トンツカタン森本、若手No.1 MCの呼び声高まるも「このファイトスタイルしかできない」

 東京のお笑いライブシーンで、MCとして絶大な信頼を集める若手芸人がいる。人力舎のコントトリオ・トンツカタンの森本だ。どんなに奇抜な内容のライブでも、出演者欄に「MC:トンツカタン森本」と書かれていれば「それなら絶対面白くなる」と迷わずチケットを買うことができる。そんな森本が今月末、EXシアター六本木という大箱で『トシちゃんに会いたい』『トンツカタン森本のブチ切れデトックス スピンオフ ランジャタイ国崎VS森本一騎打ち』なるライブに出演する。腕が試されまくること確定のイベントを前に、その心境やいかに――。

冠企画放送でCS加入者が激増

――『トンツカタン森本のブチ切れデトックス』の第3弾となるスピンオフライブが開催されます。森本さんをキレさせるというこのイベントはどんな経緯で始まったんですか?

森本 企画してくれたテレビ朝日の熊谷(和也)くんが、大学お笑いサークルのつながりで昔からの知り合いだったんです。「いつか一緒に仕事したいですよね」と話していたら、CSの企画として『ブチ切れデトックス』を通してくれて、それを新宿の小さな劇場でやったのが始まりですね(2019年10月第1回開催)。

――手ごたえはありました?

森本 こんな無名芸人に委ねていいのかと思いながら、やってる分には面白かったです。そうしたら、ファンの方が僕の冠番組が見られるということでCS加入者が増えたらしくて。確かその時期に反響が大きかった企画が、大物ミュージシャンの方と、僕という並びだったと聞いてます。それでテレ朝内で「数字を持った芸人が現れたぞ!」と評価が上がって、第2回のEXシアター公演が決まったんです(2021年2月25日開催)。

――ずいぶん大きい会場でやるなと思ってました。

森本 出演してくれたメンツも、R-指定さん、フワちゃん、三四郎さんとめちゃくちゃ豪華で、チケットも完売しましたね。そういう巧妙な手口で「森本はすごいヤツだ」と騙せていたんですけど、今回ランジャタイ国崎さんとのタイマン対決になったとき、チケットの売れ行きが前回ほどよくないというボロが出ました……。ここで頑張らないと、熊谷くんごと吹き飛んでしまうかもしれません。

――なぜ国崎さんとのタイマン勝負になったんですか?

森本 僕をブチ切れさせるのがうまくて、一番企画の趣旨に沿っているんですよ。普段から仲もいいですし、彼もムリしてない通常営業でやっていますし。彼が言ってたのは、「もともと同じ人間だったのがボケとツッコミに分かれたんじゃないか」って。そう思うぐらい相性はいいんです。

――素人から見ると、国崎さんは予測不能で対応が難しそうな気がします。

森本 予測不能ではあるんですけど、突拍子がないわけじゃない。ヘンなことはやっても彼なりの筋があるんで、急じゃないんですよね。

――ロジックがあるゆえに対応できると。

森本 売れている人って、急なように見えて実は急じゃないんですよ。その人なりの正義があってやってるんで、やりやすい。フワちゃんもそうですね。

――信頼関係があるから、今回の舞台も心配はしてない?

森本 心配はしてないですね。ただ、僕は準備のしようがないですから。何も知らされずに開演ギリギリにいって、さあ何が起こるかというストロングスタイルの企画なんで。楽しみではあります!

――同時開催されるのが『トシちゃんに会いたい』。多様なトシちゃんが集結するという大胆なライブですね。

森本 これは巻き込まれました。『R-1グランプリ2021』の決勝でトシちゃんになっちゃうネタをした後輩の土屋から、「トシちゃんが集まるライブをやるからMCやってくれませんか」と言われて、引き受けたんです。これも新宿の小さな劇場で一度開催しまして……(2021年3月30日開催)。

――あっ、すでにやってるんですね。

森本 そうなんです。このご時世なのに配信なしで、劇場に来ないと見られないライブをほぼ同じメンツでやったんです。オープニングで「このタイトル見て、トシちゃんファンが来てるんじゃないですか? 誰かいます?」と客席にたずねたら、マダムが一人手を上げてました。

――僕の友達に地方ライブに遠征するようなガチのトシちゃんファンがいて、今回のイベントを教えたら激高してましたよ。「どういうこと!?」って。

森本 えーっ、マジですか? でも見てもらえれば分かってくれると思うんです。そのときもファンのマダムはご満悦で帰りましたから。まあそれは舞台上で「満足しましたか?」 と聞いて、NOとは言いづらい空気に仕向けたからっていうのもありますけど。

――空気階段もちょくちょくコントにトシちゃんの要素入れていたり、リアルタイムで触れてこなかったであろう若手芸人の中で、いまだにトシちゃんネタが廃れないのが不思議なんです。この風潮はどうとらえてます?

森本 なんでですかね? 田原俊彦さんって今の芸能界にあまりいない、突出したスターじゃないですか。絶対自分はそうなれないっていう憧れがあって、モノマネさせてしまう魅力があるんでしょうね。ちなみに第1回のライブでは土屋のトシちゃんが一番似てなくて、悔しくて歩いて帰ったらしいんですよ。でもその似てないモノマネで『R-1』決勝に行ってるわけですからね。みんな好きなんですよ、トシちゃんのことが。

――チケットの売れ行きはどうなんですか?

森本 国崎さんとのライブのさらにその半分ぐらいです。熊谷くんも「あっ、平日16時スタートだったんですね。ごめんなさい、ミスりました」と言ってましたから……。有休をとって見に来るライブではないと思うので、配信もありますし、時間の余裕あるときに見てもらえれば。

――2つのライブの見どころをお願いします。

森本 『トシちゃんに会いたい』はみんなからにじみ出るトシちゃん愛、個性の違いを楽しんでほしいですね。個人的には土屋のクオリティがどれだけ上がっているのか注目してます。『国崎vs森本』は今までこの構図が多かった中で、一番お金をかけて、一番大人が動いて、現段階でのベストクオリティのものをお見せできると思います。内容知らないのでふわっとしたことしか言えないんですけど!

――今、ライブシーンでめちゃくちゃMCされてますよね。

森本 確かに増えてますね。よしもとのライブでMCさせてもらうこともあったり、こないだはテレ東で大学生お笑いのネタを見る番組のMCを担当して(9月2、9日放送『大学お笑いMONSTERS』)、テレビでもやらせてもらったことに驚いてます。違和感もありましたね。「なんで自分が人のネタ見て感想言ってるんだろう?」って。そこはタガをはずして、「面白かったね!」ってMC然としてました。

――MCをやるのは好きですか?

森本 好きです。やってて楽しいです。1,2年目からちょいちょいやらせてもらってたんですよね。本来は先輩のツッコミの方がやるところを、「俺はいいわ。森本やりなよ」みたいな感じで任されたりして。というのも、若手がテレビに出たときMCやることなんてまずないから、MC以外で経験を積みたいという考えが先輩たちにはあったんです。「それはそうだな」と思いながら、いつかできるかもしれないし、楽しそうだし、引き受けることが多かったですね。褒められたりもして自信にもなりました。

――誰か褒めてもらって嬉しかった人はいます?

森本 『M-1』決勝に出る直前の、ほぼ面識なかったトム・ブラウンさんですね。ライブでクイズ企画が終わった後、布川さんに「MCうまいね」と言われたのが印象に残ってます。関係性ない人に言われたのは、でかかったです。

――MCとして参考にしている人はいますか?

森本 憧れはくりぃむしちゅーの上田さんです。やっぱり上田さんのラジオを聞いて芸人を志しましたから。ただ、ツッコミワードを言おうとしたとき、過去に上田さんが言っていたツッコミがチラついて、「これ言えないな……」という躊躇の時間が生まれることがあるんですよ。なので、影響を受けないようにあまり見ないようにしてます。上田断ちです。

――先輩ということでは、森本さんのMCが昔の渡部(建)さんを彷彿とさせるんですよ。事務所ライブでいじられながら仕切っていく感じが。

森本 あ~、確かに。昔ライブを見に来てくれた人力舎の社長に挨拶したら「おまえは渡部になれ」と言われたこともありました。異業種の方とお仕事もさせてもらうので、そういうルートなのかもしれません。

――他事務所の芸人ともガンガン渡り合って、安心感がありますし。

森本 ありがとうございます。嬉しいですね。でも器用っぽく見られながらも、それしかできないという悲しい事実にも最近気づきました。佐久間(宜行)さんのラジオに呼ばれたとき、初対面なのに強めの感じでツッコんだら、ネットで「こいつ何なんだよ?」とボヤ程度に炎上しましたし……。本来は違うやり方をしないといけなかったんだと反省したんですけど、このファイトスタイルしかできないんですよ。活動の幅が広がったら、「こういう人なんだ」と受け入れてもらえるはずなんで、僕が生きやすい世界にするため今頑張ってます。

――活動の幅は着実に広がってますよね。

森本 今、ヘンな露出の仕方をしているなと自分でも感じるんですよね。賞レースで目立ってトリオで出て、そこから一人で呼ばれるのが正統なルートなのに、いきなり一人で呼ばれている。そこはコントロールできないから、いただいた仕事を全力でやるだけで、どうなるんだろうなとは思います。

――でも最近トリオとして調子よくないですか? 『キングオブコント』で準決勝、『NHK新人お笑い大賞』では決勝に残りましたし(10月31日生放送予定)。

森本 今年は例年に比べて評価してもらってますね。

――何か変わりました?

森本 何も変わってないです(即答)。ネタ書いてる僕にアイデアが降りてくるの待ちで、今年はたまたまいいネタができたという。

――森本さんの露出が多いから、トンツカタンはネタのステージを卒業したんじゃないか、と勝手に思ってたんですよ。

森本 いえいえ。ネタをやらなくなったら、我々は終わってしまいますから。ただ賞レースだけに賭けていると心が持たないんですよ。その時期、ストレスで歯ぎしりがひどくて、冷たいのもあったかいのも沁みるぐらいに体調がおかしくなったこともありましたし。もちろん全力では取り組みますけど、年に一度だけのチャンスだと考えるのは怖すぎるから、そう思わないようにはしてます。……これ、決勝常連の立場で言いたかったですね!

■プロフィール

森本晋太郎(もりもと・しんたろう)

1990年1月9日生まれ。東京都出身。トンツカタンのツッコミ。ライブやメディア出演のほか、ネット上でも独自の活動を多数展開。YouTubeでは『おこたしゃべりチャンネル』『gamesおこた』『しんた』『森本ドキュメントTV』『タイマン森本』『Laugh English /トンツカタン森本のラフに学べる英会話』と複数のチャンネルを持つ。

https://twitter.com/oishiikabegami

■情報

東京お笑いライブマニア presents『トシちゃんに会いたい』『トンツカタン森本のブチ切れデトックス スピンオフ ランジャタイ国崎VS森本一騎打ち』

日程:2021年10月27日(水)

会場:EX THEATER ROPPONGI

生中継放送:CSテレ朝チャンネル1(スカパー!番組配信でも2週間見逃し配信あり)

『トシちゃんに会いたい』

開演:16:00

出演:トンツカタン森本 土屋、モグライダー芝、ザ・ギース高佐、 ハリウッドザコシショウ、レイザーラモン RG、こりゃめでてーな 伊藤 他シークレットゲスト

『トンツカタン森本のブチ切れデトックス スピンオフ ランジャタイ国崎VS森本一騎打ち』

開演:19:00

出演:トンツカタン森本 ランジャタイ国崎、鳥山大介、野村真季アナウンサー、岡田康太ほか

チケットぴあにて、一般発売中

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2181782

https://www.tv-asahi.co.jp/ch/recommend/tontsucatan_sp

2021/10/20 20:00

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