69歳のパリマダム、12平米の屋根裏部屋ぐらしがステキ。中村江里子が憧れるマダムたち

 フランス・パリ在住で3人の子育てに奮闘する姿が人気のフリーアナウンサー・中村江里子さん。オフィシャルブログは月間500万PV、インスタグラムのフォロワー数は15万人に迫る勢いです。

 洗練されたライフスタイルと、華やかな交友関係も目を引きますが、何より、堅実で穏やかなその日常に気持ちを寄せる読者も多いようです。

◆中村さんがフランス・マダムたちに取材

 今春発売の単行本『パリのおうち時間』も好調ですが、大切に続けてきたパーソナル・ライフスタイルマガジン『セゾン・ド・エリコ』も、7年の歳月を重ねています。

 最新号(Vol.14)の特集の一つが「フランス・マダムのキッチン」とのこと。コロナ禍でおうち時間が増えたのとともに、キッチンの仕様に目を向けるようになった人も多いのではないでしょうか。

 そこで、中村さんが取材をしたマダムたちと、ご自身のキッチンでの時間について話を聞いてみました。

◆生活を彩るセンスも、生きる姿勢もすてき!

――最新号では、4人のフランスのマダムたちのキッチンも紹介されていますね。

中村江里子さん(以下、中村)「はい。どの方もキッチンはもちろんですが、暮らしを彩るセンスや生きる姿勢がとても素敵なので、ぜひ、日本の皆さまにも読んでいただければうれしいです。

 じつは、特集の冒頭で登場していただいたナタリーさんは、コロナ禍で発売されたご著書がフランスで大評判となった方。夫のバルトさんが買ってきた本を拝読して、『セゾン・ド・エリコ』で、ぜひ、ご紹介できればいいなと思っていました。そうしたところ、本当に“奇跡”のようなご縁がつながって、今回、取材をさせていただくことができました」

◆屋根裏部屋で暮らす69歳のマダム

――屋根裏部屋で暮らすマダムですね。

中村「ええ。何不自由ない家庭に生まれ育ち、かつてはキャリアウーマンとして世界を股にかけるお仕事をしていらしたナタリーさんは、オペラ大通りのアパルトマンに広々とした住居とオフィスをかまえていらしたのですが、15年ほど前に人生の転機が訪れて屋根裏部屋で暮らすことになった方です。

 屋根裏部屋というのは日本の方には馴染みがないと思うのですが、建物の最上階にあって一つひとつのお部屋は狭く、トイレはフロアで共用だったりするお部屋です。ナタリーさんのお住まいもまさにそういう物件で、6平米のお部屋を二部屋借りて生活していらっしゃいます。ですから、正確にはキッチンやダイニングではなく、二部屋がお仕事部屋であり、寝室であり、料理をする場であり、食器を置いておく場所であり……という感じでしょうか」

◆知恵と工夫がつまったナタリーさんの食卓

――でも、逆に、限られたスペースだからこその工夫もありそう!

中村「じゃがいもや玉ねぎは風通しのいい窓辺に置いてあったり、小さい流しでの洗い物を減らすために、陶器のお皿の上には紙皿を置いて使う工夫をなさっていたり……。知恵と工夫を駆使しての暮らしぶりです。

 ナタリーさんがおっしゃるには、『人生には無益なものの場所もある程度は必要だけれど、手放すことを覚えることもまた必要。よけいなものに惑わされなくなるから。たとえば、私にとって不可欠なのはネコ、音楽、料理、そして食事の幸せな時間を人と分かち合うこと』と。

 吟味された食材を1台のオーブンと床に置いた1つの一口コンロで手際よく作ってくださった、心のこもった食卓は忘れられないものです。フランスの著名なシェフや文化人も、ナタリーさんのおもてなしを楽しみに、この部屋に足を運ぶことがあるそうです」

◆ノルマンディの一軒家で暮らすマダム

――ほかにも、子育てが一段落した後、ブログや雑誌で「暮らし」について発信するマダムのキッチンが紹介されていますね。

中村「知人から話を聞いていて、ずっとお目にかかりたいと思っていたマダム、シャロンさんで、ノルマンディで暮らしていらっしゃいます。シャロンさんは4人の子どもの子育てに全力で取り組み、末っ子にあまり手がかからなくなった12年前に、『来年からは生き方を変える!』とご家族に宣言。暮らしの中の美しいもの、素敵なものを伝えたい、分かち合いたいという思いからブログを開設します。

 やがて、そのブログがたくさんのファンを獲得して、ブログと同名の雑誌を創刊し、隔月で発行することになるんです。さらに、いまではシャロンさんセレクトのフランスの素敵なものが詰まった“セレクトボックス”の定期販売も行っていらっしゃるんですよ」

◆どこを切りとっても絵になるキッチン

――気になるキッチンはいかがでしょう?

中村「シャロンさんの構想を村の木工職人さんが形にしてくれたというキッチンはねぎ1本、じゃがいも1個までがおしゃれに見えます(笑)。といっても、とりすました感じではなく、温かみのある楽しいわが家という風景です。中央に置かれた大きなテーブルには、食器やカトラリーの収納機能も備わっていたりと、実用面もしっかり考えられています」

――うかがっていると、とてもエネルギッシュなマダムのよう……。

中村「なんだかすごいビジネスウーマンのように感じますよね。でも、『私、がんばっています!』感はぜんぜんないんですよ(笑)。すべてがとても自然体なんです。ブログも雑誌も通販も、シャロンさん自身が楽しみながらしていらっしゃることが伝わってきます」

◆季節の花がたわわに咲くお庭も壮観

――理想的ですね。

中村「ですよね。広大なお庭はシャロンさんが20年以上かけて丹精してきたもので、愛犬が気持ちよさげにどこまでも駆け抜ける、夢のような世界です。時間をかけて育ててきたシャロンさんの好きな季節のお花がたわわに咲くお庭ですが、裏には菜園もあって、果物や野菜、ハーブなどが収穫できるそうです。

 シャロンさんの日課の一つは、庭に出て、その日、いちばん心にとまったお花を主役にお花を摘んで飾ること。キッチン、テラス、リビング……部屋中をステージにシャロンさんのセンスで美しい花たちが飾られています。

 また、ご主人とシャロンさん、二人の共通の趣味という絵画もベストポジションで配置されていて……。シャロンさんからは、自分が知ったり、見つけたりした暮らしの楽しみを、自分たち家族だけではなく、発信することで世界の人々と分かち合いあいたいという思いを感じます。そしてそれがまた、シャロンさんの人生を実り豊かなものにしているのだと思わされました」

◆キッチンはいちばん好きな場所

――中村さんご自身についても聞かせてください。数年前リフォームなさったというバルト家のキッチン。ブログやインスタグラム、テレビなどでも紹介され、おしゃれで使いやすそうと、話題になっていますね。

中村「自分たちで配色を考えて、什器の配置もあれこれ考えたキッチンは、私にとって家の中でいちばん好きな場所。もともとキッチンで過ごすことが多かったのですが、ダイニングにあった大きなテーブルを南仏の家に移動し、いまダイニングのテーブルを探している最中なので、さらにキッチンで過ごす時間が増えました。お料理はもちろん、午前中はここにパソコンやノートを持ちこんで、仕事をしています」

◆オフィス、学食、社食、そして撮影部隊の基地!? 

――カラフルキッチンでのお仕事。それもなんだか楽しそう!

中村「はい(笑)。でも、この1年はお昼時は大賑わいで……。というのも、コロナ禍で長女のナツエの高校ではお昼が食べられず、家に戻ってきてランチをしていましたが、ナツエだけではなく、ナツエの友達も三々五々帰って(?)きて(笑)。

 ナツエとは違う高校の友達もいて、11時半から13時半までは玄関のベルが鳴りっぱなしでした。常時5人ぐらいがテーブルを囲んでいて、さらに、レストランがクローズしていた時期は、バルトさんがビジネスランチのために不意打ちで戻ってくることもありました(笑)。そうすると、子どもたちは別のコーナーに退散となります」

――それはまた、なんとも賑やかな!

中村「ほんとに(笑)。キッチンは家族みんなが大好きで大事にしている場所です。みんななにかとここに集まってくるんですよね。じつは、『セゾン・ド・エリコ』の撮影の基地もキッチンなんですよ。スタッフの方といっしょに、このキッチンから思いを込めて、毎号発信しています(笑)」

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 特集では、ほかにも、フランスの人気アーティストのマダムのこだわりキッチンや、83歳の元デザイナーのマダムのアイデア満載のキッチンが紹介されています。どの方からも、自身の人生を愛し、謳歌していらっしゃる様子が伝わってきて、「住まいはそこに住まう人を映し出す」ということを身にしみて感じます。

 さあ、そろそろうちのキッチンもなんとかしようか……重たい腰をひょいと上げたくなりますね。

<文/中村江里子>

【中村江里子】

本名:エリコ・バルト/1969年東京生まれ。フジテレビのアナウンサーを経て、フリーに。2001年にバルト氏(化粧品会社経営)と結婚、パリに暮らす。現在は3児の母で、パリと東京を往復しながら各メディアで活躍中。ライフスタイルブック「セゾン・ド・エリコ」シリーズ、近著『パリのおうち時間』 Instagram:eriko.nakamuraofficial

2021/10/21 8:45

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