ヤクルト躍進の原動力となった下位球団。その悲惨すぎる成績と来季に向けた強化ポイントを探る

―[数字で見るプロ野球]―

◆前半戦で豪快に貯金を与えてしまった下位3球団

 クライマックスシリーズに向けてシーズンも大詰めとなってきたプロ野球。今回はシーズンの順位に大きな影響を及ぼしたであろう極端な対戦成績となったチームの対戦を振り返る。要するに「カモ」った球団と「カモ」られた球団のチェックだ。来年に向けて課題が見えてくるだろう。前回のパ・リーグ編に続きセ・リーグ編。チーム別対戦成績を見るとヤクルトによる下位球団をしっかり叩き効率良い試合をしていたことに目がいく。

 10月21日時点でセ・リーグ球団直接対決において勝敗差が大きい順に

・ヤクルト×DeNA(勝敗差10)

・ヤクルト×広島(勝敗差8)

・ヤクルト×中日(勝敗差7)

 と、上位3つが全てヤクルトによるプラスで独占していた。巨人とは勝敗差0、阪神に-4と考えると、いかにヤクルトが下位球団をしっかり叩いていたのかが伺える。

◆広島は得点と失点を1点ずつ減らせば……

 そして、その推移を見ても、前半戦でまず、対広島は第1回戦でヤクルトが0-2で敗れた後に引き分けを挟んで対広島は8連勝。7月からは割と五分の戦いをしていたが、終盤10月のマツダスタジアム3連戦で3タテを決め、要所で広島に勝っている。

 ポイントなのはヤクルトの対広島戦防御率が2.51であること。1試合のスコアレスドローを除いて基本的に広島もヤクルトには必ず1点以上取っているのだが、ヤクルトの打線を上回る得点が取れていないという負け方が多い。

 そのため、広島の対ヤクルトについて来シーズンに向けては打線、投手どちらというよりも全体的に得点を1点増やし、失点を1点減らしにいく総合的なレベルアップが求められる内容だった。

◆シーズン中盤まで善戦していた横浜DeNA

 DeNAがヤクルトに一番の貯金を明け渡してしまっているのだが、実はシーズン中盤までは思ったより善戦していた。開幕直後の外国人来日が遅れた問題もあり、対ヤクルトは6連敗していたのだが、5月に3連勝、8月には2勝1敗と、外国人が揃ってしばらくは戦えていたほうであった。

 崩壊したのは9月である。9月のはいきなり5連敗。その後2勝したものの、ヤクルトの優勝争いに大きな後押しとなってしまった。DeNA自体はヤクルト投手陣に手も足も出ていないわけではないのだが、競り負けた試合が多い。チーム状態が悪いときに大崩れしなければここまで極端な結果にならなかったと思わせる内容である。

◆まったく打てなかった中日は3点取られたらおしまい

 最後に中日だ。中日はヤクルトに7つの貯金を与えてしまったのだが、とにかく打てないの一言だ。ヤクルトの対中日チーム防御率は驚異の2.20である。ヤクルトが勝利した13勝のうち、11試合でヤクルトは3得点以上しており、3点取られたら負け、という明確な基準で試合が進んでしまっている。

 そして広島同様、前半戦で多くの貯金を明け渡してしまった。8月までに限定するとヤクルトは対中日で10勝2敗4分で8つの貯金。むしろ9月にすこし巻き返しているということになる。

 中日はセ・リーグトップのチーム防御率3.21を誇っていることを考えると、とにかくヤクルトから3点とれる打線の整備が最優先課題である。来年立浪新監督が決定し、打線がどうなるかが注目だろう。

文/佐藤永記

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【佐藤永記】

公営競技ライター・Youtuber。近鉄ファンとして全国の遠征観戦費用を稼ぐため、全ての公営競技から勝負レースを絞り込むギャンブラーになる。近鉄球団消滅後、シグナルRightの名前で2010年、全公営競技を解説する生主として話題となり、現在もツイキャスやYoutubeなどで配信活動を継続中。競輪情報サイト「競輪展開予想シート」運営。また、ギャンブラーの視点でプロ野球を数で分析するのが趣味。Twitter:@signalright

2021/10/23 8:53

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