銀座のベテランホステスが語るコロナ禍「風当たりの強さは肌で感じていた」

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 新型コロナウイルスの感染拡大防止で度重なる時短営業・休業要請を受け、夜の街が疲弊している。特に人と人との接客を主とする水商売への風当たりは強い。が、そこで働く人たちそれぞれにリアルな生活があり、逆風のなかでも明るく前向きに、人、仕事と向き合っている。

 クラブ、キャバクラ、ガールズバー、スナック…業態は数あれど、そこで働く女性たちは、この時世にどう試行錯誤しながら仕事と向き合っているのか。夜の街で働く女性を対象にしたミスコン「ナイトクイーングランプリ」に出場する女性たちの仕事術から、逆境を生き抜くヒントを見つけていきたい。

◆銀座・ナイトクラブ「ル・ジャルダン」久乃さん
芸能活動を経て、28歳で水商売デビュー

 今年9月で25周年を迎えた銀座の老舗ナイトクラブ「ル・ジャルダン」で、丸6年に渡って勤続している久乃さん。水商売歴は通算10年のベテランだが、この世界に入ったのは28歳と遅く、それ以前は歌手デビューを目指して芸能活動も行っていた。

 彼女が水商売を始めた経緯や、この世界に入って初めて長期間の休業を余儀なくされたコロナ禍で考えたことなどを聞いた。

――久乃さんは水商売歴10年のベテランですが、コロナ禍という未曽有の事態に見舞われて、戸惑いも大きかったのではないでしょうか。

久乃:去年の3月中旬ぐらいから徐々にお客様が減り始めて、1回目の緊急事態宣言が発令された後の4月5月はル・ジャルダンも休業しました。6月から営業を再開したんですけど、やっぱりお客様は少なくて……。1回目の緊急事態宣言が解除された後は客足が戻り始めたんですけど、緊急事態宣言が発令されるたびに、またお客様が来なくなるという状況が続きました。特に今年8月に感染者が急増したときは、一気に客足が途絶えましたね。

――コロナ禍が始まった頃は夜の街がやり玉に挙げられることが多く、特に銀座への風当たりは強かったですよね。

久乃:それは肌で感じていました。でも変わらずいらっしゃってくれるお客様もいましたので、お店にいるときは明るくすることを心がけていましたし、徐々に世間の声も気にならなくなりました。

――コロナ禍で客層の変化はありましたか?

久乃:経費で飲まれる会社員の方はほとんどいらっしゃらなくなって、自分で会社をやってらっしゃるお客様が多くなりました。あと重症化のリスクもあるからか高齢のお客様は少なくなって、やや年齢層が下がった印象です。ただ最近は感染者も減りましたので、またいらっしゃってくれる常連さんも増えましたし、今年9月に25周年のイベントをやったんですけど、大勢のお客様が来てくださりました。

◆ネット飲みは常連さんには不評でした(笑)

――お客様が減って、精神的に苦しい時期もあったのではないでしょうか。

久乃:そうですね。お店の休業期間は気持ちを切り替えて、家の中を片付けたり、自炊をしてダイエットしたりと、普段できないことをして過ごしていました。辛かったのは休業明けの昨年6月でした。お店はやっているのに、お客さんが来ないという状況が辛かったです。あと他の子はお客様がいらっしゃるのに、自分がいないときは余計にストレスを感じました(笑)。

――コロナ禍だと常連さんに連絡するのも憚られますしね。そんな苦しい状況の中、何か工夫したことはありますか?

久乃:マドラーを1人ずつ代えたり、アイスにラップをしたり、チャームを小さな包装にしたりなど、お店全体で感染対策を徹底しました。あと休業期間中にネット飲みをやったんですけど、お客様の年齢層が高いのと、家族がいらっしゃる方が大半だったので、常連さんには不評でした(笑)。私は参加しなかったんですが、お客様とランチに行くランチアテンダントサービスも行うなど、いろいろな試みをしました。望月明美ママがチャレンジ精神旺盛な方なんですよね。

――そうしたル・ジャルダンの試みはテレビのワイドショーなどでも紹介されていましたよね。そもそも久乃さんは、どういう経緯で銀座のクラブで働くことになったんですか?

久乃:28歳で水商売を始めたんですけど、最初は渋谷のキャバクラで働いていて、そこに4,5年在籍していました。その後、独立願望があってキャバクラを辞めて、半年ぐらい経営の勉強をしたんですけど、やっぱり自分は接客のほうが向いているなと気付いて。日本で水商売のトップに君臨する街は銀座だと思っていたので、どうせ復活するならトップの世界を見てみようと思って銀座に来ました。

◆水商売デビューは28歳「最後のチャンスと思って」

――どうしてル・ジャルダンを選んだのでしょうか。

久乃:インターネットで「銀座 クラブ」と検索したら一番上に出てきたからです(笑)。

――そもそも水商売デビューが28歳というのは、かなり遅いですけど、どうしてこの年齢で始めたのでしょうか。

久乃:14歳の頃から歌手を目指していて、芸能関係のお仕事もしていたんですけど、なかなか結果を出せなかったんです。そんなときに水商売と芸能界は華やかなところが共通しているので興味が湧いてきて。あと2年で30歳というときに、水商売を始めるなら最後のチャンスかなと思って始めました。

――芸能活動をした経験が、水商売にも活きている部分はありますか?

久乃:自分の見せ方などは、水商売にも通じるものがありますね。

――ル・ジャルダンで歌声を披露することもあるんですか?

久乃:よくカラオケで歌って踊っています(笑)。

◆常に自分も楽しむことが接客のコツ

――歌だけじゃなく踊るんですか(笑)。得意曲は何でしょうか?

久乃:よくお店の女の子やお客様からリクエストされるのが松浦亜弥さんの「Yeah! めっちゃホリディ」です(笑)。ハロプロ世代なので、モーニング娘。さんの曲も歌いますし、小室ファミリーも大好きなので、安室奈美恵さんの曲をライブバージョンで本人の動きに合わせて歌って踊ります。

――それは、見てみたいです! 普段から接客で心がけていることは?

久乃:お客様に楽しんでいただくために、常に自分も楽しんで接客するように心がけています。どんな方のお席についても盛り上げたい気持ちが強いんですよね。

――他のクラブにはない、ル・ジャルダンの強みはどこだと考えますか?

久乃:先ほどもお話しましたが、ママがチャレンジ精神旺盛で、お店の写真集を出したり、永久指名制度を取っ払って、その都度お客様の担当を代えるなど、銀座のクラブの常識を覆しているところですね。

――今回、「ナイトクイーングランプリ(NIGHT QUEEN GRANDPRIX)」にエントリーしたのは、どういうきっかけがあったんですか?

久乃:もともと主催者の方とママに繋がりがあって、「ナイトクイーングランプリ」にお誘いいただいて、私は挑戦することが好きなので、迷わず「これは出るしかない!」と。系列店も含めるとお店から5人エントリーしているんですけど、レジェンドクラスは私一人なので、ちゃんと結果を残したいですね。今は本選に向けて、ダイエットを頑張っています!

 久乃さんは、11月8日に本戦を迎える「ナイトクイーングランプリ」のカサブランカ部門にエントリーしている。同イベントは、コロナ禍に“夜の街”として苦戦をしてきた水商売業界の再起を目指して“夜の女王日本一”を決めるコンテスト。落ち着いた優雅な佇まいからは想像もつかないほど明るい接客が持ち味の彼女に、ぜひ注目していただきたい。

取材・文/猪口貴裕 撮影/林 鉱輝 協力/日本水商売協会

―[コロナ禍の夜の街「働く女の仕事論」]―


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