泣くほどキモいお見合い。おっさんのセクハラ発言連発に、絶句した
「もちづきさん、聞いてください!」
8月末のとある残暑の日のこと。わたくし・ライターもちづきのところに、関西に住む趣味仲間から、凄い剣幕で電話がありました。
彼女の名前は杏子ちゃん(仮名)。年齢は20歳と若いのですが、福祉関係の会社で働いてもう2年になるしっかりした社会人の女の子です。今年の始めにSNSを通じて知り合ったのですが、すでに趣味の範囲に留まらずプライベートの深い話までできる仲。母娘でもおかしくない年齢差でありながら、非常に良い友人関係を築いています。
そんな杏子ちゃんからの突然の連絡に私はビックリしつつも、普段は深夜にしかやりとりしない彼女が真昼間に、しかもLINEメッセージではなく通話を希望してきたことに、ただ事ではない空気を感じていました。
◆職場の先輩社員が、お見合いを勝手にセッティング
彼女の話はこうでした。
杏子ちゃんには、現在彼氏がいません。特に不自由さも寂しさも感じてはいないそうなのですが、ある日の会社の休み時間に社員たちとの恋愛トークに合わせる感じで、「彼氏そろそろ作りたいですね~」とポロリと洩らしたそうです。
するとその場で杏子ちゃんの呟きを聞いていたらしい先輩社員のAさんが、数日後にとんでもないことを言い出しました。
「私の知人に杏子ちゃんの写真を見せたら気に入ってくれたから、今度ご飯食べてきなよ!」
なんと、杏子ちゃんは先輩命令に近い形で半強制的に知らない男性とのお見合いをセッティングされてしまったのです!
「年上」という曖昧かつ最小限の情報を与えられただけの杏子ちゃんが、Aさんの指定した待ち合わせ場所に出かけると、そこには40代半ばくらいの太り気味なおっさんが佇んでいたそうです。ちなみに杏子ちゃんの両親は今年40歳だそうで、明らかに親より年上の男性を紹介された事実に衝撃を覚えたとか。
◆初対面から最低すぎる発言に絶句
近くにあったファミレスに入り、向かい合って席に座った杏子ちゃんとおっさん。その時の会話を杏子ちゃんが詳細に教えてくれたので、引用させてもらいつつその様子を記していきます。
まず最初に、杏子ちゃんはおっさんの年齢を確認しました。
「すいません、失礼ですけどおいくつですか?」
「俺? 35歳だよ」
その白髪の量で35歳は無理があると素直に感じたとか。しかし、続いて行われたおっさんから杏子ちゃんへの質問は、初対面の人間にするには間違いなく常軌を逸したものでした。
「杏子ちゃんは20歳だよね? 若いねえ。処女?」
「……は?」
「まだ20歳だもんね。した事ないよね」
また聞きの私ですら気持ち悪いのに、そんな愚問を真正面から受け取った杏子ちゃんの心境はどんなものだったでしょうか。
◆死ぬほどどうでもいい話、からのいきなり説教!
この時点で心のHPがゼロとなった杏子ちゃんは、完全に目が死んだ状態になっていたとか。彼が店員さんにタメ口で注文をするなどの横柄な態度も目に余ったそうです。
そして、聞きもしないのにおっさんは自分の交友関係を杏子ちゃんに語り始めました。
「俺さあ、こう見えて杏子ちゃんくらいの女の子とよく遊ぶんだよね。LINEとかめっちゃ持ってるよ、見る?」
「はあ、別に見たくないです」
「××ちゃんは看護師さんで、△△ちゃんは大学生やったかな」
おっさんは杏子ちゃんの話を聞かず、楽しそうにLINE画面を見せながら女の子たちの個人情報をペラペラ喋っていたそう。
杏子ちゃんにとっては死ぬほどどうでもいい話だったので、適当な相槌(あいづち)を打つだけでやり過ごそうとしたのですが、そうは問屋が卸しませんでした。
「さっきから相槌しか打たないけどなんか話す事ないの? ハイハイばっかりだとさあ、こっちは別に君じゃなくてもええやんってなるじゃない。わかる?」
なんと、杏子ちゃんに対して、人と接する姿勢がなっていないと説教を始めたのです!
◆泣きたいくらいの気持ち悪さが爆発
「杏子ちゃんだけのなんか面白い話とかないの? 珍しい趣味の話とか」
「うーん……ないですね。やっぱり話は聞く方が好きです」
「ふーん、聞き上手って便利な言葉だよね」
杏子ちゃんはわりと普段はお喋りな女の子です。聞くのが好きなわけではなく、このおっさんには自分のことを話したくなかったに違いありません。
聞くだけの姿勢を崩さない彼女に、おっさんはついに堂々たる下ネタをぶっこみ始めました。
「××ちゃんとドライブ行ったんだけど、彼女はFカップだったからず~っと隣にFカップ。杏子ちゃんはそんなにないよね」
「ずっと敬語だけど別に崩してくれていいのに。でもガチガチに敬語の子がベッドでは崩れてくのは結構好きだね」
あまりの気持ち悪さに杏子ちゃんは泣きたくなったそうですが、おっさんがボソっと「俺が20の時……25年前か。全然歳上にもタメ口だったな」と言ったことは聞き逃しませんでした。
やはり35歳ではなかったようです。自称35歳の、実年齢45歳。おっさん、なぜに10歳もサバを読んだのか。しかも早々に杏子ちゃん気づいてたし。
◆別れ際に「ホテル行く?」……恐怖でしかない
その後、なんとかおっさんの話が途切れた瞬間に帰ることを切り出すも、LINEを交換させられたり腕を掴まれたりと終盤まで散々な目に合わされた杏子ちゃん。
「新しい眼鏡を作りに行くから」と、もともと入れていた予定を告げてサヨナラしようとしたところ、おっさんが妙な提案を始めました。
「でも眼鏡作るなんて、そんなに急ぎじゃないよね。ホテル行く?」
杏子ちゃん、貞操の危機! おっさん、杏子ちゃんのことヴァージンだと思ってるはずですよね?! それでこんなことを言うなんて……気持ち悪さを通り越して恐怖です。
「さすがに緊張するか。じゃあまたいつかね」
雰囲気を察知してかなんとか諦めたおっさんを振り切り、杏子ちゃんは自分の乗ってきた車へと逃げ込みました。そしてある程度走らせたところで車を止めて、速攻で私に電話をしてきたとのことだったのです。
私はLINEは速攻でブロックするように伝え、お見合いをセッティングした先輩Aさんにも何か言った方がいいのではないかと助言したのですが、反応が芳しくなかったのでひどく心配になりました。
◆先輩からまさかの反応「ホテル行ったら良かったのに」
次に杏子ちゃんから連絡が来たのは、それから2日後のこと。なんと彼女、知らぬ間にしっかりとAさんに電話をかけて対峙していたのです!
杏子ちゃんはまずAさんに「そもそもどういうつもりでこうなったのか」を問いただしました。その答えは……
「別に本当にどうこうなるとか思ってなかったよ! 合わんだろうな~とは思ってたけどダメだったね」
笑いながら返ってきたその言葉に、杏子ちゃんは怒りを覚えたと言います。さらに、ずっとセクハラ的な発言をされていたことについても……
「そういうの大丈夫でしょ。なに恥ずかしがってるの?」
恥ずかしいのではなく、純粋に気持ち悪かっただけの話じゃないでしょうか。さらに杏子ちゃんが別れ際にホテルに誘われた件についても……
「行ったら良かったのに。あの人めっちゃ慣れてるから初めてでも優しくしてもらえたと思うよ~」
◆迷惑先輩には、因果応報が待っていた
杏子ちゃんの頭の中は、一瞬ハテナマークでいっぱいになったと言います。しかし、杏子ちゃんはAさんに毅然と立ち向かいました。
この一連の出来事がすごく不愉快だったこと。職場の後輩の子に同じ事は決してしないで欲しいこと。一応だが処女ではないこと。そして仕事で必要な会話以外は極力関わらないでもらいたいことを懇切丁寧に伝えて電話を切ったそうです。
聞けば杏子ちゃん、Aさんとは入社してからずっと仕事の先輩後輩としては良好な関係を築いていたのだとか。
「2年も一緒に働いていても、人の本性ってわからないものですね」
取材終わりに寂しそうにそう言った杏子ちゃでした。が、改めて後日談を聞いたところ、杏子ちゃんはこの件を会社の上層部にも報告しており、Aさんは別の支店へと異動させられることになったとさ。
現代社会の深刻な問題であるパワハラ&セクハラがごった煮になった迷惑話でした……。
<取材・文/もちづき千代子 イラスト/朝倉千夏>
【もちづき千代子】
フリーライター。日大芸術学部放送学科卒業後、映像エディター・メーカー広報・WEBサイト編集長を経て、2015年よりフリーライターとして活動を開始。度を超したぽっちゃり体型がチャームポイント。Twitter:@kyan__tama