偏差値70の進学校で“底辺”だった女。一流大卒の同級生に「なんで来たの?」と同窓会でマウントされ…

高い偏差値を取って、いい大学へ進学する。

それは、この東京で成功するための最も安定したルートだ。

…あなたが、男である限り。

結婚や出産などさまざまな要因で人生を左右される女の人生では、高偏差値や高学歴は武器になることもあれば、枷になることもある。

幸福と苦悩。成功と失敗。正解と不正解。そして、勝利と敗北。

”偏差値”という呪いに囚われた女たちは、学生時代を終えて大人になった今も…もがき続けているのだ。

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File3. 葉子(30) 復讐の時


「やっと、この時が来たわ…」

同窓会当日。案内メールを読み直して時間と会場を確認した後、クローゼットの全身鏡に映る自分を見ながら、葉子はほくそ笑んでいた。

高校時代の葉子は、成績も容姿もキャラも目立たず、欠席したことにも気が付かれないような存在だった。

そして、進学校にもかかわらず、合格できたのは2流大学。

そんな「イマイチな子」というレッテルを貼られた葉子が、高校の同級生たちに人生の大逆転を見せつけられる滅多にないチャンス…

それが、この同窓会だったのだ。

― 今日という日は、服からバッグからすべて、一流ブランドで固めるのよ。

ワンピースは今シーズンのYOKO CHAN、バッグはバーキン25、時計はCartierのベニュワール…

普段のファッションであれば、すべてを高級品で固めるなんてせずに、少し“外し”を入れる方がセンス良く見せられることくらい理解している。

だが、今日はとにかく、成功した自分を周りに見せてやる!という気持ちが何にも増して強かったのだ。

― 総額500万円くらいのファッションで、アッと驚く同級生の顔を見てやる。羨んだ女子たちの顔を見て勝ち誇ってやる。あんな奴ら、絶対に見返してやるんだから…。

そんな魂胆でファッションを仕上げた葉子は、玄関でJIMMY CHOOのパンプスを履くと、迎えにきたタクシーに乗り込み同窓会の会場へと向かうのだった。

「イマイチな子」だった葉子の高校時代とは

アイデンティティを失った高校時代


葉子が卒業した高校は、東京でも有数の都立進学校だ。

中学時代の葉子は、真面目に勉強に取り組み、塾での模試も常に偏差値70をキープし、常に学年トップ3の成績だった。

主要外科目や生徒会活動にも手を抜かず内申点も確保し、見事にその都立進学校に入学したのだ。

希望に胸を高鳴らせた葉子。
しかし、その高校生活はあっという間に暗転する。

進学校には、当然ながら各中学校のトップクラスの生徒が入学する。

容姿も人並みで、キャラも目立たず、体育も音楽も美術も「そこそこにできる」というレベルだった葉子にとっては、中学までは「成績がよい」ということだけが自分の存在感を示すものだった。

しかし、 全員が「偏差値70」で入学したこの学校において、成績で存在感を示すのは至難の業。

― ヤバイ、こんなに早い授業なんて、全然ついていけない…。

中学校までは「努力」で何とかこなしていた勉強だった。

しかし、高校の進度の早い授業と、優秀な同級生を目のあたりにして、葉子はすっかり勉強へのやる気を失ってしまったのだ。

こうして、自分の存在を示せる唯一のアイデンティティだった「成績の良さ」を失った葉子は、あっという間に「成績も平凡で、容姿も普通で、何もかも目立たない子」に転げ落ちてしまう。

そして進学したのも、名はあるが決して一流とは言えない大学…。

「私には何もない。こんなパッとしない私、本当に嫌い…」

葉子にとっての高校時代は、凡庸な自分をイヤというほど認識した苦い思い出だったのだ。


しかし、そんな葉子に人生の転機が訪れある。

大学卒業後に就職した、ある証券会社の子会社であるベンチャーキャピタル。

そこでの仕事を通じて、ある事業を起業しようとしていた一樹と出会い、交際に発展したのだ。

「葉子の仕事ぶりを見ていて、君の力が僕に必要だと思ったんだ。絶対に成功してみせるから、僕と結婚して事業を支えてもらえないか」

こうプロポーズされた葉子。

― せっかく証券会社の子会社に正社員で就職できたのに、手放していいのかな…。

結婚に対して不安が全くなかったわけではなかった。

しかし、一樹の真摯な思いに答えようという気持ちが上回り、葉子は結婚と同時に退職を決意したのだった。



マーケティング領域のアプリケーションプラットフォームを提供する一樹の事業は、時代のニーズを捉えて瞬く間に売上が急増した。

一樹は着実に事業を展開していき、時には事業を大手企業に売却することで、多額の資産を得ることに成功。

「時の事業家」として、メディアからの取材も多く受ける存在となった。

「俺がここまでできたのも、葉子のサポートがあったからだよ」

プロポーズでの約束通りに成功を果たした一樹は、常に葉子への感謝を忘れなかった。

今住む麻布のマンションには、多くの有名人や芸能人が居住している。

夫の人脈で、華やかなパーティーや休日のクルーズなど、富裕層の嗜みも覚えてきた。

もちろん、ハイブランドなものなども一樹に気兼ねなく買ってもらうことができ、まさに誰もが羨む生活を送るようになっていった。

― 私もやっと、光の当たる場所に来れたんだわ!結婚した時は不安だったけど、一樹を信じた私は間違っていなかったのね!

“一樹”という一筋のロープに、強く引き上げられた葉子。

学歴や容姿やキャラなどがすべて地味だった人生から、経済的・精神的に満ち足りた人生へと大逆転を遂げたのだった。



「見返してやる」

この気持ちで臨んだ、高校の同窓会。

会場に到着した葉子がシャンパングラスを手に取ったその時、背後から小馬鹿にしたような声が聞こえた。

「あれ?もしかして葉子じゃない?ヤバ、同窓会の場にまさか葉子が来ると思わなかった〜!」

葉子が後ろを振り返ると、そこには大嫌いだったあの女の姿が見えた。

大嫌いだった女に、葉子が投げかけたもの

見下すような笑みを浮かべている女。この女こそ、高校時代に何かと葉子を馬鹿にしていたクラスメイトの真穂だった。

あの頃から、華やかな1軍メンバー気取りだった真穂。

当時の真穂は、葉子だけでなく、地味で目立たない女子たちにマウンティングをしては嫌がらせを繰り返していたのだ。

当時の1軍メンバーを従えて現れた真穂は、葉子の上から下までをジロジロと観察しこう言うのだった。

「葉子、すごくきれいになったわね~。色々と高そうなものも持っちゃって」

そういって、笑顔を作る真穂。

作り笑顔の目の奥が、全く笑っていないのも当時と同じだ。

― ホントこの女、人のことを値踏みしてばっかり。全く変わらないわね…。

「ところで、ねぇ、葉子ってどこの大学行ったんだっけ?みんな久しぶりだから、自己紹介も兼ねて教えてよ~」

葉子への値踏み終了後に、真穂は早速マウントを開始したのだった。

きっと葉子が2流大学に行ったことも把握しているのだろう。

にもかかわらず、この女は「大学名」をわざわざ聞いてくるのだ。

しかし、葉子はそんな質問に対して、真っすぐに真穂を見てこう答えたのだった。


「ねぇ、私があなたにそれを答える必要ある?そもそも、それって今、何のために必要な情報なの?

だいたい、高校卒業して10年以上経つのに、まだ学歴や偏差値なんかに縛られて恥ずかしいと思わないの?ホント、真穂ってあの頃と何も変わらない。成長していないのね」

思わぬ葉子の反論に、真穂は表情を変え怯んだ。

その様子を冷ややかに見ながら、葉子は続ける。

「あのね、私にはもう大学名とか偏差値とか必要ないの。お金も地位も得て、何もかもが幸せだから。

だいたい大学が何?学歴得ても幸せ感じられないなら無駄よ。ホント残念ね、真穂って」

そう言い放ち、バーキンの「HERMÈS」のロゴがあえて真穂に見えるようにして、金のかかったファッションを主張する葉子。

「では、失礼」

こうにっこりと微笑んで、葉子は真穂の元を去っていったのだった。

真穂の元を去った葉子は、富裕層独特の「ただ者ではない空気」を纏いながら会場を歩く。

そんな葉子には、自ら声を掛けずとも多くの同級生が集まるのだった。

「えー、葉子!?すごいキレイでびっくりしたわ!」

こう言って近寄ってきた女子の中には、現役キャリア官僚で美貌も兼ね備えた加奈もいた。

クラスの中で存在すら認識されない地味な子から、同窓会の会場で皆が近寄ってくる存在へと変貌を遂げた葉子。

そして、近寄ってきた彼女らとグラスを高らかに掲げて、ゆっくりとシャンパンを飲み干す葉子。

それは、まるで過去の地味で目立たない自分を流し去るようだった。


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