて行き、同年4月には法人を立ち上げ、合同会社ファーズを設立。

ここから高校生スケーター社長としての挑戦がスタートした。

湘南で育った自分だからこそ出来る仕事

湘南は全国的にも有名でブランド力も強いが、他にも周りに知られていない魅力がある。

スケーターやサーファーの他にも、スノーボーダーやモデルがたくさんいるにも関わらず、各々のカテゴリーを繋げるハブが無かった事に目をつけた倭京は「自分がその役目を担いたいと思った」と話す。

会社を立ち上げると言っても、当然ながら右も左もわからず、どうしたら会社を立ち上げられるのかを調べ回った。学業の傍ら、毎日書類作りに没頭し、自転車で書類を提出しにいくという作業に追われた。

会社を作るにあたって倭京が個人ではなく、法人を立ち上げた理由は簡単。

「法人の方が響きがカッコいいから」

これも、現代の高校生スケーターならではの発想なのかもしれない。

会社設立後、同年9月にWEBサイト“wearestar(ウィーアースター)”を公開。

スケーターやサーファー、スノーボーダーなど、湘南を彩る様々なキーマンへのインタビュー記事や、スケート動画の紹介などをはじめ、今後はオンラインショップにも力を入れて行くという。

「wearestarの強みは、スケート・サーフ・スノーのカルチャーを軸に展開しているので、ストリートカルチャーが好きな人が集まるという所。ストリートファッションに強いモデルや、ストリートカルチャーに強いクリエイターにとってwearestarは自分をアピールする場所になると同時に、お互いが求めている人や物を見つけやすい場所にもなる。これは、湘南でサーフィンやスケートを通して育ってきた自分だからこそ、出来る仕事だと思ったんです。きっかけは湘南ですが、湘南から全国に広げていき、ゆくゆくはストリートカルチャーを大事に生きている人達を繋げられる会社にしたいですね」と倭京は語る。

会社としての収益はまだまだだが、今後は音楽にも力を入れていく計画を立てている。

「良い動きをしているアーティストをピックアップし、所属レーベルから正式に使用許可を受けた楽曲だけを使ってwearestarでspotifyなどの音楽ストリーミングサービスを利用した、DJミックスアルバムを出す計画が進んでおりspotifyで楽曲リストを10月29日に先行公開予定しています。

参加アーティストには[GARDEN]のヒットで知られるSugar Soul様をはじめ、R&BディーバJasmine様や、今後が注目のFurui Riho様、湘南出身のASOBOiSM様などのDJミックスアルバムへの参加が決定していて、今ようやく制作に入れるかなといったところです。これをやっている所はどこも無かったので、実現出来たらもっといろんな人がwearestarに集まってきてもらえると考えています」

”誰もやっていない事をやる”倭京の挑戦は続く。

5歳から変わらぬ「本物のREALになりたい」という思い

倭京のスケート人生が始まったのは、わずか3歳の時。父親のスケートボードに乗り始めたのがきっかけだった。そこから「プロスケーターになりたい」という夢を抱き始めるのに、時間はかからなかった。

きっかけは、5歳の時に初めて買ってもらったスケートデッキについてきた、おまけのDVD。

「初めて買ってもらったスケートデッキがREAL SKATEBOARDS(数々のレジェンドスケーターを輩出している本場アメリカの老舗スケートボードチーム)だったんですけど、デッキのおまけに付いてきたDVDに映っていたREALのプロライダー達の滑りが、今でも忘れられないんです」

初めて見たプロスケーターの滑りに魅了され“この人達と一緒に滑りたい、そして自分もREAL SKATEBOARDSのライダーになりたい”と思うようになった。幼い少年は、REALのライダーになる事を夢見るようになる。

その後、小学4年から本格的にスケートボードの大会に参戦するようになる。

小学6年の時には、自身のフルパート(その時点での自分の最高の滑りを収めた映像で、スケーターにとっては名刺代わりのような物)をYouTubeで公開し、夢に向かって邁進する。

「スケートボードはあくまで遊び」と考える周りのスケーター達にとって、大会に参戦し続ける倭京は、当時は少し浮いた存在だったかもしれないが、幼い頃から頑なにREALのデッキに乗り続ける倭京を見てきた、湘南のスケーター達は“倭京と言えばREAL”のイメージが付くほど、彼のプロスケーターへの思いを応援している。

REAL SKATEBOARDSの日本の代理店を通して、サポートを受ける日本人ライダーはこれまでにもいたが、本場アメリカのREAL SKATEBOARDSから、正式にサポートされている日本人は未だ一人もいない。

3歳からスケートボードに乗り続ける倭京にとって、人生の一部となっているスケートボード。それ故に、高いハードルなのは自分でもわかっている。

それでも「本物のREALになりたい」という思いは今も変わらない。

今やっている事は間違っていない

現在、通信制のN高等学校に通う倭京は、午前中に会社業務や授業をこなし、午後はスケートボードの時間にあてている。

“日本トップのスケーターとなり、世界からも認められるREAL SKATEBOARDSのライダーになる”

その為に今、必要な事は何だと思う?と聞くと、こんな答えが返ってきた。

「今やっている事は間違っていないと思うので、あとは行動。海外に行くのはもちろんの事、自分からどんどん動いて行き、いろんな人と繋がって刺激をもらいたいです。スケートボードは繋がりが大事だと思うので」

高校生スケーター社長の挑戦はまだ始まったばかりだが、いつか彼のシグネチャーデッキ(プロスケーターの証)がスケートショップに並ぶ日が、今から待ち遠しい。

【坂本倭京 Instagram】

https://www.instagram.com/wakyo13/?hl=ja

【wearestar Instagram】

https://www.instagram.com/wearestar.jp/

【wearestar】

https://wearestar.jp/

wearestarマーケット出店希望の方はこちらから→https://wearestar.jp/shop-app/

変わりゆくスケーターの価値観

東京五輪で話題になった事もあり、日本のスケートシーンも大きな変革の時期を迎えている。

倭京のようなスケーターによる新しい挑戦は、今後の日本のスケートボードシーンにも新たな価値観を生む事になるだろうし、スケートボードが世間からいまだに持たれているある種の偏見も、もしかしたら変わってくるかもしれない。

彼の挑戦は始まったばかりだが、これからどんな動きを見せ、どんなスケーターに成長していくのか。

いろんな世界を巻き込み、変化していく、高校生スケーター社長のこれからが楽しみだ。

 

取材・写真・文 小嶋勝美 Twitter: @katsumikojima1

スケートボードを趣味としており、ライターとしてスケートボード関連の記事を執筆。

約10年間芸人として活動後、現在は放送作家として活動中。

2021/10/27 12:00

こちらも注目

新着記事

人気画像ランキング

※記事の無断転載を禁じます