モラハラ上司の二重基準はなぜ生まれる? 相談してもしなくても地獄の結果に

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―[モラハラ夫の反省文]―

◆相談すると「使えねえな」と突き放すのに、後で文句を言う人々

「わざわざ聞かなくてもわかるようなことを聞かれると腹が立ってしまいます。こっちも忙しいのに……と思っていたら、部下が上司にパワハラだと訴えていて、困ります」(GADHAの相談者)

 DV・モラハラ加害者が、愛と配慮のある関係を作る力を身につけるための学びのコミュニティ「GADHA」を主宰しているえいなかと申します。

 僕自身もDV・モラハラ加害者です。そのせいでたくさんの人を傷つけ、仕事や家庭が破綻寸前になり、ようやく自身の加害行為、それを生み出す加害的な思考・価値観を自覚しました。現在は日々自分の言動を改善しながら、妻と関係を再構築させてもらっています。

 この連載では、僕自身の経験や当事者会での気づきを共有していきます。職場や家庭でモラハラに苦しんでいる方々、無自覚に加害を行っている方々の参考になれば幸いです。

◆家庭でのモラハラ加害者は職場でパワハラ上司に

 家庭で加害をしている人の多くが、職場でも加害をしています。非常に多いのが、相談されると面倒くさがるのに、チームのメンバーが自分の判断で行動して失敗すると文句を言い、成功すると自分の手柄のように振る舞う人です。

 冒頭のセリフにもある通り、相談された時には「そのくらいわかるだろ。いちいち聞くな、俺は忙しいんだ」と適切な指示をせず、メンバーを萎縮させます。

 当然ながらそう萎縮させられたメンバーは、今度から相談や質問をしにいくことが難しくなります。不安がありつつも仕事を進めていたらあるとき「何やってんだ! 普通こうするだろ、常識で考えろよ」と叱責を受けるなんて、最悪の体験です。

 メンバーはだんだん相談して良いのか相談してはいけないのか、自分で決めていいのかダメなのかわからず、なんでもお伺いを立てたり、逆にどうしたらいいかわからず無気力になってしまいます。

 そして加害者は言うのです。「こんくらい自分で判断しろよ、使えねえな……」と。

◆相談を受けた場合の適切な対処方法とは

 僕は組織開発支援の仕事もさせていただいていますが、このような職場は非常に多いです。部下から相談を受けた時には、本当は以下のように考えることができるはずです。

1.相談自体が必要かどうか
 まず、相談内容についてメンバーが自分で判断して良いかどうかを考えます。ここで、その判断基準を明確にする必要があります。

 自分で判断して良い相談内容であった場合は任せ、今度からはその基準に照らして考え、自分で判断してもらうようにできます。自分で判断しない方がよいことだった場合は、相談に来てくれたことに感謝しましょう。

 もし問題が発生してしまったら、間違えていたのは自分の基準です。自分の間違いを率直に認め、一緒に新しい相談の基準を考えることも上司の責任です。

2.相談方法が適切かどうか
 相談の中には「よくわからず、どうしたらいいでしょうか?」というものから「AとBとCのどれが良いでしょうか?」といったもの、「AとBとCがあり、Bがいいと思うので進めて良いでしょうか?」といったものまで様々あります。

 それぞれ「選択肢を洗い出せない段階」「選択肢から決められない段階」「決定権がないので進めない段階」と言い換えることができます。

◆チームの成長を壊す上司

 段階によって明らかに相談に応える方法は変わります。1つ目であれば「そもそもどんな考え方で考えるべきか」を教える必要があり、2つ目であれば「その考え方の中での優先順位は何か」を教える必要があり、最後の段階では相談しなくても進められる仕組みに変えることを検討すべきでしょう。

 もちろん教え方にも色々あり、丁寧に教えることもあれば、最近の意思決定の具体例を伝え、それを元に自分で考えてもらうように促すこともできるでしょう。

 なんにせよ上記のプロセスを経ずに「こんくらい自分で判断しろよ、使えねえな」などと言うのは、上司としてのメンバーの成長を支援する責任を果たしていない人だと考えます。

 とはいえ、そんなふうに自分も指導されてこなかったというパターンも多く、上司もまた部下と同じように、学び続けることが必要だと痛感することが多いのですが……。

◆家庭内でもこの加害が全く同じ構造で行われる

 相談に応えないのに、結果に文句を言う。このような状態では、相談することも、相談しないことも間違いになってしまいます。これを「ダブルバインド」と言います。

 これをされた方は混乱し、常にビクビクした状態に追いやられてしまいます。何をやっても叱責されるかもしれないのですから、ダブルバインドをしてくる人がいる場所は、落ち着ける場所ではなくなってしまいます。

 職場においてダブルバインドをしているような人は、家庭でもやってしまうことが容易に想像されます。具体的には「子育て」や「旅行プラン」などの場面において、相手に計画を任せておき、相談されたら忙しいんだなどといっておきながら、いざ結果が出ると文句をいうというパターンです。

 例えば子どもの進学先などについて相談されても「そういうことはお前に任せた」と言っておきながら、いざ成績の話や受験の話になると「おれはそれは間違ってると思ってた。ああすればよかったのに」などと後から口出しをしてくるようなことですね。

 忙しいのだとしても、結果に文句を言うのだとしたら、事前に自分なりの意思決定基準を述べないのはアンフェアです。さらに、(本記事では紙幅の関係で割愛しますが)自分と相手の意思決定基準に違いがあれば、すりあわせていくことも必要になります。

◆大事な人たちに逃げられる前に肝に銘じよう

 そういうことを全てすっ飛ばしておきながら自分が満足するような結果が出てくると期待する考えの根幹は「俺の考えていることは当然にわかるはずだという甘え」です。

 この記事を読んでドキッとした人へ。

 加害者は、自分では全く自覚しないままに周りの人をダブルバインドで混乱させたり、自己肯定感を著しく傷つけている可能性があります。

 実際、少なくない人が自分が若手だった頃はそのような指導に傷ついたり困ったりしてきたのではないでしょうか。しかし、そうだとしたら、そんなマネジメントはもう終わりにしませんか。

 これを職場でやっている人は、家庭でもしてしまっている可能性が非常に高いです。パートナーやお子さんが長期にわたって傷つき、あなたに対する信頼や安心感を感じられなくなっている可能性があります。

 ある日家に帰ったら、パートナーと子どもが揃って逃げ出していたという状況にならないためにも、ぜひご自身の関わりを見直してみてください。

―[モラハラ夫の反省文]―

【えいなか】
DV・モラハラなどを行う「悪意のない加害者」の変容を目指すコミュニティ「GADHA」代表。自身もDV・モラハラ加害を行い、妻と離婚の危機を迎えた経験を持つ。加害者としての自覚を持ってカウンセリングを受け、自身もさまざまな関連知識を学習し、妻との気遣いあえる関係を再構築した。現在はそこで得られた知識を加害者変容理論としてまとめ、多くの加害者に届け、被害者が減ることを目指し活動中。大切な人を大切にする方法は学べる、人は変われると信じています。賛同下さる方は、ぜひGADHAの当事者会やプログラムにご参加ください。ツイッター:えいなか

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