FX初心者が高額投資、退職金300万円を失い夫婦仲が危機に

 さほど資産を持たない一般家庭に生まれ、起業する度胸もない人にとって、金持ちになる手段は「投資」だ。だがそこで成功するのは、もちろんひとにぎり。現在、Uber Eatsなどの配達員として糊口をしのぐ国枝悟さん(仮名・53歳)は、一攫千金を狙いサラリーマン時代の退職金をFXに投じてみたが……。

◆「稼げる!」FX投資本に夢を見た中年男性の末路

 国枝さんが晴れやかな表情でこう語る。

「パワハラ上司に耐えかねて、会社を辞めたのが8年前。特にやりたいこともなく、子供もおらず、退職金500万円を抱えて夫婦で身軽に上京したんです。そんなときに立ち寄った書店の店頭で見つけたのが、『稼げる!』と表紙で謳ったFX投資の本。読み終わったら自分でもできそうな気がしたので、著者のブログを読み込み、さらにセミナーにも参加しました」

 セミナー参加費は15万円だったが、これから大きな勝負を控えていた国枝さんにとっては必要経費。

「講座の内容自体は中・上級者向けでちんぷんかんぷんでしたが、ちゃんと基本も教えてもらえました。まずは生活に支障のない額から始めること。そして徐々に経験を積むのがよい、といった具合です。それなのに欲をかき、いきなり100万円から始めたのが愚かでした。ドル円の取引を半年続けた結果、30万円の損失が出て……

◆退職金300万円を失い夫婦仲が危機に

 ここで投資手法を立て直すべきだったが、国枝さんはさらに200万円を追加投資

「知識も経験もないくせに、カネを注ぎ続けても勝てるわけがなく、1年で300万円をすり、撤退しました」

 しかし、夫が火だるまになってさまよう一方で、妻は着実に自分の道を見つけ行動に移していた。

「ぶらぶらしている私を見かねたのか妻からは『働かなければ離婚』と宣告されましたが、FXで失敗したなどと言えるはずもなく、何食わぬ顔で国内旅行の添乗員として働いたり、妻から学費100万円を借りて寿司板前の学校に通って職を探しました。しかし、様子を不審に思った妻とはケンカになり2年間別居することに」

◆現在はUber Eats配達員で糊口をしのぐ

「妻はその間、仕事の傍らひたすら法律系国家資格を目指して試験勉強を続け見事合格。それを契機に復縁し、私は現在、Uberなどの配達員として糊口をしのいでいます

 再びFX投資をするためにカネを貯めているという国枝さんだが、足元を見つめるべきだろう。

【国枝 悟さん(仮名)】

配達員。負けが込み荒れた酒を飲んでいた頃、ゴールデン街の店のマスターに説教され出禁に。「投資で成功して見返したい」と気勢を上げる

取材・文/長谷川美季(清談社)

―[やってはいけない!]―

2021/10/25 8:54

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